準備
「よし、ここはアメショーとミヌエットとベンガルを育ててるらしくって合計八匹も売りに出してる!
ここをまず見に行こう!」
碧がブリーダー検索を始めて暫くしてから声を上げた。
3種類ものタイプの猫を育てて売ってるって一体どれだけ大きな施設なんだ。
もう少しアットホームな小さい所の方はいい気がしてきたが、まあ『多数の猫を比較』は私が言い出したことなのだ。
取り敢えず見に行って大規模すぎて猫の世話が微妙となったらもっと小規模なところに行けば良いだろう。
ブリーダーによっては勤め人が副業っぽくやっているのか『夜と週末しか対応出来ません』と書いてあるところもあったが、さすがに八匹も一気に売り出している大きな所は専業らしく、直ぐに連絡がついて『平日でもOK』とこちらの都合を知らせたら翌日の朝に予約が取れた。
早い。
ちなみに猫は碧が買って世話をするとの事で、私はもしもの時のヘルプ役だと確認が取れた。
なので猫を選ぶのに私のインプットがいるか微妙なのだが、性格判断の為に同行する事に。
明日も大した授業は無いからいいんだけどね。
「ちなみに、トイレとか餌や水の容器とか、キャリーケースはどうするの?」
ネットで買う方が安いだろうが、この勢いで話が進むなら下手をしたら明日には子猫が来てしまいかねない。
だとしたら今日中に準備出来るよう近所のペットショップで買い揃える必要があるだろう。
・・・つうか、話がやたらと早く進んでいるけど大丈夫なのかね?
「ちなみに、猫を買うのを決めたのはどうして?
実家で飼えないにしても、こちらに出てきてからゲットすれば良かったのに」
昨晩急に思いついた訳じゃあ無いよね・・・?
「前から飼いたいとは思っていたんだ。
でもやっぱり一人暮らしだとちゃんとケア出来るか心配で。
凛と共同生活になったから、もしもの時にちょっとお願いとかも出来そうかと思ったら、我慢できなくなっちゃった」
てへぺろ的に頭を掻きながら碧が答える。
おやま。
私が最後の一押しだった訳?
仕事の時は一緒に出る可能性が高いから留守番とかの時間は変わらないんだけどなぁ。
まあ、クルミか別の使い魔を残しておけば、ケーブルとかおもちゃを食べてヤバい事にならないように見張れるけど。
ニャンコの子守り用に犬か人間の霊から使い魔をもう一体作ろうかなぁ。
クルミは元猫だからちょっと感性が猫よりで、悪戯防止とかにはあまり信頼出来なそうなんだよねぇ。
『ケーブルを噛もうとしたら止めて』と頼んでおいたらケーブルを噛む事自体は止めてくれるだろうが、お洒落なバッグのストラップをくちゃくちゃ噛んでても止めない可能性が高い。
死ぬ様な行動は止めてくれるにしても、それ以外の私達へダメージが大きい悪戯への抑止力はかなり怪しい気がする。
でも、犬も色々悪戯するんだっけ?
お爺さんかお婆さん犬だったらどっしり悪戯を止めてくれるかなぁ?
「ところで。
白龍さまや炎華はペットに怖がられないんだよね?」
魔物を従魔にすると幻獣に怯えると聞いた事があるが、平和な現世で繁殖されてきたペットはそこまで敏感では無い・・・んだよね?
「え?」
碧が驚いた様に目を丸くして聞き返してきた。
「今まで見たり遊んだりした猫や犬って白龍さまに怯えたりしなかったんだよね?」
流石にペットの為に白龍さまを家から立ち入り禁止にする訳にはいかないぞ?
『ミニチュアサイズの時なら、余程敏感な個体じゃない限り大丈夫じゃろ』
ふわりと現れた白龍さまが碧に告げる。
「じゃあ、明日はブリーダーのところにも一緒に来て頂けますか?
白龍さまを感知できて逃げる子は避けた方が良いでしょうから」
性格や賢さはある程度分かるが、流石に超常の存在に対する感知力は分からない。
『ウチに居る氏神様に怯えるので返却させて下さい』なんて言えないだろうから、最初にチェックする必要がある。
『うむ。
炎華も連れて行く方が良かろう』
白龍さまがあっさり合意する。
ペットはライバルが増えると嫉妬する事も多いと言うが、流石に氏神さまはペットに嫉妬するつもりは無いらしい。
まあ、白龍さまにとって碧は保護対象で、ペットは更に碧が保護する対象だからねぇ。
階位が違い過ぎて話にもならないか。
取り敢えず。
夕方になって少し涼しくなったら猫用品の買い出しを手伝うかな。