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心残り?


無事家に帰宅し、キャリーケースの中で呑気にうたた寝していた源之助を出して家の中に解放。


流石碧に選ばれた大物。

みゃうみゃう哀れっぽく鳴いていたのなんて知らないな〜という雰囲気で、腹を上にして無防備にクルミに抱きついて寝ていた。


中々の寝起きの良さを発揮して早速ふんふんとあちこちの匂いを嗅いで探索している源之助には、取り敢えずクルミのピンバッジ型分体を嵌め込んだ首輪(何かに引っ掛かったりして力が掛かると外れるタイプ)を付けてある。


本当は後ろを一歩も離れずに着いて行きたそうな碧だったが、『新しい家に来た後は暫く構わずに自由にさせてやれ』というアドバイスはほぼ全てのサイトに書いてあったので我慢していた。


まあ、代わりに私がクルミから伝えられた映像を見せているんだけど。


ある意味、使い魔って究極のスパイウェアだよなぁ。

それなりに魔力を使うけど。

同じ家の中だから半日ぐらいは何とかなりそうなので、それまでに源之助クンが落ち着いて自発的にこっちに来てくれる事を期待したい。


「もうちょっと猫ベッドやクッションを買っておくべきだったかなぁ」

碧の寝室に入り込んでベッドの下を探索した後、鞄の匂いを嗅いでいたと思ったら中に入り込んだ源之助の映像を見て碧が呟く。


「狭いところは好きだろうけど、ベッドに関してはそれなりに好みもあるだろうし、普通にソファの上でも良いかもだし、取り敢えずは様子を見たら?」

後から色々買い足していく方が楽しみがあるだろうし。


と言うか、昔の知り合いは1LDKの住処に猫ベッドを4つも買ったらしいが、結局猫ベッドが入ってきた『段ボール箱』が一番気に入られたと複雑そうな顔で言っていた。


買い与える物が必ずしも気に入られるとは限らないからね〜。

段ボール箱よりは猫ベッドやクッションの方が洗濯できて清潔だろうが。


段ボール箱が気に入られたら、定期的に捨てて似たサイズの箱で代替してもらうしかないだろうね。

そうじゃないとそのうち虫とかわきそうだし。


それはさておき。

「ちなみに、さっき言ってた仲良くしていたお爺さん犬って名前は覚えてる?

姿とか、昔の一緒にいた記憶とかと合わせて名前を呼ぶと喚びやすいんだけど・・・試してみる?」


碧に子守り用使い魔の話を持ちかける。

クルミよりもお爺さん犬の方が安心出来そうだから、さっさと喚べるか試してみたい。

ダメだったら隣の犬かな?


「でも、シロちゃんが死んだのって私が中学に入る前だよ?

まだ成仏しないで漂っているのかな?」

碧が疑わしげに尋ねる。


「犬や猫の霊って何か心残りな事があると案外とあっさり現世に残るんだよね。

虐待されてたとかじゃ無い限り、残っても特に何をする訳でもなく適当にふらふら遊んでたり昼寝したりって事が多いけど。

その心残りの対象が無くなったり、過去の情景がすっかり変わってくると消えちゃう事が多いんだ。

碧の家の方って町並みとかは昭和っぽくってあまり変わって無かったから、まだふらふら遊んでいる可能性は高いと思うよ?」

爺さん犬だったら遊ぶよりも日向ぼっこしながら昼寝している可能性が高いかな?


霊になって昼寝って何??と最初の人生では思ったものだが、考えてみたらのんびり良い気持ちで寝て過ごすのも天国に行くのとさして違いは無いかも知れない。


無理やり使い魔にされて酷使されたら哀れだが。

幸い、酷使された使い魔の霊は消耗が激しくて短時間で崩壊しちゃうので、生きている人間の奴隷モドキ程長期的に酷い思いはしない。


「シロちゃんに心残りなんてあったの?!」

碧がちょっとショックを受けたように囁く。


「心残りって言っても、雨の日に死んだ犬の霊がもう一度春の日差しの中で昼寝したかったとか、近所の子にサヨナラが言えなかったなぁとか、その程度で大抵は全然深刻な話じゃ無いよ?

犬や猫の霊って基本的にいつでも来世に行けるみたいで、かなり気軽な理由でふらふら寄り道してるだけだから」

まあ、ごく稀に江戸時代のホラーストーリーに出て来るような飼い主の死や自分の虐待を復讐する為に残る霊も居なくは無いが、大多数はそんな事は考えもせずにケセラセラ(なるようになる)的な精神でのんびりしている。


『心残り』って言う言葉に語弊があったかな?


「まあ、取り敢えず喚んでみるね。

どうすれば良いの?」

気を取り直した碧が姿勢を正した。


「私が魔力を乗せるから、オマケが付いてきてるな〜と思ってもそれを振り払わずに、シロちゃんの事を思い出しながら喚び掛けて」

遺品でもある方が記憶がはっきりしてやり易いのだが、それなりにしっかり覚えているっぽいので過去の思い出と共に喚べば届く可能性は五分五分ぐらいだろう。


が。

『なんじゃ。

シロを喚ぶのか?

ほれ』

碧が喚び掛ける前に、あっさり白龍さまが犬の霊と共に姿を現した。


そっか、藤山家にずっと寄り添ってきた氏神さまだもんね。

碧が子供の頃に親しくしていた近所の犬のことも、当然白龍さまは知っているのだろう。


『碧!

大きくなったのう。

散歩に行くか?』

犬の霊が呑気に碧に話しかけた。


いや、幽霊に散歩は必要ないから。

でも、使い魔にしたらその代償として散歩を要求されそう?

外で自由に歩き回りたいと希望された場合、どう言う形の使い魔にするかなぁ・・・。




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