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レフ・トルストイによる宛もない「特攻」

作者: オレグ・トルビン

今年9月には、レフ・トルストイという基本的に「戦争と平和」と「アンナ・カレーニナ」で知られる作家の誕生195周年が迎えられる。その作品に触れて「感動した!」と言えるものが幾つかあります。小学校の文学の教科書に入っている「ライオンと小犬」小説と「ハジ・ムラト」小説です。前者の方は、動物園の籠に入っているライオンに餌として小犬が投げられるが、ライオンがそれを可愛がり、小犬が死んだらライオンも何も食べれず、間もなく死ぬという精神性の深い悲劇ものです。「なぜ?」と直ぐに答えられないそこの見えない哲学が含まれている。「レフ」という作家の名前が「ライオン」という意味で主人公を自分自身に因んでいるに違いなく、ベジェタリアンであったトルストイの発想を比喩的に表している。作家が52歳であった1880年に書かれたもので、11年後にはベジェタリアンの聖書と呼ばれるようになる「第一段階」が発表される。長年徹底した信仰を「比喩的な」形から「ずばり」形まで11年間が経過したわけです。更に5年経った1896年には、平野を散歩する時にぽつんと植えるゴボウを見て後に8年間もかけて書く事になる「ハジムラト」の案が浮かんできたそうです。あのゴボウの三つの枝の内の二つが折れていたが、その花が弱弱しくも咲き、44年前にコーカサス戦争で対決した人物を思い出させたわけです。ハジムラトは、コーカサス戦争時代の北コーカサス・アヴァール人武将。イマーム国の軍司令官。3代目イマーム(君主)シャミールにその有能さを警戒され、非業の最期を遂げたものです。元々シャミール側にいて、君主と対立が激化し、家族を人質に盗られ、ロシア側に移り、結局は宛もない「特攻」を決める。その「特攻」の狙いは、シャミールから家族を救うなのか、単純に自由を求めるなのか、第三者の見方を探し出すなのか、未だに謎のままで残っている。

「ハジムラト」を書き終わった1904年から更に6年後にはトルストイ自身の「特攻」がある。1910年10月28日、82歳のトルストイが家を後にし、列車に乗る。途中で方向を変えながら乗り換えを何回かし、11月7日に現在のベルゴロード州の駅で肺炎で死去する。親戚を巡礼し、ブルガリア又はコーカサスに向かう等諸々の説があるが、本音はハジムラト如く謎のようです。「ハジムラト」そのものかもしれない。


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