忘れてた
「なんかさぁ、新しい紋様を知ったら今まで出来なかった機能を有する魔法陣を作れるかと思ったんだけど、黒魔術系だと新しいのってそれが見つかった符自体で足りちゃう感じ。
多少は私の方で効率アップ出来そうだけど。
そんでもって、完全に新しい機能は属性が違って起動させられない・・・」
色々と紋様を足したり引いたりしてみた魔法陣を前に、思わず愚痴が漏れる。
元素系の魔法陣だと元素の指示部分(『発火』とか『空気を動かす』とか言った感じの部分)を入れ替えると他の属性の魔法陣でも起動することがあるって話なので、黒魔術でも他の属性の紋様を流用しても機能するのが一つぐらいはあるかな〜と期待したんだけどねぇ。
前世でそれなりに体感してはいたけど、やはり黒魔術って元素系魔術との互換性が無い・・・。
死とか命とかと関連するので多少は白魔術系の一部とは互換性があるかもだけど、白魔術系の魔法陣は単純な治療系のばかりでそれらは黒魔術に応用させるのは無理だった。
白魔術師の皆さん、もっと魔法陣の研究をしようよ〜!
「どんな機能を起動させたかったの?」
源之助を抱き抱え、右の前足の肉球をプニっと握って爪を出させながら碧が尋ねてくる。
以前の知り合いだった近所のお姉さんは猫の爪を切るのにめっちゃ苦労して、結局定期的に獣医に行く際にギリギリまで切って貰っていたけど、源之助って爪切りに関してはかなり大らかなんだよねぇ。
青木氏の猫なんかでも青木氏と従業員の誰かとで二人がかりで切っているらしいが、うちでは碧が一人で切れている。
私も指2本分ぐらいなら切らせてくれるが、3本目ぐらいで嫌がり始めるので私だと数日に分けて切る必要があるのだが、碧だと一気に全部の爪を切れる。やはり『お母さん』は強いらしい。
それはさておき。
「まあ、それこそ風を吹かせて嵩張らないファンみたいのをシャツの中で起動できたらいいな〜とは思っていたけど、これは露骨に風の元素系な力だからあまり期待はしていなかったんだよね。
もう少し実現性があるかなぁと期待していたのは電気系かな。
雷撃系の紋様が分かったら、それを神経伝達と同様な感じで利用して家電とかネットを魔術でアクセスするのに使うとか、最低でも盗聴器みたいな物が間近にあったら探知できる様な魔法陣が出来たら良いなぁと思ってたんだけど」
記憶とか痛みとか言った、神経や脳が関係しそうな事は黒魔術系の属性なのだ。
脳や神経で伝達される信号って極々弱い電気だと言う話だから、外に対して電気を動かす魔法陣を作れたら私でも使える家電やネットへの応用が効く魔道具カードが作れるんじゃ無いかと期待したんだけどねぇ。
「ネットや家電へのアクセスはデリケートそうだからショートさせて壊す未来しか見えないけど、盗聴器とか隠しカメラとかを探知できるのは良さげだよね。
でも、雷撃系の符なんてウチの蔵にあったっけ?」
碧がちょっと首を傾げながら言った。
「無かった。
風と水の適性が高い元素系の魔術師なら雷撃を使える筈だから、そう言う符が無いかなぁと期待していたんだけど。
なくても、水と風の力をなんとかしたら電気を起こせないかとも考えたんだけど、そっちはハードルが高すぎて話にもならないね」
神経伝達の電気を特定できたら黒魔術師の私でも術を使えたかも知れないけど、風と水から雷(電気)を生み出すのはがっつり元素系過ぎて無理だろうとは思っていたけどさ。
空間系の適性が転生した事で増えたのだ。
更に何か追加で出来るようになる奇跡が起きる可能性だってゼロでは無いかも??と思ったけどやはりゼロは転生してもゼロだったらしい。
「盗聴器とかはなんか発見する道具も売っているらしいからそっちで探すしか無いかな?
確かに魔術で発見できたら盗聴している相手とかにバレにくくて良いとは思うけど」
碧がちょっと残念そうに言った。
「雷撃系の紋様さえ分かれば、空間系の把握能力を使ってあるべきじゃ無い電子機器を発見するぐらいは可能かもとも思ったんだ。
まあ、今時の盗聴器とかってランプの台の部分とかコンセントの裏とかに設置するらしいから、あるべきじゃ無いと把握できるかも微妙だけど」
それに家の中の電波とか電気とかって凄い事になっていそうだから、魔術的に電気とかを感知出来るようになっても情報過多で収拾つかない可能性も高いかも。
「そう言えば、退魔協会の販売コーナーに雷撃の符があった筈だけど、それじゃダメなの?」
碧がふと口にする。
あれ?
そう言えば、周囲に被害が出た時に損害賠償も自己責任になるから使い勝手が悪いけど、攻撃系の符も売られているって聞いた気も?




