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脇役聖女の元に、推しの子供(卵)が降ってきました!? ~追放されましたが、推しにストーカーされているようです~  作者: 廻り


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30/45

30 日常の中で3


 それ以降も見えない視線はずっと、クローディアにつきまとっていた。

 決して姿は現さないので、直接的な被害はない。

 けれど、見えないからこそクローディアの不安は募るばかりだった。


(そろそろ誰かに相談したほうが良いかしら……)


 イアンに話せたら一番良いが、最近の彼は忙しそうだ。下手に心配させて、余計に忙しくさせてしまうのは申し訳ない。

 もちろんオリヴァーに相談するつもりもない。こんな時だけ頼るのは、彼に対して失礼だから。


 どうしたものかと思いながら町の中を歩いていると、衣料店の娘サラがこちらに向けて手を振っているのが見えた。


「ディアー! 少し寄っていかなーい?」


 誘われるままに衣料店へと入ったクローディアは、サラによってすぐさま椅子に座らせられる。

 ここは商談用の椅子だ。大丈夫なのかと辺りを見回したが、店内にお客はいないようだ。


 サラは暇を持て余していたのか、お茶とお菓子まで出してくる。完全に、クローディアを休憩につき合わせるつもりだ。


「サラったら。このお茶とお菓子はお客様用ではないの? 店長さんに叱られないかしら?」

「大丈夫! 母は買い付けに行ってるから。それにディアも立派なお客だもの」

「私は一度しか、こちらのドレスを買っていないわ」


 この衣料店のドレスは、首都のデザイナーから買い付けたものばかり。センスは良いが、他の店よりも値段は高めだ。

 この前は奮発してお祭り用ドレスを購入したが、気軽に何度もは買えない。


「こうして手厚くもてなせば、いつか買ってくれるかもしれないでしょう」


 商人の子らしい考え方だなと、クローディアはくすりを笑みを浮かべた。


「やっと元気になったみたいね。最近、暗い顔だったから気になっていたの」

「え……。私が?」


 思ってもみないことを言われて、クローディアはきょとんとサラを見つめる。


「そうよ。こーんな顔して店の前を通りすぎていくんだもん。私が手を振っても、なかなか気が付いてくれないし」


 サラは、目尻を人差し指で押し下げる。

 悩み事はあったが、そんな顔をしていたとは思いもよらなかった。


「気が付かなくてごめんなさい。実は悩み事があって」


 ここは同じ女性同士に話したほうが、解決策が見つかるかもしれない。そんな思いでクローディアは、サラに悩みを聞いてもらうことにした。


 つきまといについて聞き終えたサラは、「あら?」と首を傾げる。


「付け角イケメンくんはどうしたのよ。こんな時こそ彼の出番でしょう?」

「あの……。彼とはただのお知り合いで……」


 クローディアは言いにくそうに口をごもごもさせる。

 サラには、彼とお祭りに行くと話している。悩みで頭がいっぱいで、すっかりと忘れていた。


「あー……。深くは聞かないわ。人生いろいろあるもの。私もイアンに振り向いてもらえない人生だからよくわかるわ」


 サラはうんうんと、一人で納得しているようだ。

 クローディアとオリヴァーの事情については、話すわけにはいかない。詳しく聞かれなくて良かったとため息をつく。


「実際につきまといを見たわけではないの。視線を感じるだけで、私の勘違いかもしれなくて……」

「確かな証拠が必要ってことね」


 クローディアはこくりとうなずく。相手さえわかれば、警備隊に相談することもできるし、相手に苦情を言うこともできる。


「どうしたらよいかしら」

「そうだわ……!」


 サラは勢いよく立ち上がると、小物の売り場へ駆け寄り手鏡を持ってくる。

 そして手鏡を顔の前にかざしてから、少しだけ鏡を横に移動させた。


「こうすれば後ろが見えるでしょう? 相手が隠れる前に顔を見られるはずよ」


 渡された手鏡をクローディアも使ってみる。確かにこれなら後ろを確認できそうだ。


「この手鏡、買います!」

「ふふ。まいどありぃ」




 帰り道。住宅街まできたクローディアは、さりげなく先ほど購入した手鏡を取り出した。

 先ほどから視線を感じる。今使えば、きっと犯人の顔を見られるはずだ。


 相手に気づかれぬよう、さり気なく手鏡を持ち上げる。

 そして後ろが見える角度に調節すると、はっきりと後にいる男性が鏡に映った。


(えっ……)


 鏡に映ったのは、まさかの知り合い。

 お祭りの前までは、毎日のように送り迎えをしてくれていた彼だ。


 オリヴァーは曲がり角の陰から、じっとこちらを見ている。

 これは一体どういうことなのか。


(きっと、調査の途中で私を見つけて、気になった……のよね?)


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