嫌がらせ？！
しっかりゆったり美帆さんの所で霊泉を楽しみ、碧ママ達も源之助と仲良く遊んだ翌日、私達は予定通り帰宅した。
ちゃんと聖域で雑草やヨモギも収穫してきたからお守りとポーションもどきの素材も増えた。
美帆さんの迷惑ジジイ粘着問題が長引きそうだったらもう数日残るのもありかもと思ったが、あちらが派手に自爆してくれたので今後は家族がしっかりとジジイを管理してくれるだろう。
単に頑固で、信じてもいない『穢れ』を祓うのにお金を使うのを拒否したから穢れに取り込まれてしまったのか、危険な被害妄想からの暴走を起こしやすい残念なタイプの認知症なのか、そこら辺はそれこそ退魔協会にしっかり清めて貰った後に精神科医にでも診断してもらう必要があるが、結果がはっきり出て危険がないと分かるまでは息子も何らかの手段を講じて父親を軟禁するだろう、
と言うか、警察に拘束させたまま、敢えて保釈を求めないのが一番無難かも？
拘置所に居ても退魔協会に退魔師を派遣して浄化して貰うのは可能だろう。
多分。
警察としては下手をしたら何かの拍子にぽっくり逝くかも知れない高齢者なんぞさっさと保釈して引き取れって言いたい所だろうが、周囲に危害を及ぼすかも知れない危険な人間を素人が軟禁するのは難しそうだ。
はっきりと危険な傾向があると判明したならば、そう言う暴力的な精神異常がある患者をケアしてくれる精神病院を探して入れるしかないだろうが・・・まあ、清めたら単にちょっと頑固なだけの初期認知症な状態に戻ると期待しておこう。
どちらにせよ、息子さんの問題だ。
それはさておき。
猫ハウスやトイレを亜空間収納に入れ、源之助をキャリーケースに入れてレンタカー屋でバンを返して歩いて帰ってきた私達は、夕方になる前にマンションに帰り着いた。
さて。
誰かが玄関の前で昏倒していたりしたかを誰に確認すべきかなぁ？
このマンションは大家さんが上に住んでいるので『管理人』と言うのは特に居ないんだよねぇ。
一応青木氏の会社と大家さんが契約していて、人を派遣して掃除とか修理とかはちょくちょくやっているようだし、家賃の支払いとかが遅れた時も必要があったら弁護士から怖い『訴えますよ？』と言う脅しの手紙を出すところまでしているらしいが、何かあったかを気軽に聞ける管理人さんがどこかに常駐している訳じゃあないんだよねぇ。
・・・考えてみたら、廊下で誰かが昏倒していたら大家さんのことだから青木氏に連絡して何とかさせようとするかな？
それとも隣人とかが見かけて救急車を呼んだらそのまま入院で、大家さんの関与は無しになる？
青木氏だったら私らの部屋の前で誰かが意識を失っていて起きる気配がないなら私か碧に連絡してくると思うが、お隣さんは私らの携帯番号は知らないと思う。少なくとも、私は教えてない。
碧の方が在宅時間が長いからチャットアプリとかのIDを教えている可能性はあるかもだけど。
・・・連絡先が分からなくて、一応知らせておこうと思ってうちの玄関に貼り紙しようと触れて昏倒なんて、してないよね？？
まあ、そうなったらきっと大家さんが発見して青木氏に連絡してるだろう。
多分。
そんでもって青木氏から連絡が無いって事は何もなかったんだろう。
だよね？？
「青木氏にでも、誰かマンションで倒れているのが見つかってないか一応電話で確認した方が良いかな？」
郵便受けを開けながら碧に声をかける。
「う〜ん・・・。
何かあったら連絡は来ると思うけど、一応スッキリしたいから肩こりとか不眠症用のお守りをもっと要りますか？ってメールを一本入れておこうか。
そうすれば何かあったんだったら教えてくれるで・・・何それ？！」
郵便受けの中から出て来たべっとり赤く血糊でも付いたような郵便物とそれに塗れた私の手を見て、碧が声を上げた。
「・・・嫌がらせだろうね」
一応臭いを嗅ぐが、本物の血のような臭いはしない。
「うわぁぁぁ。
ちょっと上からタオルとビニール袋を取ってくるから、動かないで！」
ポタポタと垂れる赤い液体を見ながら碧が慌ててティッシュで床に溢れた分を拭き、私の手に残りのティッシュを押し付けて上に行った。
まあ、源之助をさっさとキャリーケースから出して家の中に解放してあげるべきだし、下手に移動してエレベーターとか廊下に血糊モドキをポタポタ垂らさない方が良いんだろうけど。
なんやねん、これ。
大家さんか青木氏に頼んだらマンションの入り口の防犯カメラを見せて貰えるかな？
郵便受けの部分も防犯カメラの範囲内だと思う。
どの程度写っているか不明だけどねぇ。
これって宮田さんの義妹さんの嫌がらせ？
それとも関係ない他からの逆恨み？
宮田さんの義妹は私たちの事なんて実質認識してなかったと思うんだが、態々嫌がらせをする為に調べるかね？
私らが撃退した悪人タイプって嫌がらせをする為にフラフラ歩き回れるほど自由な人って居ないと思うんだが・・・誰がやったんだろ？？
