どうして 誰も…
取り合えずは、頭を撫でた件を言わないでもらえることにはなった。なんだか、後々何か要求されそうで怖いけど…。
そして、ママさんが俺が恐怖していた内容に触れてきた。
「ルートちゃん、今日はミーケの部屋でいいわよね?」
あれ?確定?なんだか、おかしくない?
「うんっ!」
ミーケも元気よく返事してるし。
「僕は別の…」
「ルートもそれでいいって!」
あれ?さっきから全く俺の意見が最後まで言わせてまらえないんだけど。変だなー。
「別の…」
「なら後で、お布団持っていくわね?」
あれ?ママさんにも、俺の意見遮られたんだけど…。あれ?
「いやっ、ま…」
「ママ、お布団なしでもいいよ。一緒に寝るし。」
は?
というか、それはまずいだろ。なんで、俺の方が危機感持ってるか知らないけど…。いや、俺の方が持つべきなのか?
いやっ、今はそれよりも…
「待っ…」
「それもそうね。」
あれ?永遠に二人だけで会話が進んでいくんだけど。しかも、当事者は俺なのに…。おかしくない?
「パパさ…」
「あなたもそれでいいわよね?」
ママさんからパパさんへと同意を確認する言葉が飛んでいく。俺は、最後の希望のパパさんへと期待を込めたまなざしを向ける。
パパさんお願い。助けて…。
パパさんと視線が噛みあった。
もしかして、まだ希望はあるのか?信じて…、信じていいのか?
俺とパパさんの視線を噛みあうこと数秒、パパさんの表情が移り変わっていった。苦笑いへと。
あっ…。
「あぁ。」
パパさん…。
「ということで、二人ともよろしくね。」
「うんっ。」
終わった…。
というか、なんだか逆じゃない?普通、女の子の方が抗う話だろうに。
俺がそう思っていると、ママさんの悲しい呟きが聞こえてきた。
「これでルシアさんとの楽しい話のネタがまたできたわね。うふふ。」
「………」
えっ?
ねぇ、ママさん…。それはひどくない?それはすごく聞き捨てならないんだけど…。
俺が離れていくママさんを後ろから眺めていると、俺の肩に誰かの手が置かれた。俺は置かれた方を確認すると、手を置いたのはパパさんだった。
そんなパパさんが気まずそうな顔をしながら口を開く。
「すまんな…。あと、オヤルも通った道だから…。」
父さん…。
父さんもこんな悲…
「ルート~、早く~。」
俺が考えにふけようと思ったら、ミーケから付いてくるように催促の声がかかった。俺は思考すら、最後までさせてもらえないらしい。
「はい…。行ってくるよ…。」
「お、おぅ。」
俺はパパさんにそう言い残してミーケの方に向かって歩いていった。
パパさん、そんな微妙な表情するなら、二人を止めてくれなら良かったのに…。
俺はミーケの後を追って、階段を上ってミーケの部屋へと進んでいく。もう少しでミーケの部屋だという時に、ミーケがいきなり声をあげた。
「あっ!!! 下に忘れ物しちゃったっ。取ってくるから、ルートは先に部屋入ってて。」
ミーケはそう言い残して、来た道を戻っていった。
おっちょこちょいだなー。
俺はそんなことを思いながら、ミーケの部屋への残り少ない距離を進む。ただ、何かが記憶に引っかかる。でも、何だったかは全く思い出せない。
すごく印象的なことだった気がするんだけど…。
俺は思い出せないままミーケの部屋へとたどり着いた。そしたら、何故か急に身体が震えだした。まるで、以前に恐ろしいことでもあったかのように…。
俺はドアの取っ手を握る。でも、握った手はガクガクと震えて全く力が入らない。当然、ドアを開けることなんて出来ない。
なんでだ?今までミーケの部屋なんて何度も入ったし。それに嫌なことなんて別になかったのに…。
俺は必死に過去を思い返す。ただ全くといっていいほど、何も思い出せない。もしかしたら、過去の話ではないんじゃないかと疑いたくなるほどに。
もしかして、夢か? 夢、夢か…。確かに、何か怖いことがあった気がする。えっと…
俺は必死に記憶を探る。
だけど…
ダメだ。何も出てこない…。何か、きっかけさえあれば…
俺は必死に考える。
だけど、その思考を邪魔する形で、ミーケが戻ってきた。
「ルート、どうしたの?入ってれば良かったのに…。」
「なんか思い出した気がしたんだけど、それが何か分からなくて…」
「ふーん…。」
ミーケはそう相槌をしてから、俺の手を上から握る形でドアを開いた。
俺はとっさに目を閉じた。ミーケも俺が目を閉じたのに気づいたみたいだ。
「大丈夫だよ。片付けたから…。」
片付けた…?
「な、何を…?」
「んー、お部屋をだよ。」
「そ、そうだよね。」
「そうだよ〜。」
そんな変なものあるわけないよね。どうしたんだろ。無駄に警戒してしまって。きっと、何かの勘違いだな、うん。
俺は自分を納得させてから、閉じてた目を開いて部屋へと足を踏み入れた。
ぶるっ
ただ、何故か一瞬だけ、身体が震えた気がした。




