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ブリーダー訪問

「・・・ここ?」

一見普通なビルを見上げて碧が首を傾げる。


ブリーダー訪問の為に教えられた住所に来たのだが・・・。

1階は小さな街の電気屋っぽい店。

横の階段に入り口には2階に塾があると看板が出ている。

ブリーダーは3階の筈なのだが、3階の郵便受けは聞いた事もないアルファベットな会社名が書いてあり、4階は『街のキリスト教の集い』と出ている。


怪しすぎる。

でも、住所は確かにここだ。

「電話で確認してみたら?」


こんな分かりにくい場所なのだ。

見つからない!!とアピールする方がこのブリーダーの将来の為にも良いだろう。


「そうだね」

と碧が携帯を取り出そうと鞄の中を漁り始めたところで、階段側の入り口が開き、リュック型のキャリーケースを大事そうに抱えた女性が出てきた。


「・・・ここみたいね」

碧が携帯を鞄に戻して扉へ向かった。


「なんか、こうも見つけ難いとヤバい事をやってるんじゃ無いかって心配にならない?

この会社名もブリーダーサイトには書いてなかったよね?」

後ろを追いながら低い声で碧に尋ねる。


まあ、体に異常があれば碧なら分かる上に治せる可能性が高いし、精神的にネグレクトされて捻くれて育っていたら私が分かるが・・・哀れすぎて、助けなきゃ!と碧が言い出さないか心配になってきた。

私達のマンションはペットは二匹までなのだ。ここで売っている全ての猫を救える訳ではない。


そんな事を心配しながら3階に辿り着き、ドアの横にあるインターフォンを鳴らして中に入ったら・・・びっくりする程の悪臭が襲い掛かってきた。


まるで子供の頃に友達の家の近所にあった養鶏場の様な臭いだ。

養鶏場は糞尿をそれなりに垂れ流しているだろうから臭いのは分かるが、子猫は流石に糞尿塗れで放置って事はないよね??

それとも大量に動物を飼うと、運動部の部室の様にいくら掃除していても自然に臭くなるものなのだろうか?


でも、猫って綺麗好きで匂わないって何かで読んだのに!


「・・・強烈な臭いですね。

猫って綺麗好きで匂わないのかと思っていました」

碧が私が思っていた事をあっさりブリーダーさんに尋ねた。


すげ〜。

それ、聞いちゃうんだ?

重要なポイントでもつい気を遣って聞けないのって悪い癖なんだけど、下手な事を聞いて王族の怒りを買うと投獄されかねなかった前世の記憶が邪魔をするんだよねぇ。


碧の質問に、40代ぐらいの女性のブリーダーさんが困った様に眉をハの字にして溜め息を吐いた。

「すいません。

猫のオシッコやウンチって強烈に臭いんですよ。

メスや子猫は基本的に排泄行為はトイレでやってくれるし、トイレ砂の消臭効果は中々凄いので個人宅で飼う分には臭くなる事はほぼ無いと思います。

でも、ウチはブリーダーなので去勢していないオスがいるんです・・・」

ちょっと遠い目をして言われた。


「メスとヤル事やっててもマーキングしちゃうんですか・・・」

碧が同情した様に言う。


マーキング?

寒村時代には熊が縄張りを示す為に爪でマーキングしていたら、そこには山菜や薬草の採取の為でも入らないのが常識だったが・・・ここで言うマーキングは犬が電柱ごとに立ちションベンして、飼い主にペットボトルの水で洗い流されてるあれだよね?


「種類ごとにオスがいますし、雌猫の健康の為にも妊娠は年に1回に制限しているので・・・猫ってそう言う事を理解してくれませんから」

猫っていうよりも、オスの本能じゃないのかね。


養育費とかの問題があるから人間は避妊具を使うしオシッコでテリトリーのマーキングはつけないが、何も考えずに『種の繁殖』に邁進しながら生きてるっぽいのはそれなりに見かける。

こないだのロクデナシもそれに近かったし。


「マーキングをしているのに気づいたら直ぐに拭いて消臭スプレーを吹き付けているんですが、マーキング時のオシッコがスプレー状な事も多い為、完璧には拭き取れない事がそこそこあって・・・。

ちなみに、発情期を迎えるとメスでもマーキングする事があるので、オスでもメスでも発情期を迎える前に去勢・避妊手術をする事を強く推奨しています。

メスなら避妊手術をすれば子宮がんとかの生殖器系の疾患をほぼ100%防げますし」

ブリーダーさんが説明を始めた。


売り出している子猫全部を見たいし普段の環境も見せて欲しいと頼んでおいたお陰か、入り口を入って直ぐの面会スペースの様なところは素通りして、奥の広い部屋へ案内された。


更に臭いが凄くなったが・・・悪臭からは想像出来ないぐらい、見た目は清潔だった。

窓から見て右の壁際にそこそこ大きなケージが並んでいて猫が数匹個別に入れられ(オス達かな?)、左側には母猫と子猫用らしき家族サイズっぽいもう一回り大きなケージが開け放たれ、多数の子猫が部屋中を気ままに走り回っていた。


「可愛い〜〜〜!!!」

低く抑えた叫び声が隣の碧から漏れた。


あ〜。

虐待されてるのを救う必要は無さそうだけど、これはどれも選ばずに帰るという選択肢は無いな。


昨日のうちにブリーダー紹介サイトに書いてあった『必要な道具』を全部買っておいたのは正解だったようだ。



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