表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界マイフレンド  作者: ゆう
メインストーリー
101/190

デブ活と 母さん

 「私は一体…」


 母さんからそんな言葉が虚しく響く。そんな言葉を吐く母さんを、俺と父さんが近くで見守る。


 逃げた俺に、父さんから責めるような視線が飛んできたが気にしない。悪いなんて思ってないし…。


 父子のそんなやり取りの中、母さんから気になる言葉が聞こえてくる。


 「なんで、お菓子がこんなに…」


 母さんは身の回りの惨状に気づいたみたいだった。もしかしたら、さっきまでの禁断症状は無意識で行っていたのかもしれない。


 意識があってもなくても恐ろしいが…


 「もしかして…」


 母さんがそう呟いてから、俺の方を責めるように見てくる。


 へっ?


 母さんが見てきた瞬間、俺は必死に頭を横に振った。


 いやいやいや、自分がやったのに勝手に俺を犯人にしないでよ。濡れ衣過ぎるって。


 俺の所作で誤解がちゃんと溶けたのか、次は父さんを見つめる。


 「違うからなっ?」


 父さんが必死な言葉を投げる。それはそう。


 それを受けた母さんは、顎に指を当てて呟く。


 「なら一体、だれが…」


 「「じー…」」


 お前だよ、お ま え!!!


 母さんは俺と、あと父さんの厳しい視線に気づいてくれたみたいだ。戸惑った言葉を落とす。


 「もしかして、私…?」


 その瞬間、俺と父さんが力強く頷いた。ただ…


 「そんなわけないわねっ!きっと野良猫がこっそり食べたのね。こまっちゃうわ〜♪」


 「「………」」


 母さんの曲解力の前では無力だった。


 野良猫ってかわいそうだなぁ。勝手に犯人にされて…


 俺がそう思ってると、母さんの言葉が続いた。


 「今度、ヤラないといけないわね♪」


 目をギラつかせて。


 あはは、ほんと可哀想だよな。


 いつもなら、これで流れる。だけど、今日の父さんは一味違う。珍しく…。

 

 「ルシア、犯人はお前だからな。」


 父さんが母さんに訂正をいれる。


 「へっ?」


 俺と父さんがじっと母さんを見つめる。


 「ほんとうに、私なの…?」


 うん、うん、うん!


 俺たち父子が何度も頷く。


 「えっ?でもまったく記憶に…、それにお腹も膨れてないし…」


 「「!!!!!」」


 母さんから衝撃な言葉が舞い降りた。


 お腹が膨れて、ない…?


 俺たちの周りには、何十ものお菓子の袋が落ちている。しかも、ほとんどが空だ。なのにっ…


 お腹が膨れてない、だとっ!?


 俺は隣にいる父さんと見つめ合う。


 父さんの顔が驚愕していたものから、段々と悲しい表情へと変わっていく。きっと、俺も同じなのだろう。


 俺はその表情のまま、母さんを見つめる。


 あぁお母様、おいたわしや。


 俺の…、俺たちの気持ちが伝わったみたいだ。


 母さんがぽつりと呟く。


 「ほんとに、私なのね…」


 母さんの寂しそうな声が響く…。


 さすがに太っちゃうだろうし。さすがの母さんも気にしちゃう…


 「まっ、いっか♪」


 ことはないみたいだ。良い性格してるね、ほんと。


 ただ今日はお父様がいる!


 「ルシア、お菓子は禁止だろ?」


 父さんが母さんを咎める。だけど、母さんにはへでもないようだ。


 「なんで?私がどんだけ食べても私の自由じゃない?」


 母さんがあっけらかんと言い放った。


 まぁ、それはそうなんだけどさ…。


 母さんの言葉に父さんが、唇をむにょむにょとさせる。そして口を開いた。


 「それはさ…」


 「それは?」


 父さんが右往左往していた、視線を母さんへと定める。おそらく気持ちを込めた一言のようだ。


 「俺がずっと…、お前に綺麗でいて欲しいからだよ。」


 父さんがそう言い放った。


 ふぁぁぁぁぁぁぁぁ。おとうさまぁぁぁぁあ。


 言った父さんは、段々と頬が赤くなっていく。そして目が揺れる。きっと恥ずかしさのせいだろう。


 母さんも目をパチパチと何度も見開いてる。突然のことにびっくりしたみたいだ。


 「「………」」


 二人が見つめ合う。そんな時間が続く。


 ただ、この間は二人にとっては違うだろう。


 父さんは自分の中の恥ずかしい気持ちを曝露した上で、次の母さんの言動に期待を膨らませているのだろう。その証拠に、父さんは母さんを見つめてはいるものの、時折視線が動いている。今は見つめているのも、すごく気恥ずかしいに違いない。


 そんな父さんの気持ちに母さんが回答を返す。


 「私はずっときれいなんだけど。」

 

 平然と母さんが言い放った。


 あっ、はい…。それを自分で言いますか。自分で…。なんだろう、ちょっと白けた気がする…。でも、この傲慢さが母さんなのかもしれない。悲しいけど…。


 父さんも一瞬、表情が固まっていた。だけど、頭を振った。そして困ったような表情で返事を返す。


 「だからさ…、今のまま綺麗でいてほしくて…」


 ただ、父さんの言葉は最後まで続かない。母さんが父さんの言葉に被せたから。


 「太ったなら、太った私を愛してよ。」


 この言葉…、かっこいいの、かもしれない。


 「へっ?」


 父さんからは変な声が漏れてるけど。母さんの言葉が続く。


 「あなたはさ…、今の私が好きなのよね?」


 「あっ、あぁ…。」


 「何かをね、我慢する私って私だと思う?」


 「い、いや…。」


 父さんが悲しそうな顔で返す。


 「でしょ? 私は私なの。だからずっとね、こんな私を愛してよ。」


 母さんが真剣に言い放つ。そして…

 

 「はい…」


 父さんが苦々しい表情で返事をした。内心、複雑なのかもしれない。いや、きっと複雑なんだろう。


 いい感じな言葉を母さんが発しているのに、まったくいい感じな雰囲気じゃない。すごく不思議だ。


 俺たち父子が複雑な気持ちの中、母さんがもう一度口を開いた。


 「だから今、私はお菓子を食べるわ!」


 「「ダメ。」」


 油断したらすぐこれだよ。


 「あっ、やっぱり?」


 こうして、母さんはデブ活ロードとの長い戦いが始まった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