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個人への依頼と事務所

電話が鳴ると自動で留守番電話へ繋がり、碧の録音した声が流れる。

基本的に出先で退魔協会から依頼の電話なんぞ受けたく無いと言うことで、私たちは事務所の連絡先用に固定電話の番号を登録している。


最初は普通に出ていたのだが・・・固定電話と言うのは高齢者率が高いせいか、やたらとセールスとか投資勧誘の電話が掛かってくることが判明。

オレオレ詐欺も多い。

女子大生に孫がいるかっての!!

ウザいのでもう全ての電話を留守電に回し、退魔協会からだったらコールバックする事にしたのだ。


出先でも留守電に何かメッセージが入ったら分かる様に出来るので、一応退魔協会からの連絡にはそれなりにタイムリーに対応している。

まあ、源之助を迎えてから殆ど出歩いていないんだけどね。


留守電から相手の声が聞こえてきた。

『退魔協会の伊藤です。

ごく簡単な退魔の依頼が来たので、長谷川さんにお願いしたいと思います。

3日以内に群馬での依頼を受けられそうかコールバックして下さい』


「あれ?

事務所に仕事が来るんじゃないんだ?」

事務所所属として登録する事で、退魔協会の嘱託社員扱いではなくなるんじゃ無かったの??


「基本として事務所への依頼扱いだけど、多分今回のは初心者用の超安価依頼で凛が一人で受けないと足が出るタイプなんじゃないかな?

私にやらせるつもりは無いから凛を名指しにしているんだと思う」

碧が源之助にブラシを掛けようとそっと忍び寄りながら答える。


源之助はアクティブ過ぎるからブラッシングするのが難しいのは分かるけど、昼寝しているところを邪魔しない方が良いんじゃないかな〜?


「事務所への依頼でも担当を指定できるの?」

それじゃあ個人相手とあまり違わない気がするが。

まあ、事務所名義の仕事にしている主な理由は嘱託社員の『給与』では無く、事務所の『売上』にする為なので、指名されようが税務上の扱いが事務所売上なら構わないが。


「出来ない事になっているけど、実質はしてるって感じ?

よっぽど所属している退魔師の人数が多くない限り、依頼料で退魔師のランクから誰を意図しているか分かるし」

そっと源之助の横に座り込んだ碧が答える。


「でも、碧が私と組むのって一人で行くと色々変な誘いを受けるのにうんざりなのと、やっぱりちょっと危険かもって言うのが理由だったんじゃなかったっけ?

だとしたら碧を対象とした依頼に私が付いていったら赤字??」

前回のロクデナシ案件の報酬が相場プラスアルファなら『赤字』と言うより、『手取りが減る』と言うべきだろうけど。


「私用の案件だったら、凛と一緒に行くって言ったらアシスト要員用の報酬もつくから私にとっては前とさほど変わらないね。

退魔協会にとっては今まで断られていたアシスト料を払う事になって、利益が減ってるかもだけど」

源之助にそっとブラシを当てながら碧が答える。


ブラッシングって言うのはブラシを動かさなきゃ意味がないと思うぞ。


「ふ〜ん、そう。

で、初心者用の簡単な依頼にはアシスト要員用の費用は無いの?

初心者こそ、アシストと言うか見張り役が同行するべきだと思うけど」


「だよね〜。

でも、アシスト料は案件の難易度に比例するから初心者用は交通費程度しか出ないんだよね。

それも退魔師の弟子入りがやたらと高くつく原因の一つだと思うよ」

碧がそっとブラシを動かしながら答える。


「うみゃうぅ」

源之助が鬱陶しそうにブラシの反対側へ寝返りをうった。


さて。

どうなるかな?


「取り敢えず、この案件は受けてみるね。

依頼を受けなきゃランクを上げられないし」

さっさとランクを上げて報酬もランクアップしたい。


「うん、いいんじゃない?

流石に初心者用案件で危険はないと思うし、万が一私が行けない様だったら炎華に護衛を頼もう」

細心の注意を払って再びブラシを源之助に近づけながら碧が答える。


どうやら源之助とのコミュニケーショに忙しい中でも付き添いをしてくれるつもりらしい。

炎華には悪いけど、炎華についてきて貰えばそれで十分じゃないかね?


それとも碧にくっついた邪魔なパートナーを排除する為に、初心者用に見えるけど実は危険な案件をわざと回して来るぐらい退魔協会って碧に執着していてかつ腐っているのかな?


「くしゅにゃん!」

くしゃみっぽい音を立てて源之助が起きた。


偶然?

それともブラッシングの試みで起きた拍子にくしゃみをしたのかな?


どちらにせよ。

ブラシに飛び掛かり、噛みついて首を振っている源之助を見る限り、今日のブラッシングは不発と言ったところかな。




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