いつもの日常 お昼過ぎに
パパさんが作ったお昼を食べ終えて、自分たち家族は自宅に帰ってきた。父は仕事(仮)を、母さんは家事(少)をするらしい。母さんは今から洗濯ものを干すみたいだ。洗濯機から取り出した、何日分か分からない洗濯物がたくさん入った洗濯籠を魔法で浮かせて外に出ていく。俺もそれに付いていく。
母さんはまず洗濯ものを浮かせて、下着、肌着、靴下、…と分類していく。最初は洗濯ばさみで止めるものからみたいだ。近くにそれらを近づけながら干していく。それが終わると、しわを伸ばさないといけないものだけが残り、一斉に風を浴びせてしわを取っていく。取り終えると、次々とハンガーにかけていく。一週間分くらい溜めたものが10分足らずで終わってしまった。
ふぁー。やっぱすごい。魔法を見てると、やっぱり便利だし、かっこよくて憧れる。
「かーたん、やっぱりかっこいい。」
俺が褒めると照れ臭そうにはにかむ。ここだ。
「凛々しいかーたん、魔法おしえてよー。」
母さんに引っ付いておねだりする。こういう時にちっちゃくてかわいいことってことを利用しないとね。
「めん、あんたにはまだ早いわよ。」
なんか最初に言いかけた言葉がすごく気になるんだけど。
「で、本音は?」
「めんどくさ…、もうちょっと大きくなってからじゃないとあ、危ないのよ。」
「本音漏れてるよ。」
息子よりめんどくさいが勝つのは結構ショックなんだけど。それにさっきから、かわいい息子と全く視線合わしてくれないんだけど。そんなとこに息子はいねぇよ。ほんま、うちの両親は。
「ね、おねがい。」
俺は母さんの視線の先に入り、抱き着いてから上目遣いでアピールする。これはどうだ?
「ま、また今度ね。」
それ絶対教えてくれないやつやん。母さんは言い終えると、そそくさと家の中に逃げていく。俺はいつになったら魔法使えるんだろう。
家の中に入ると、父と母さんがソファでくつろいでた。息子はソファに負けたらしい。泣きたい。俺も別のソファに座る。ソファが体重による衝撃を吸収し、優しく受け止めてくれる。はー、ソファ最高。そりゃ、勝てねーわ。
ソファに敗北感を感じてるときに、母さんが父へ話しかける。
「オヤル、今日仕事は?」
父の体が勢いよく軽く跳ねる。あーあ。
「今日は依頼が来そうな気がするから、家で待ってようかなぁって。」
父の表向きの仕事は、お手伝い屋さんということになっている。頼まれたら何でもする的な。でも依頼なんて基本来ないから、今の発言は今日はニートをします宣言だ。それが許されることはないんだけどね。
「働けよ、ニート。」
「うぐっ。」
母さんの言葉が父へ突き刺さってるようだ。それも、かなり深く。ちなみに言うと、母さんは専業主婦。といっても、ご飯はミーケのパパのご飯を食べるし、家事も掃除と洗濯だけで、両方とも魔法ですぐに終わるから、かーさんも実質二―。お母さまごめんなさい、何も思ってないんで睨まないでください。何で考えてること分かるんだか。
アホなこと考えてるうちに、母さんから父への詰問は進む。
「魔物でもなんでも狩って来いよ。」
そう、この世界には、魔物が存在していて冒険者という職業も存在する。そして、父も母さんも昔は冒険者だったらしい。ぼちぼちの。だから父だけでも魔物を狩れる。
「いやでも、今からだとだいぶ急がないと厳しいし。」
父がなんとかニートしようとする。でも苦しい。てか、働けよ。
「つまり、まだ行けるってことよね?」
父は言葉に詰まる。もう無理かな。
「いってらっしゃい。あなた。」
「はい。」
支度をして、父が悲しそうに出ていく。哀愁漂っていてかわいそうに見える。いや、働けよ。
父を追い出した後、母さんがこっちを見る。お前も外行ってこいって目で見てくる。こうやって俺も外に追い出された。なんで。




