ご相談
情報収集が終わったところで田端氏に合図を送って、一時休憩にして貰い別の部屋に捜査担当の刑事と田端氏と私らで集まった。
「どうでした?」
田端氏が聞いてきた。
「え〜っとですねぇ。
まず、京子夫人は夫に早死にして欲しくて態とカロリーと塩分マシマシな食事を出し、薬を酒やその他飲み合わせの悪い物で飲む事を推奨し、時折勝手に薬をプラセボとすり替えたりすり替えて溜めておいたのを倍量で飲ませたりと言った事をしていたようです。
あと、サプリも過剰摂取させたら体に悪いと聞いて、色々と調べて敢えて危険だと言う評判が出始めているのを夫に勧めて飲ませていた様なのですが・・・これってPCの検索履歴とかに残っていたら殺人未遂とか傷害とかで罰することは出来ますか?」
まずは京子夫人。
出来ればあの人を罰して貰いたい。
警察がダメだったら興信所にでも調べて貰ってどっかの週刊誌に情報を流してもらうしか無いかなぁ・・・。
こう言う時に腕の良いハッカーに伝手があったら色々出来そうなのに、残念だ。
「それが今回の死因では無いですよね?
まあ、一応PCを調べて検視医の方にもどの程度体調に異常をきたしていたのか、聞いてみますが・・・生活習慣病関連で殺人を問うのは難しいと思いますよ」
担当刑事が顔を顰めなから言った。
「・・・残念です。
彼女の前夫も同じ様な感じにやられて、最後はゴルフ場で卒中で亡くなったんです。
京子夫人が遺体の前で殺意を認めたせいで、前夫が悪霊化しちゃったのを先日別件で祓う事になって田端さんに京子夫人の事を調べて欲しいと連絡するきっかけになったんですよ。
多分、京子夫人のせいで体調不良になっていたから階段の上で生霊に押された時に踏み止まれなくてそのまま落ちて亡くなってしまったんだと思います」
「「生霊??」」
田端氏と担当刑事が目を丸くして聞き返してきた。
「息子さんの方にストーカーちっくに付き纏っていて先日彼の車の中で自殺未遂をした女性が、植物人間になった後に生霊になって取り憑いているみたいで・・・。
妄想マシマシなちょっとおかしい生霊で、息子さんに振られた記憶を削除しちゃった上で何故か父親を殺せば二人が結ばれると思って押した様です」
別に亡くなった富田氏は息子の結婚にそれ程興味はなかったっぽいんだけどね。
父親以前に本人にウザがられていて、『近寄って来て欲しくない異常な女』として認識されていた時点で結婚は絶望的だ。
「生霊に押されたって・・・そんな事ってあるんですか?」
田端氏が驚いた様に聞き返してきた。
「悪霊が悪戯で物を倒すとか、音を立てるとか、体の不調を起こすとかってあるじゃ無いですか。
生霊ってまだ一応体は生きているけど中身は悪霊と似たり寄ったりな存在なんで、霊によってはちょっとした軽い力を物理的に及ぼすことも出来るんです。
ただまあ、普通だったら成人男性の体勢を崩せる程の力を振るえる事はあまり無いんで、京子夫人のサプリ過剰摂取も転落死の原因の一つかと思います」
だから京子夫人の罪も問えないかね?
「なるほど。
生霊に関しては我々ではどうしようもありませんが、サプリの過剰摂取のせいでふらついていたから階段から落ちたのだったら・・・傷害罪に問えないか調べてみましょう」
担当刑事が頷きながら言った。
「で、ですね。
富田氏の娘さんもちょっと悪霊に憑かれているし、息子さんの生霊も対処しないと今後も彼が親しそうな素振りを見せた女性とかに害を及ぼす可能性があるので、我々を退魔師として二人に紹介して頂けます?
無料で祓ったら退魔協会から睨まれるので料金は請求しますが、取り敢えず急いで生霊の方だけでも祓って体に戻した方が良いと思うので。
本人は自殺未遂のせいで植物人間になっちゃっているんで体に戻しても却って不自由だろうとは思いますが、今のまま放置したら更に人に害を及ぼすでしょうし体が死んだらほぼ間違いなく悪霊化すると思うので、祓っておく方が無難でしょう」
田端氏の方に向いて頼む。
と言うか、現時点で実質悪霊だよね。
体とのリンクを切るつもりだから祓ったら昇天する筈だけど。
「・・・そうですね、彼らは父親の霊を召喚した霊媒師に関してあまり満足して居なかった様なので、警察が信頼する退魔師の方達ですと紹介した方が良いでしょう」
田端氏が頷いた。
霊媒師だったんだ?
退魔師ではなく。
じゃあ、なんちゃって霊媒師で実は詐欺師っぽいのだったのかな?
それともギリギリ死霊は喚べるけど、しっかり準備していないと生霊や悪霊は視えないとか?
・・・あんまりありそうなケースとは思えないけど。
どんな感じだったのかちょっと興味があるけど、まあ良いや。




