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転生しても、現代社会じゃ魔法は要らない子?!  作者: 極楽とんぼ
大学3年

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利益最大化狙ってるね〜

「竹内絵里への見舞いだ」

依頼人が先に手配しておいたのか、病院に着いたら面談用の名札ちっくなのが既に手配されていて、あっさり差し出された。


「4階の3号室です」

受付の女性が言いながら札を渡し、エレベーターの方を指して教えてくれた。


『あれ?

考えてみたら病院って呪詛返しに関して調べがついて保険適用外にする手続きを直ぐに取るぐらいなら、呪詛で不調な人も分かるんじゃないの?』

エレベーターを待っている間に、ふと疑問を感じて碧に念話で尋ねた。

病院関係は碧の方がよく知っているからね。


呪詛も呪詛返しも退魔師の能力持ちが調べるのだから、呪詛返しを調べる際に呪詛も分かる筈。

以前の鎌倉の金持ちじーさんの依頼時に見た様な微細な呪詛で小さく慢性的な不調を齎すタイプはまだしも、入院しなきゃいけない程酷い潰瘍性大腸炎モドキな呪詛だったら能力持ちには一目瞭然だろう。


『患者の検査って病院にとっては利益割り増し要素の一つなんだよ?

検査を一通り全部やって、色々と新しくて高い新薬を試してみて、しっかり利益を搾り取るまで呪詛の確認なんてする訳がないじゃん』

碧が肩を竦めながら返してきた。


そっか、最初に呪詛だとか呪詛返しだとかが判明してしまったら、余計な治療をして金を取りにくくなるね。

しかも呪詛返し状態だって知っているのにしれっと延命措置を施しちゃったら、下手をしたら延命措置を付ける前に『呪詛返しなので最低でも5年、多分10年は保険適用外でこのままの状態が続きますが延命措置をしますか?』って聞かなかった事を訴えられるかも知れないし。


苦しんでいるのは患者が誰かを呪った報いで、その治療は全て保険適用外で、しかも下手をしたら10年ぐらいその状態のままって事を先に言われたら・・・『延命措置はなくて良い』って答える家族が増えるだろう。

何と言っても、自業自得な苦しみなのだ。

自分たちの資産をガリガリ削る様な保険適用外の延命措置を始めるのに躊躇しても不思議はない。


誰だって寝たきりの誰か(しかも人を呪う様なヤバい性格の人間)よりは自分の生活や老後を大切にしたいだろう。

なので『自業自得』と言う抜群な言い訳があれば、それに飛びつく人間は多い筈。


だが、呪詛返しだと知る前に延命措置を始めていたら、それを外すのは中々難しくなる。


病院としては『これだけ検査して医者の診断を受けても原因が分からないなんて、あそこはヤブ医者ばかりだ!』って悪評が立ちそうになったタイミングで徐に呪詛関連の確認をするのがベストなんだろうね。

その時点で呪詛返しが分かったら即座に保険適用をやめ、自由治療としてバリバリ金を請求すれば良いし。


そこで上手く自由治療を続けられるか、全ての延命措置を切られてしまうかは患者の家族のお人好し度によるんだろうけど、延命措置を続ける様に説得出来た医者や事務員はボーナスでも出そうだ。


まあ、それはさておき。

エレベーターが来たのでさっさと乗り、4階へと上がる。


病院のエレベーターってなんともトロい感じなんだよねぇ。

病人が乗っても平気な様になのか、単に古いからなのか知らないけど。

依頼人もイライラと指を動かしている。


歳の離れた義理の妹にしては随分と大切にしてるねぇ。

苗字が違う事を考えると成長過程でそれ程付き合いがあったとも思えないし、『母親に頼まれて』大学の研究室へ入るのに口利きした程度の筈なのに。


・・・美人なのかな?


そんな事を考えていたらエレベーターが止まってドアが開いたのでのでさっさと403と書いてある部屋へ向かう。

と言うか、私と碧がエレベーターから出てきたら依頼人は既に403号室の前に立っていた。

どんだけ素早く動いているんだよ。


そっとノックして依頼人が中に入っていく。

「絵里?

大丈夫か?」


「・・・太田さん?」

弱々しげな声が応じる。


ふむ。

苗字呼びですか。

確かに愛人じゃあなさそうだね。

精神的距離は相手側からは少し遠いのかも?


「こんにちは。

退魔師の長谷川です。

直ぐに気分が良くなると思いますので、あと少し我慢して下さいね〜」

にっこり微笑み掛けながら問答無用でベッドに横になっていた女性の額に手を触れる。


依頼人の奥さんに邪推されて呪われたとか、私が説明しなきゃいけない事ではない。

第一、説明は気分が悪いのが収まってからで良いだろう。

猛烈に腹部が痛かったり、便意を我慢している最中じゃあ何を言われても聞き流しちゃうだろうし。


と言うか、どうせ呪詛返しで居なくなるであろう相手の恨みなんぞ、説明されてもあまり意味がないだろうしねぇ。


呪詛を手繰り寄せ、転嫁の術をそっと避けて絵里さん(だっけ?)にへばり付いている呪詛の先を焼き払うイメージで呪詛を返す。

伸ばしたゴムが戻るが如き勢いで、呪詛が返って行くのが視えた。


うん。

綺麗に消えたね。


「え・・・?」

絵里さんが呆気に取られた様にこちらを見上げる。


『大丈夫そう?』

一応碧に念話で尋ねる。

下手に病院で治療行為なんぞすると後が面倒だけど、想定外な後遺症があったら可哀想だからね。


『ちょっと脱水気味なだけだね〜。

胃腸が少し疲れてるかもだけど、明日には普通な体調に戻ってると思うよ』

碧から明るい返事が返って来た。


うし。

じゃあ、もう帰っていいね。


軽く一言だけ絵里さんに状況を説明しておく。

「呪詛とか悪霊って本当に存在するんですよ。

太田氏の奥様に愛人疑惑で貴女が呪いを掛けられていたのが発覚したので、責任を持って太田氏が我々に呪詛返しの依頼をしたんです。

もうすっかり体調は良くなったと思いますが、失った水分は戻りませんのでしっかり水分補給をして、今日は消化の良い物でも食べてゆっくり眠るんですね。

病院にいる必要はないので、ここの食事が気に入ったとかでない限りさっさと退院しても大丈夫ですよ。

病院で検査したところで呪詛関係って何も異常は分かりませんから」

何か呪詛とは別に持病があるんだったらそれが見つかる可能性はあるけど。


何も言わずに碧が太田氏へ手を差し出して報酬を受け取る。


うん、やっぱ現場での現ナマ精算は後腐れがなくて良いね。


「「では、お大事に」」

さっさと逃げよう。


絵里さんと依頼人との愛人疑惑関連のやり取りには巻き込まれたくない。


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― 新着の感想 ―
[一言] >患者の検査って病院にとっては利益割り増し要素の一つなんだよ 検査だけで食ってる所が有るくらいですもんね
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