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異世界マイフレンド  作者: ゆう
メインストーリー
110/190

ミーケは 負けず嫌い

 「もう一回っ!」


 下手っぴのミーケがもう一度を宣言した。どうやら、相当に悔しかったようだ。


 でもどうせ、失敗するのに…。


 そんなミーケは、またトランプ二枚を指で掴んで山の完成を目指す。


 でも、さっき失敗したのが相当悔しいみたいで、見てわかるくらいに手が震えている。そのせいで、二枚が全く落ち着く様子がない。


 その証拠に、ガチガチとカードがズレる。俺の邪魔なんて関係なく、成功する未来が全く見えない。


 ミーケもそれが分かったのか、カードを手放して深呼吸を始めた。


 さすがだ。決して、潜在能力だけでは無いということか。


 スー、ハー


 一度、二度とミーケが、空気を吸っては吐いてを繰り返す。数回繰り返すうちに、だいぶ落ち着けたみたいだ。


 ミーケは深呼吸を止めて、またトランプにへと強い視線を送る。


 どうやら、良い感じに集中力が戻ったみたいだ。


 だから…


 止めを刺そう♪


 ミーケはトランプを二枚掴んで、また山の完成を目指す。


 さっきの震えが嘘みたいに、ニ枚のトランプが凪いでいる。


 美しい。


 ニ枚のトランプが支え合った瞬間、ミーケは指を離す。すると、ニ枚のカードが瞬く間に、どっしり構えた山のように落ち着いている。


 ちゃんと、自身のポテンシャルを活かせているみたいだ。


 そんなミーケは、二つ目の山を目指す。


 新しく二枚のトランプを指で掴んで、完成した山の隣にカードを構える。


 ミーケのポテンシャル、それに今の精神状態…。このままでは、ほんのひと時で完成してしまうだろう。


 それはまずい。


 だから俺は…


 動くことにした。


 カードへと集中しているミーケへと顔を近づける。


 そして耳元でぼそっと呟く。


 「ミーケ…、今日もかわいいね…。」


 「〜〜〜っ!!」


 ぼっ!


 そんな音が聞こえそうなくらい、ミーケの頬が一気に赤らんで頭から煙を放つ。


 頬の熱のせいか、ミーケの口元がむにょむにょと動き出した。


 そして、あわあわと声をあげ始める。


 「〜〜〜〜〜」


 次第に熱が体全体に及んだようで、ミーケの体が見てわかるくらいに震えだす。まるで、熱に炙られているかのように…。それも、びっくりするくらい、大きく…。


 バタッ

 

 そして、手にまで行き渡った振動のせいで、カードを倒してしまった。


 俺は倒れたカードを見ながら、落胆の言葉を落とす。


 「あ〜あ。」


 それだけなのに、真っ赤な顔したミーケが、何故かこっちを睨んできた。


 かわいいね〜。


 俺は可能な限り、何もしてないかのように平静さを取り繕いながら口を開く。


 「どうしたの?」


 「ルート〜っ!」


 ミーケが責めるように名を呼ぶ。


 「ん?」


 「"ん?"じゃないよ! なんで、邪魔するのっ!!!」


 「邪魔? そんなのしたかな〜。」


 してないよね?


 「したもんっ!!!」


 ミーケがずっとと変わらない赤さで主張してくる。


 「僕が何したの?」


 俺の言葉に、赤い顔のミーケが少し俯きながら、呟く。


 「………て言ったもん。」


 ただ、小さすぎて聞き取れない。言葉に出すのも、恥ずかしいみたいだ。


 「ん?」


 俺は頑張って、笑ってしまいそうなのを堪えながら聞き返す。


 その言葉に、ミーケは赤みを帯びた顔で頑張って言葉を発する。


 「かわいい…」


 ボンッ!


