あり?無し?
「うがぁぁぁぁ!
図形ってどうやったらデータベース化出来るの?!」
夏休みのプロジェクトちっくに、藤山家で写させてもらった紋様型な符と、自分の記憶にある前世の魔法陣とを色々と書き出した。それらの共通項から魔法陣の言語を解読出来ないかな〜と思っていたのだが・・・中々上手くいかない。
「どったの?」
リビングのソファで源之助と一緒に寝転がっていた碧が首を上げて尋ねてきた。
「あ、ごめん、寝てた?」
「私は大丈夫だけど、源之助はちょっとびっくりしたみたいだから後でおやつでもお詫びに出したら良いかも?」
いつの間のかソファから食卓の上へ飛び乗って、こちらをちょっと警戒する様に見ている源之助を指差しながら碧が応じる。
どうやら急に大声を出したせいでびっくりして飛び起きて食卓までジャンプしたらしい。
後になっておやつを出してもお詫びと認識されないだろうから、今出そう。
今出してもお詫びとして認識されるかかなり怪しいけど。
猫ってそういうところがかなり刹那的だからなぁ。
どう言うおねだりの仕方をすれば上手い事おやつをゲットできるかとか、碧や私がやっていた事を中断して源之助との遊びに付き合うようになるかの因果関係っぽい流れは覚えるくせに、怒られた時の因果関係とか、こちらが何かやっちゃった時のお詫びとかの流れはイマイチ断絶して認識されている気がする。
クルミに説明して貰おうにも、クルミ自身がおやつを貰うのは当然の権利であり、お詫びという理由が何故必要なのか分からないって言ってるし。
クルミ自身が『驚かされる→お詫び→おやつ』と言う流れの論理的必然性を理解していないから、源之助に説明するのも実質無理なんだよねぇ。
『お詫び』そのものがイマイチ猫のメンタリティ的に語彙として存在していない気がする。
取り敢えずチュ◯ルを取り出して源之助に捧げたら、喉を鳴らしながらすりすりと頬を私の手に押し付けながらお代わりを要求された。
「いや、食べすぎると太るから、お代わりは無しよ」
このおやつだって夕食後の分を先取りしてあげてるだけだし。
碧の課している体重管理は厳しいからね〜。
「で?
どうしたの?」
源之助が諦めてソファへ戻ったので、碧が再び聞いてきた。
「いやぁ、木島の件が終わったからさ。魔法陣の理解を深めて、自分用のプログラムでも作って魔力をガンガン込めて集中しなくても新しい魔法陣を生成出来るようになりたいな〜と思って頑張ってるんだけど。
魔法陣って実質図形みたいな感じじゃん?
お陰で上手くデータベース化出来ないんだよねぇ」
木島に関しては、どうも高齢者用施設に関しては証拠が足りなかったのか、それとも社会的影響が大きすぎると圧力が掛かったのか知らないが、結局有耶無耶にされて起訴見送りとなった。だが名畑さんと津田さん及び香取夫妻の死に関しては責任を問われて殺人罪で起訴。
これら4人の死に関しては有罪判決になる可能性はかなり高いと検察側は見ていると田端氏は言っていた。
高齢者に関しては勝率が低いからスルーする事にしたとなると何とも家族や本人の霊にとってはやるせ無い話だが、証拠が足りないのに起訴して無罪判決になったら更に許し難いのでしょうがないのだろう。
こっそり昇天していない被害者の霊達を呼び出して、裁判が終わるまで現世に残りたいかもう昇天する気はあるかを聞いたら全員残る事を希望したので、裁判が終わったらまた確認してみるつもりだ。
依頼でも無いのに力尽くで浄化する必要もないだろう。
被害者なので、昇天したいのにやり方が分からないと言う状況なら手伝うけど。
それはさておき。
魔法陣である。
図形っぽい線もある種の文字であり、文法みたいなものも存在する言語なのだと思うが色々データベース化して分析するには図形っていうのはダメなのだ。
西田がデータベース化したんだからITに強い人間になら可能なんだろうけど、私如きのコンピュータースキルでは厳しい。
適当に平仮名でも割り振ってデータベースに登録できないかと思ったけど、図形の何処からどこまでをどの仮名にするかで躓いている。
「西田を呼び出してデータベース化する方法を教えて貰うのはどう?
西田に退魔協会のサーバーへ侵入させる訳じゃあないから、バレないと思わない?
碧が提案する。
・・・何かやらせるんじゃなくって、アドバイスを貰う程度だったらありかなぁ?




