怖っ!!
『森田祐一氏の叔父である森田譲二氏が脳卒中と見られる症状で倒れて病院に運ばれました。
森田家当主の依頼で退魔協会の方で確認したところ、やはり呪詛返しだったそうです。
警察が呪詛に関して譲二氏の近辺を調べたところ、一族の事業のライバル企業トップに対する呪詛を複数依頼していた事が判明しました』
不眠症対策のお守りをクーラーの効いた部屋で作っていたら、田端氏から電話が掛かってきた。
なるほど。
譲二って事は父親の弟ってことかな?
考えてみたら当主の名前を聞いてないけど、兄だったら『譲二』はないだろう。
従兄弟が跡継ぎの座を狙って祐一氏を嵌めたのかと思ったけど、その父親の方だったのね。
まあ、まだ祐一氏は大学を卒業して数年って感じだったから、従兄弟にしたって自力で成り上がるなり祐一氏を押しのけてトップになるなり考えている可能性は高いよね。
森田家の親世代が何歳ぐらいなのか知らないが、40代後半から50代ぐらいだとしたらもうそろそろ現役時代の終わりが見えてきていてキャリアの終着点も想像できてしまって、『自助努力』に『呪詛』が入る様になったんだろうなぁ。
「倍返しのせいでかなりキツイ呪詛になったと思いますが、譲二氏のその後の経過はどうなんですか?」
呪詛を掛けてもバレた最初の一回は無罪放免になるのだ。
呪詛返しの転嫁をかなり悪意マシマシで手配しても、やはり最初の一回は無罪放免になるんだろうねぇ。
罰は呪詛返しそのものだけになりそう。
とは言え、呪詛返しを態々転嫁するほど危険性があると見做していたんだったら、計画的な殺意は十分あったって判断すべきじゃないのかね?
『一応の為』と言う名目で半信半疑だろうと誰かを危険に晒すのはダメだろうに。
『一応命は取り留めましたが右半身不随で言語障害も残った様で、脳へのダメージも大きく寝たきりになる可能性が高いと言うのが医者の診断結果です』
へぇぇ。
そう言えば、呪詛(もしくは呪詛返し)って無理やり自然にはない現象を呪いで起こすので、必ずしも普通の病気と同じ症状を見せたり回復したりしないと聞いたのだが・・・脳卒中っぽい呪詛にもリハビリが効くのかね?
まあ、脳の血管を弱めて破裂させるなり詰まらせるなりするのが呪詛の結果だとしても、その後の脳へのダメージは自然な生理的現象だからリハビリが上手くいく可能性もゼロではないのかな?
もしかしたら息子の仇ってことで森田家の当主が弟の救急車の搬送やその後の治療が遅れる様に手を回した可能性だってあり得なくはない。
脳卒中は時間との戦いだと言うから、ちょっと治療を遅らせるだけでダメージはマシマシ状態だろうね。
まあ、手を出さなくても十分呪詛そのものが悪質で、その返しも効果抜群だった可能性も高いけど。
私らが病院で亜希菜さん達と別れて帰った後に彼女が父親に連絡したかどうかは知らないけど、どうだったんだろ?
そう言えば呪詛返しって健康保険が効かないって話だけど、呪詛返しで起きた脳卒中の後遺症の治療やリハビリに健康保険は使えるんかね?
全部自己負担で、息子の仇って事で森田本家が資金援助しないとしたら叔父一家はこれから大変かもね〜。
なまじ死なずに生き残った方が本人も、家族も苦しみそう。
「そうですか。
ちなみに、譲二氏は甥の祐一氏を呪詛の転嫁先に利用していて、そのせいで彼が突然変死する羽目になった様なのですが、どうやって転嫁先に設定出来たのか分かりましたか?」
ちょっと興味があったのでついでに尋ねる。
前世では騙す系の転嫁の場合は関係ない契約書を上に二重に貼っておいて契約書にサインしているつもりで呪詛転嫁へ合意させると言った形が多かったが、今時の書類だったら二枚重ねにしたらバレるんじゃないかな?
『ネット経由のアンケートっぽいサイトで文字をバックグラウンドと同じ色にして見えない様にしたページでOKボタンを押すと転嫁への合意になる形にしていた様です。
一応被害者の髪の毛や爪と言った生体の一部が必要だった様ですが、髪の毛等を盗めたら呪詛の転嫁の合意をネット経由で騙し取れると言うのは非常に危険かつ新しい発見なので、退魔協会が重要顧客やスポンサーの一部に注意喚起を送る事にしたと聞いています』
田端氏が教えてくれた。
え???
ネットのOKクリックで呪詛転嫁の受諾になるの???
マジかぁ。
まあ、今までだって本人が適当な紙に三文印をうっかり押すだけでも受諾になったみたいだから、紙じゃないネット上のクリックも受諾になっても不思議はないのかもだが・・・ちょっと怖すぎるぞ。
最近は態とポップアップで画面の上に邪魔な広告を出して、それを退けるために右上のバツっぽく見せたダミーボタンをクリックさせてヤバい契約の受諾にさせて高額請求をする様な詐欺も増えているって話だし。そう言う騙されクリックで呪詛転嫁が成立するなんて怖すぎる!!
しっかし。
そんな危険な情報をお得意様の一部にだけしか注意喚起しない退魔協会もなぁ。
呪詛そのものの存在をあまりオープンにしない方が良いかもと言うのは分かるけど、なんとも微妙だ。
取り敢えず、この章は終わりです。
次にもちょっと内容的に続くかも?
明日は更新お休みしますね〜




