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過去に祟ってたのね。

「凄いですね、この短時間で浄化が終わるなんて」

北ウィングを歩き回ったメガネが感心したように言った。


「私達で出来ると思ったからこれだけ人数がいるのに最低ランクを含めた二人組に全体の4分の1もの範囲を任せたんでしょう?

期待に応えるよう頑張ったんですよ。

では、問題が無いならここに終了確認の署名を」

碧がニコリともせずに書類を突き出す。


なまじ整った容貌だから、カケラも微笑んでいない顔は中々怖い。

白龍さまは顕現していないが、微量に滲ませている霊力で良い感じに威圧効果を発揮しているっぽく、メガネの額に汗が滲んでいる。


「勿論です。

しかし、他がまだ終わっていないのに霊が寄ってこないなんて、凄いですねぇ」

何やらすっかり碧の能力に感服したのか(もしくはゴマをする価値があると思ったのか)、ペンを取り出しながらメガネが碧の浄化を褒め続けた。


「この程度、退魔師のスキルの一環でしょ?

除霊したところに他から霊が入ってこないようにするのは当然だと思ったけど」

下手に結界を張ってあるなんて言ったら嫌がらせで結界を壊されたり、更に仕事を頼まれたりしかねないので、碧は何をやっているかを言わずに単に『一人前なら当然出来ること』で済ませて署名された書類をメガネの手から奪い取る。


「じゃあ、帰ろう」

書類を確認した碧は一転してにっこり私に笑いかけ、外へ向かい始めた。


「あ、出来ればもう少しご協力頂けませんか?

何人かの退魔師からちょっと具合が悪いと連絡がありまして・・・」

メガネが碧に慌てて声をかける。


「緊急大型案件だと言うのにいつものように前日に接待なんかするのが悪いんでしょう。

私達は予定があるの。

『具合が悪い』退魔師達には二日酔い用の薬を飲ませて部屋から叩き出せば?

今晩の部屋代は出ないんでしょ?

チェックアウトの時間だってホテル側から連絡させたらぐだぐだしてないで出てくるんじゃない?」

碧が振り返りもせずにメガネの要請を切って捨ててそのまま駐車場へ向かう。


マジか。

仕事前なのに深酒してんの???


退魔師側も仕事を舐めてんじゃんという気がするが、仕事の前日に経費で酒を出して接待する協会側も馬鹿じゃね??

しかも、我々にはその誘いって来てないよね?

元々こちらの事を見下すジジイ達が酒を飲んでる場に参加する気なんぞないけど、私たちの報酬から引いている手数料を使って他の人たちだけを接待するなんてムカつく。


・・・それとも、碧の方に話がいって断ったのかな?

協会の人間や他の退魔師らと酒なんぞ飲んだらハニトラどころかデートレイプ・ドラッグの危険があるから絶対に参加しないのは明らかだから、最初から私に聞かずに断っていたのかも。


ズンズンとメガネを無視してレンタカーまで歩いた碧はさっさと乗り込んでエンジンをかけた。

「源之助〜!

今から帰るからねぇ〜!!」


「スピード違反で捕まったら遅れるから、制限速度10キロオーバーぐらいに抑えておいてよ?」

仕事前だったら退魔協会がスピード違反を握り潰すよう圧力を掛けてくれる可能性もゼロではないが、帰りだったら絶対に助けはない。


黒魔術を使えばなんとでも誘導できるけど、高々スピード違反の為に人の意思を歪めて悪いカルマを溜め込む気は無い。


「・・・そうね。

じゃあ、こんな田舎道だったら渋滞も無いだろうし、新幹線のチケットを予約しておいてくれる?

11時ぐらいに東京駅直通のがあったでしょ?」

駐車場から見事なハンドル捌きで車を出しながら碧が言った。


この時間帯だったらそんなに混まないんじゃ無いかとも思うが、確かに席を確保しておく方が無難か。


もしも乗れなかったら帰るのが遅れるし。

「了解。

ちなみにその接待って言うのはうちらにも誘いがきてたの?」


「あ〜、毎回偉そうなジジイどもが酔っ払ってる宴会モドキに強制参加でウンザリしていたんだけど、18歳になったからって強い酒を飲まさせられた挙句に客室へ連れ込まれそうになってから、誘われても絶対に参加しないから声をかけなくて良いって伝えたんだ。

確かあの時は白龍さまが激怒して、飲み会を手配した職員と私が同世代の同僚と仲良くしたいと言っていたって嘘をついた幹部、それに実際に酒で酔い潰して客室に連れ込もうとしたアホとを祟ったから、私の希望通り酒の場へのお誘いはそれ以来無くなったんだよね」

祟ったんだぁ。

18歳でも酒を飲ませるなんてダメなのに、協会は何をやってんの??


ちらりとこちらを見ながら碧が言った。

「飲み会に出たかった?」


「まさか。

でも、協会の経費で他の連中の酒代が出てるってちょっとムカつくかな〜と思って」


「大丈夫。

ちゃんと祟りの撤回の代わりに毎回泊まりがけの出張時に一人当たり特別手当5千円が付くことに合意させたから、今回もちゃんと依頼書に二人分ついてたよ」

ニヤリと笑いながら碧が答えた。


おお〜。

流石!




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