休むぞ〜
「碧の実家が迷惑でなさそうなら、バンをレンタルして源之助も一緒に1週間ぐらい向こうで滞在しない?
で、午前中の涼しい時間に聖域で雑草やヨモギをガンガン刈って干しといて、夕方にそれを仕舞い込む感じで備蓄しようよ」
6月ならまだ朝と夕方の時間だったら雨さえ降らなかったらそこまで辛く無く働けるだろう。
やっぱ7月とか8月になったら早朝・夕方でも無理な気がする。
まあ、都心と違ってそこそこ高地にある諏訪だったら朝夕はもう少し過ごしやすいかもだが。
でも、盆地って暑いとも言うよね?
どうなんだろ。
「あぁ、確かに今の時期だったらガンガン雑草が育ってそうだから、暑くなりすぎる真夏より良いかも。
1週間あれば源之助もそこそこ落ち着いて実家に慣れるだろうし、無理に頑張らないでもお守りやポーションモドキの素材を集められるから良いよね」
碧が頷きながら言った。
「でしょ?
バンを1週間もレンタルしてたらちょっと高くつくかもだけど、まあ退魔師の報酬がそこそこ貯まってるから構わないよね?」
前回の依頼では杉浦氏との約束を果たす(完全には出来なかったけど)為にちょっと余分な手間を掛けたが、代わりに悪霊と生霊を祓うのを直接依頼されたから収入は大きかったし。
・・・あれって直接依頼が増えるとそのうち退魔協会から目を付けられたり嫌がらせをされたりする様になるのかなぁ?
いや、碧が居るんだから天罰を恐れて積極的な嫌がらせはしないか。
とは言え、こっちが気付けない様なせこい嫌がらせはしてくるだろうけど。
まあ、適当にちゃんと暮らしていけるだけ稼げればいいんだから、欲張るつもりは無い。
変に目を付けられるほど派手な事にはならないと期待しよう。
「そうだね!
やっぱ1泊2日とか2泊3日じゃあやろうと思う作業を全部終わらせようとすると忙しくて疲れるからね〜。
のんびり遊びながら朝夕に作業する感じで行こう。
車はそれこそどっかの旅館に泊まることを考えたら大したことは無い出費だし」
碧が頷いた。
諏訪で何をして遊ぶのか微妙に不明だけど。
6月とは言え、日中は散歩には暑そう。
ドライブにでも行くかな?
源之助は・・・揺れる車の中よりも藤山家で昼寝したがる気がするな。
まあ、クルミ経由でそれとなく確認してみよう。
「そう言えば、諏訪って観光名所はどんな所があるの?」
ふと気になって尋ねる。
考えてみたら碧達の諏訪神社も観光名所かも。
実際に、あの蔵とか神社関係の建物はかなり古いし。
「う〜ん、まあ、湖とか神社とか、あとはガラス系の美術品が多い美術館とか蕎麦打ち工房とかもあるかな?
行ったこと無いけど」
碧がちょっと考えながら教えてくれた。
なるほど。
都内の人が東京タワーに態々行かないのと同じで、地元民は観光名所にはあまり行かないか。
神社は親戚付き合いで行ってるかもだけど。
「考えてみたら、雑草刈りとそれを干すのにどのくらい疲れるかが肝心だよね。
毎日聖域に行った後に美帆さんのところの霊泉に入らせて貰うとしても、それ程体力が回復するとは思えないから・・・疲れが取れなかったら適当に寝転がってオンライン小説でも読みながら涼もう」
春先に美帆さんとこに行った時も雑草を集めたけど、あん時もそれなりに疲れたからなぁ。
まあ、あの時はセカンドキャリアに失敗した爺さんのせいで色々とバタバタして気分が休まらなかったってのもあるけど。
「あくせくするんじゃ無くって休むのをメインな目的として、聖域素材集め以外は体力があって退屈したらって感じで行こう!」
碧が提案した。
だね〜。
私もダラダラするのが好きだし。
なんか家にいるとダラダラし過ぎるのは良く無い!って思っちゃって、ついついお守りや符を作ったり、亜空間収納を広げるのを頑張ったり魔道具モドキを作ろうと試行錯誤したりって感じでせかせか働いちゃうんだよね。
なんかこう、前世の記憶が戻ってからどうしても何も考えずに呑気にしているとそのうち危機感をじわじわと感じるようになって、結局追い立てられる様に働き始めちゃうんだよねぇ。
魔術師の前世の時は文字通り奴隷の如くこき使われたし、空いた時間はなんとか隷属制約から抜け出せないか調べるのに忙しかった。
寒村時代はそう言う苦しみは無かったけど、うっかりすると普通に栄養失調で寝たきりになって衰弱死しかねないぐらい厳しい環境だった。
お陰でどうも現代日本の緩さに馴染みきれてない感じだ。
これでも15歳まで普通に暮らしていたからまだマシだとは思うけど。
マジでこれって生まれてすぐとか物心ついた直後に前世の記憶が覚醒してたら、そっちの記憶に押し潰されてたんじゃないかと思う。
その点、遊びに行った先じゃあ働けないからね。
ゆったりのんびり休ませてもらおう。




