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誰の怨念?

敷地の東側は小学校だった方なのか、それ程問題は無かったものの・・・西側は穢れがあちこちにべっとり固まって滞留している感じだった。

「場所によって変に穢れが濃くなったりしているのって、砕かれた慰霊碑のかけらがあちこちにばら撒かれたからなのかな?」

暫く歩き回ってから、碧が首を傾げながら言った。


「元々の慰霊碑のサイズがどうだったのか知らないけど、大きな岩を粉々に砕く道具を工事現場に持ち込むとも思えないから、一体どう言う流れでばら撒かれたのか、不明だね」

川辺にあった砂利や岩を態々撤去してから他から持ってきた砂利と土を混ぜて地面の整備と補強をするとは思えないから、岩は放置したまま適当に良さげな砂利を土と混ぜて埋め立てに使ったと思っていたのだが・・・ショベルカーで色々やっている間に慰霊碑が直撃されて粉々になったのだろうか?


もしくは工事の前に既に時の流れでひび割れて埋まっていたのが、土をかき混ぜたせいでバラバラになったのか。


どちらにせよ、変な感じに広い範囲に穢れや悪霊の恨みがバラバラになって偏在している感じだった。


「なんかこう、悪霊を一体毎に除霊するって言うよりも、バラバラにされた死体がゾンビになってあちこちから襲ってきそうに蠢いている感じだね」

碧がちょっとグロい描写を口にする。


「ゾンビは本体から離れた部分は動かなくなるよ?

基本的に」

『本体』が胴体なので頭が無くても動くので誤解され易いが、手だけが動いて襲ってくることは無い。

基本的に。


「・・・なんか聞いたら後悔しそうだけど、『基本的』にってどう言う事?」

碧が嫌そうに聞いてきた。


「大量に魔力と命を注ぎ込んだ呪いで作ったゾンビは、きっちり浄化するか完全に魔力が無くなるまで体の一部を切り離してもまたくっついて初期命令に従おうとするから、くっつこうとしている部位の間に挟まれるとゾンビに取り込まれる様な形になる事も・・・あるらしい」

意図してゾンビがやる攻撃って訳じゃあないが、大量の呪いゾンビに囲まれて物理的な攻撃手段しかない人間が戦っていると、ゾンビに取り込まれて窒息死する事があると言う話だ。


私は実際に見たことはないけど。

過去の黒魔術師による悲惨な事件の記録に載っていた。


「うげ〜。

ゾンビに取り込まれるなんて、マジもんのホラーじゃん。

手だけウゾウゾ動いて近づいてくるのと同じぐらい不気味!!

まあ、それはともかく。

どうもここは『慰霊碑を見つけてそれを除霊』って無理っぽいから、敷地のこっち半分ぐらいの部分を適当なサイズに区切って浄化していく?」

碧がブルブルと首を振ってから、気を取り直して提案した。


「だね〜。

交互に30メートル四方ずつぐらいでやっていく?

取り敢えず、一歩70センチぐらいだと想定して、40歩ずつぐらいでいいかな?」


「ん。

それでいこう」

碧が敷地の端っこに駆け寄って、こちらに向かって歩き始めた。


「ここで40歩ね〜」


「おっけ。

じゃあ次の40歩分を私が浄化するね」

碧が大体の区画を区切って浄化の祝詞を唱え始めたので、先ほど40歩と区切られた部分から歩き始めて40歩のところに印をつけ、少し戻って自分も浄化の術を掛ける。


ん〜?

なんかこう、川の場所が変わって慰霊碑が埋もれちゃうほど昔の恨み・・・と思えないぐらい新しい怨念も混じっている感じだな。

恨みっていうか、不満って言うか、絶望って言うか。


もしかして、高齢者施設で死を待つ生活の不満や絶望も悪霊の恨みに引き寄せられて混ざり、穢れを増量させちゃってるんかも?


完全にボケちゃって何もわからなくなっていたら不満も感じないかも知れないけど、中途半端に認知症が進行していて、本人的にはまだ自立して生活できると思っているのに家族にここに押し込まれたなんて感じている人は恨んでいるのかもねぇ。


下手をしたらヤバい精神病院みたいに、精神科医を抱き込んで患者が正常では無いって診断書を書かせてここに押し込んで、財産の管理権を奪い取っている人もいるかもだし。


まあ、介護施設なんてスタッフの回転も早いらしいし、見舞いで訪れる人も多いだろうから、ボケてないのにボケたって事にしてここに軟禁していたらバレるだろうけど。

だから恨みって言っても実は逆恨みというか、現実が分かっていない病人の妄想に近そうだ。


とは言え。

妄想でも、恨みの怨念エネルギーは変わらないからねぇ。

この分じゃあここを綺麗に祓っても、数年したらまた穢れそう。


高齢者施設って実は案外と怨念が渦巻いているのかな・・・?




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