前世でのこと
初投稿です
至らない点もあると思いますが、優しく見守って頂けると嬉しいです。
一応、ここだけは話が重いです
あと、メインストーリーは4話からです。
気楽に楽しんでもらえたら幸いです(4月末追記文)
「昨日一緒にいた女だれよっ!!!!」
「お前にはかんけいねぇよ!!」
「関係ないってなにっ!!!!」
俺の人生はここで決まってしまったのかもしれない。
母が妊娠中に父が不倫。よくある話だけど、当事者からしたら世界が一変する。当時はただ怖かったし、悲しかった。
でも何についてなんだろうか。家庭が壊れること?正直よく分からない。ただ怖くて、身体が震えて、泣いてしまいそうなのは確かだった。
あれから少したって、母が俺に告げた。
「ママと三人で幸せになろうね、ね、おにーちゃん」
両親が離婚し、俺は母についていくことになった。父は優しかったから、離れることが悲しかった。でもお兄ちゃんになるのは嬉しかった。
最初は良かった。産まれた妹は可愛いいし、母は相手をしてくれることは少なくなったけど、優しくて。俺は妹の面倒を頑張って見てた。母を少しでも楽にしてあげたかった。それに、かっこいいお兄ちゃんになりたかった。そんなこと考えてたはずだ。
小学生の高学年くらいか、このあたりから、母が変わった気がする。昼の派遣に加えて、夜にバイトも始めた。そして、
「家事くらいしてよっ!!」、「ご飯くらい自分たちで……」、「学校で何してるのよっ!!」
怒られることが増えた。会ったら愚痴か、怒鳴られるか、嫌みか。辛かった。でも妹を不安な顔にさせたくなかった。だって、お兄ちゃんなんだから。もっと頑張らないと。
高校生にもなると母と談笑することもなくなってた気がする。聞かれることは塾とテストの点だけ。
「なんでそんな点数なの!?」、「せっかく高い金払って塾入れてるのに」
会えば罵声しか飛んでこない。母さんが家にいると、苦しかった。でも俺がもっといろんなことを上手にできてたら母さんは怒らないはずだ。前みたいに、楽しそうに笑ってくれるはずだ。俺の出来が悪いのが悪い。もっと頑張らないと。もっと。
一回目の大学受験の後、
「なんでもっと勉強しなかったの!!」、「怠け者!!」、「愚図!!」、「お金どぶに捨てたわ!!」
悲しかった。必死に頑張ったのに。あんなに頑張ったのに。結果は出ないし、母さんにも怒鳴られる。つらい。そして、働いてくれてる母と、家事を担ってくれてる妹に申し訳ない。報いるためにもっと頑張らないと。
予備校浪人が始まった。苦しくてしょうがなかった。もう失敗なんてできない。応援してくれてる人のためにも。
「ちゃんと勉強してるの?」「高いお金払ってるんだからね」「これ以上迷惑かけないで」
会うたびに母から色々言われる。勉強は辛かった。けど、予備校にいるのと家でいるのどっちが苦しいか分からない。それくらい家でいるのが辛かった。でも泣き言を言っても何にもならない。そんなの考える暇があるなら、もっと頑張らないといけない。
今年のカレンダーももう終わる。苦しい。母の声を聞くと身体が震える。たまに心臓が痛い。でももっと頑張らないと。
二回目の受験が終わって、母からたくさん言われた。
「なんでこんな子に育っちゃんだろ」「失敗作」「〇ね!!」
悲しかった。涙が止まらなかった。なんでこんなにできないんだろう。他のひとより頑張ったのに。毎日欠かさずやったのに。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。生きててごめんなさい。
そして俺は19歳でうつ病になった。
ある深夜、女性の声が聞こえてくる。
「保人、ごめんね、こんな母親でごめんね。もっと優しくしてあげたら。あなただって苦しかったのに。なんで私は自分のことばっか。もっとかける言葉があったのに。なんであんな言葉ばっかり。ごめんね。ごめんね。……」
あれから毎日。
俺が鬱になって一年。俺は一日中部屋に引きこもっている。最初は図書館に行っていた。ただ勉強が全く進まない。気づいたら一日終わってることもある。なんでこんなに上手くできないのか。気づけば泣いてしまっている。何度も泣いてしまって、次第には人の目も嫌になって図書館にも行かなくなってしまった。
母と顔を会わすことも減った。俺が母の顔を見ただけで泣いてしまったからだ。母は俺が体調を崩してから、優しくしようとしてくれていた。でも顔を会わせるだけで泣いてしまう。本当に母には申し訳ない。
一日起き上がれないこともある。なんとか頑張りたい。今まで支えてくれてた母と妹のためにまた頑張りたい。でも何にもできない。悔しくてたまらない。二人に迷惑かけたくない。何か返したい。でも何もできない。どうせ何もできない。今まで何にもできなかったんだから。死にたくなる。
久しぶりに今日は外に出かける。病気になってからめっきり外出することがなくなってしまったが、最近ちょっと調子の良い日が続いてたので、妹が一緒に散歩でもと誘ってくれた。
ほんと妹には迷惑ばかりかけて申し訳ない。来年には自分の大学入試だってあるのに、家事に勉強とただでさえ忙しいのに。もっと俺が支えて上げれたら良いのに。
「お兄ちゃんどー?、しんどくない?」
「前よりかは大丈夫そう、かな」
「そっか、良かった。」
妹は俺の言葉をずっと笑顔で待ってくれてる。妹とは幼い頃からずっと二人で過ごしてきた。小さい頃からよく笑う子で、泣く子で、怒る子で。家で二りっきりで寂しい日なんてたくさんあった。でもこの子がいたからきっと耐えれてたんだと思う。
幸せになってほしい。妹には、こんな病気にはなってほしくない。こんな不幸にはなってほしくない。もっと何かしてあげたい。
近くの公園までの道中、そんなことを考えながら歩いてた。そして、歩道に侵入してくるトラックにぎりぎりまで気付かなかった。強い衝撃が走る前、最後に思ったのは、君だけでも幸せでいてくれ。
こうして意識を失った。
そして気づけば、永遠と白い空間に覆われた空間にいた。