 ただ最後まで言う前に、ミーケの顔から変な音が聞こえてきた。どうやら、熱と恥ずかしさに耐えきれなかったみたいだ。


 彼女は、赤い顔を隠すように俯いてしまった。


 こうしてミーケは、しばらくの間静かなままだった。




 


 ミーケが黙ってしまってからしばらく立った頃、俺もトランプタワーを再開するために二枚のトランプを手に取った。


 赤くなったミーケをニヤニヤと眺めていたけど、気づいてしまったんだ。さすがにヤバい人では?…、と。


 捕まってからでは遅いしね。誰にかは知らないけど。


 だから俺は山の製作にへと取り掛かる。


 二枚のトランプを支え合わせて、一つの山を目指す。手が落ち着いた、そのタイミングで指をそ~と離す。すると、さっきの挑戦が嘘みたいに簡単に一つ目の山ができてしまった。


 「………。」


 邪魔がないとこんなに簡単にできちゃうのか…。


 そんなことを思いながら、俺は二つ目の山の製作のために新しいトランプを手で掴む。ただ、このタイミングで復活てしてしまった…


 ミーケが。


 もっとポンコツしてたらいいのに…。


 ミーケがさっきと同じように、邪魔するために俺に粘着した視線を送ってくる。


 うっとうしい…。


 でもそれは、さっきくらった。


 俺はまるでそよ風のような邪魔を受けながら、山の製作にへと取り掛かる。カードを支えて離す。すると、できてしまった。二つ目の山が。


 「あっ!」


 悔しそうな呟きが隣から聞こえてきた。俺は横を見ると、ミーケがぷくーと膨れていた。


 「変な顔…」


 「むー。」


 煽ってみると、ミーケが期待通りに不満そうな声をあげてくる。


 楽しい!


 彼女の顔に満足した俺は、さらにもう一つの山へと取り掛かる。新しいカード達をきれいに支え合わせる。


 このタイミングでミーケが仕掛けてきた…、さっきしてきた手を。


 「かわいい♡」


 耳元でミーケがぼそっと呟いてくる。


 その言葉に、さっきは不覚にも動揺してしまった。しかしだ、さっきのミーケの醜態を見た後だと、こんなの赤子の手と同じだ。


 俺はくつくつと笑ってしまいそうになるのを、なんとか我慢しながら山の作成を継続する。


 俺の眼前では、掴まれているカードはおろか俺の手までもが落ち着いている。


 きたきたきたっ。これは、勝つる!


 頭の中では、ミーケの悔しがる顔が頭に浮かぶ。


 俺はそれを楽しみに、今この瞬間、掴んだトランプを離そうとする。


 もう少し…、もう少しだ。


 俺は待ち望んだ結果が、目の前で完成するのに期待する。


 もう少し…

 

 そう、この一瞬の隙…、そのタイミングでミーケが俺の耳元で呟いてきた。


 「ミーケの頭…、撫でてみて、どう だった…?」


 どう…?


 頭…、撫でて…


 撫で…、撫で…

 

 俺の頭の中である一つの記憶がフラッシュバックされた。俺と…、母さんしか知らないはずの記憶が…


 それは…、俺が寝ているミーケの頭を撫でてる記憶…


 撫でてる…


 ………


 心と頭の中が急に騒がしくなる。


 え?


 なっ、なんでなんでなんで、なんでっ!!!


 だって、あれはミーケは知らない…、知ってるはずないことなのに…


 なっ、なんで…?


 バクバクと心臓の音が急速に早く…、そして大きくなる。


 バタッ


 俺の身体が震えて、カードを倒してしまった。


 でもっ、そんなことより…


 「なっ、なんで知ってるの…?」


 俺はミーケの方へ振り向いて尋ねた。


 ミーケは俺の問に、ニヤニヤと笑みを浮かべている。そして…、その笑みを浮かべている口元が開く。


 「なんでだと思う?」


 すごく楽しげな声だった。


 うぅ…、母さんめ…


 こうして、俺とミーケのタワー対決は終わりを迎えた。


 それどころじゃなくなってしまったから…。

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