お買物って 行きたい?
お昼を食べ終え、俺たち家族四人はリビングでまったりとしている。皆ソファの上でくつろぎながらだ。
母さんは横になって足を伸ばしてゆったりと。父さんは自分のところにその伸びてきた足をどうするか悩んでいる。俺とミーケは、ミーケが俺の太ももを枕にしようとしたけど、今俺がそれを回避したところだ。皆、気ままにゆったりとしている。
ただ、そんなゆったりとした時間が一瞬で壊れる。
「買い物に行きたいわ!」
母さんの一言で。
「「「えっ!?」」」
他三人が一斉に驚きの声をあげた。そしてすぐに、みんなして母さんへと視線を向けた。信じられないといった視線を…。
あの母さんが、あの堕落した母さんがお出かけしたい?しかも、ご飯じゃなくて、お買い物を?ありえない。どうして…。
俺が戸惑っていると、父さんの声が聞こえてきた。
「る、ルシア…、どうしたんだ?熱でもあるんじゃないか?」
「そうだよ、おばさん。一度、熱計った方がいいよ。絶対に…。」
「そうだよ。母さん…。」
父さんの言葉に、ミーケ、俺と続いた。
それくらい、俺たちにとってはありえないことだった。いつも、食っちゃ寝しかしないのに。
「三人ともどうしたのよ…。ただ、久しぶりに買い物したくなっただけなのに…。」
!!!
「今日って、雨だった!?」
そんな母さんの言葉に早く反応したのはミーケだった。
「いや、晴れのは、ず…。」
「もしかしたら、今から雨が…、いや雪が降るのかも…。」
その言葉に父さん、俺と返す。
雪ではなくて、槍かもしれない。それくらいに、今すごく恐ろしい。
そしてそんな俺たちの動揺をすり潰すのも母さんだ。
「文句でもあるの?」
母さんからの声は、ピリついていてすごく冷たかった。
やばっ!
「「「ありませんっ!」」」
「よろしい。」
母さんは俺たちの軍隊のような規律の高さに満足してくれたようだ。
「で、何買いに行くんだ?」
「服と…」
父さんの言葉に、母さんがそれだけつぶやいて、考える仕草を取る。人差し指を口元付近に当てて。
そしてこの言葉が、父さんの琴線に触れたみたいだ。
「服と?」
父さんが、ウキウキした視線を母さんへと向けている。
酒とかいうワードでも期待しているのかなー。そんなわけないのに。
そして…
「服だけね。」
ほら。
ガーン
母さんの言葉に、父さんがわかりやすくがっかりする。
「お酒。俺の…」
母さんにもその呟きが聞こえたみたいだ。
「お酒買ってもいいけど…」
母さんが一度そこで言葉を止める。そして、父さんの方を悪い笑みで見ている。
「な、なんだ…?」
父さんの表情を母さんは確認してから、残りの言葉を放つ。
ひどい言葉を…。
「当ては私の手作りね。」
うーわ。
それはえぐい。酒の当てがコゲって中々に…。酒しか進まなさそう…。いやでももしかしたら、お酒と苦い物って意外に合うかもしれないよな。うん。お酒のうま味をコゲの苦みがいい感じでアクセントになる感じで…。無理か。無理だよな。
「コゲかー。」
父さんも頭を抱えて悩みだした。そして、普通に母さんの料理をコゲって言いきっている。
いいのか?旦那として。それは…。
「嫌なの?」
そんな父さんに母さんからキラーパスが飛んでいっま。無茶苦茶なパスが…。
「うぅ…。」
どうにも悩ましいらしくて、父さんからうなり声が漏れる。そして顔もすごく苦い顔をしている。
「ふーん…」
母さんは父さんをじっと見つめている。
そして…
「ひどいわ。ミーケちゃんなら食べたいって言ってくれるのに…。」
飛び火した。
「えっ?」
ミーケからマヌケな声が聞こえてきた。
絶対に油断してな、ミーケ…。
そんなミーケは悲しそうな…、絶望した表情をする。でも、そんな心の中を読まれないためにかすぐに返答する。
「う、うん…。」
すごく切ない声だった。
「ほらね。」
きっと残りの言葉は、"なのにあなたは"って感じかな。
「う…。」
父さんは難しい顔をしている。相当コゲかお酒で迷っているみたいだ。
そして、母さんへと向き直った。どうやら、決まったらしい。父さんがゆっくり口を開く。
「やっぱり、酒いいわ。」
いらないらしい。
ただ、その答に俺の隣でびくっりしたような声が聞こえた。
「えっ?」
ただ、両親にはその声は聞こえなかったみたいだ。
母さんが父さんへと言葉を返す。
「いいわよ。ミーケちゃんに食べてもらうから!」
「えっ?」
ミーケの悲しい声が聞こえてきた。
こうして、俺たちはお買い物に出かけるのであった。
どんまい。ミーケ。
土日で6




