こっそり正義の味方?
「取り敢えず、あのおっさんが又現れる様だったら諦める様に意識誘導しようか?」
今回分の聖域の雑草を集め終わり、袋を持って帰途に付きながら碧に尋ねる。
「あんなのしょっちゅう来ているんだから、気にしなくて良いわよ。
継続的に非常識で自己中な事を言わなくなる結界とかお守りを作れるって言うんじゃ無い限り、一人黙らせたところで大して違いはないし、変に手を出して凛の能力がバレる方が面倒な事になりそうでしょ」
碧が私の提案を却下した。
「そうだねぇ。
まあ、藤山家の皆さんは慣れているっぽかったしね。
恐怖感を煽る結界を作るのは可能だけど、藤山家に来る人が全員恐怖感を感じる様になったら困るだろうし、ああ言う自分に都合の良いことしか見ない馬鹿なタイプはタイミングを測って恐怖心を煽らないと追い払うのにも上手く使えなそうだし」
もっと繊細な人が相手だったら、藤山家に来ると背中がゾクゾクするって自覚すると来なくなる可能性が高いけど、あのウザイおっさんだったら・・・体が恐怖を感じていても、無視して突進しそう。
それこそホラー映画で、明らかにヤバいのに強がって足を進めてガブリとやられるタイプな気がする。
いや、ホラー映画だとそう言うムカつくアホが意外と最後まで生き残って色々問題を引き起こし、他の善良なモブ役がとばっちりを喰らってガブリとやられるかな?
「恐怖心を煽るお守りがあったら苛められている子とかには良くない?」
碧がちょっと首を傾げながら聞く。
「う〜ん、苛めっ子ってプライドが高いタイプが多いから、自分が恐怖を感じるなんて許容できなくて、変なゾクゾクする感覚だって平気だって自分に証明するために更に苛烈に苛めそう」
苛めっ子に追随するタイプは近付かなくなるかもだけど、苛めっ子が主導している場面では苛めに加担するだろうからダメだろう。
「まあ、下手なお守りよりもICレコーダーで苛めの実態を記録して、後は物理的に危害を加えられているなら医者に診断書を出してもらって弁護士と一緒に警察に行くのが一番効果的だよね」
碧が頷く。
「だね〜。
弁護士を連れて行ったら高くつきそうだけど、長期的には苛めのせいで転校したり、受験に失敗する費用と比べれば安いもんだろうし」
考えてみたら、触った人間に頭痛を齎して追い払うような魔道具なら作れるかも?
でもまあ、神経に負荷を掛けて痛みを感じさせる魔道具なんて危険だから人に渡さない方が良いよね。
対象者に付与させたり身に付けさせることで無気力にさせる術はあるんだけど、お守りにしたら本人が無気力になっちゃう誤爆リスクが高そう。
元々あれは前世で敵国捕虜とか死刑されない囚人を扱い易くする為の術だったから、基本的に誰かに掛ける術であって、身に付けて狙った人間にだけ付与するなんていう使い方は難しい。
私が持っていて誰かを狙って術を掛けるのは可能だが、苛められっ子の護身用に持たしても却って本人が無気力になって不登校になって引きこもる引き金になりかねない。
「苛めの問題ってそれなりに大々的に問題視されているのに、なんだってもっと文明の利器を使って証拠固めして反撃しないんだろうね?
反撃したら更に過酷に苛められたなんて場合だったら、それこそ苛めっ子を退学にするように教育委員会にでも働きかける良いきっかけになりそうなもんだけど」
碧が首を傾げながら言う。
「だよねぇ。
こう、大人しくて苛められるタイプはまだしも、苛められた子を庇って標的になった子なんかだったら反撃しようと考えそうなもんだけど。
まあ、そう言う子相手の苛めだと村八分的な陰湿な排除的苛めで、お金を脅し取ったり怪我をさせたりするような苛めじゃないのかな?」
「まあ、苛めのターゲットになった時点で学生生活はお先真っ暗だから、下手に苛められている子を助けようとしないのも分からないでもないけど・・・マジで、苛めを主導するような子に心の痛みを共有させる方法があれば良いのに」
結局、親の経済力なり本人の能力なりが原因で個人間で『力』に違いがある限り、苛めっ子もモラハラやパワハラやセクハラ親父も居なくならないんだろう。
少なくとも前世のように、権力者が見た目が綺麗な女性を無理矢理手籠にしても罰するよう求める手段すら無い世界よりはマシだ。
とは言え。学校での苛めはまだしも、会社でのハラスメント系の方は声を上げるとその後の会社での扱いが悪くなるとかってありそうだし、世の中難しいよねぇ。
そう言う理不尽に虐げられた人を助けられるような、個人を相手にしたストーカー退治とかハラスメントする人間の意識誘導(による多少の人格修正)っぽいサービスに関しては、ちょっと考えても良いかも?
でも、時間が掛かって難しい割にあまり大金は取れないだろうから、半ばボランティアになりそうかなぁ。
正義の味方でボロ儲けなんて出来ないにしても、他の仕事でもっと儲かるとなると優先順位がどうしても下がりそう。