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暗いのは嫌でも・・・

結局、聖域侵入目的のウザいおっさんは携帯の充電が切れていたのか息子から伝わっていた電話番号を警官が掛けても繋がらず、翔君が警官と一緒に山の裏から歩いて迎えに行った。


「考えてみたら、携帯を持っていて迷子になるって・・・単に私有地に不法侵入する為の言い訳??」

朝食を食べながら碧に尋ねる。


昔ならまだしも、今時の携帯だったらどれでもGPS機能が付いているのだ。

帰れるだろう。


「いや、山の中は素人が真っ直ぐ目的地に向かって歩く訳にも行かないからね。

うっかり藪の中を突っ切ろうとしたら崖や沢に落ちたりもするから、道沿いに進まないと危ないの。でも山の中の私道なんて地図には乗ってないから、迷うことはそれなりにあるんだよね。

地形と道の大体の位置を知っていれば、GPSで現在地を確認してちゃんと道を見つけて帰って来れるんだけど」

碧が説明してくれた。


そっか。

道がマップアプリにも出て来ないのか。

確かによく見ると山の中ってのっぺり緑で所々に川や県境の線があるだけだね。


携帯のGPSがあるんだからと油断して森の中とか山の中には入らないように気をつけよう。


山歩きをするなら都会の鴉じゃなくって田舎のトンビとかの霊を使い魔にするべきかな。

山の中ってどんな鳥がいるんだろ。フクロウの霊だったら夜目も効いて更に良いかも?


まあ、山歩きそのものをする気がないから、いらんか。



朝食後は蔵に入らせて貰い、文字ではなく紋様を使っているタイプの符をタブレットで写真を撮りまくった。

藤山家の長い歴史の中には色々と研究肌な人も居たのか、数はかなりあったが説明を古文書アプリで大雑把に解読したところ、かなり微妙なのも多かった。

まあ、昔は今よりも妖怪とかが多くて色んな役割が退魔師に求められていたのかも知れない。

はっきり言って、妖怪=魔物だとしたら数百年程度前でも生息数がそれほど変わるほど魔素の濃度が濃かったとは思えないが・・・住民の思い込みと恐怖の念で生霊的な存在が作り出されていたのかな?


迷信深くて情報が足りなかった時代だったら色々と噂が噂を呼んで妄想が爆誕していただろうし。

食い詰めた農民が野盗になって妖怪のふりをして旅人や近所の人を襲っていた可能性もある。


だからこそ退魔師は妖怪を退治するのに効果のある符の作成に余念がなく、色々と微妙な効果なのも起動するなら一応取っておくって事になったんだろうねぇ。


「ただいまぁ〜」

お腹が空いたので昼食でもと母屋に顔を出したら、丁度翔君が戻って来たところだった。


「おかえり〜。

どうだった?」

碧が声を掛ける。


「息子を連れて山に入ったのにあっさり逸れて自分だけ迷子になった挙げ句、日が暮れてきて身動き取れなくなって救助の要請で電話したけど翌朝まで動かずに待てと言われたのに、真っ暗になるまで携帯のライトを使って動き回ったらうちの敷地の金網を見つけて登って入ったんだってさ。

当然結界は越えられず、暗いのが嫌だから携帯のライトを点けたまま聖域の外で夜が明けるのを待っていたら携帯の充電が切れたんだって」


「マジでアホだね」

碧が吐き捨てる。


「一応モバイルバッテリーを持って来ていたから大丈夫だと思っていたら、それでも夜通しライトを点けていられる程じゃなかったんだって。

充電%が減ったらさっさとライトを消せば良かったのに、ちゃんと確認していなかったから気付いたら電気切れで真っ暗だったらしい」

翔くんが説明を付け加える。


一応準備をしていたにしても、あのおっさんが愚かである事に変わりはないね。

準備の必要を認識していたのに、それで安心してちゃんと現在地とか充電量を確認し続けなかったなんて、ある意味単なる考え足らずよりももっとアホなんじゃない?

「しっかし、子連れで山に入って私有地に不法侵入しようとして、子供と逸れた上に自分が遭難するなんて何をやっているんだかって感じだね」


「本当にねぇ。

なんか、体力が無くて子供について行けなくて、いつのまにか消えてたんだって。

父親の威厳的にもっとゆっくり進んで欲しいって言えなかったせいで取り残されたんだそうだ。

子供が父親と逸れても落ち着いて自力で宿に戻って受付の人に相談できる子で良かったよ」

台所の方から出て来た碧パパが溜め息を吐きつつ教えてくれた。


「それだけ賢いなら、能力があればどっかに弟子入りして覚醒出来るんじゃない?」

翔くんが言った。


「まあねぇ。

とは言えあのバカな父親が漏れなく付いてくるとなると、弟子として受け入れるのも成人後じゃないと嫌がられそうだから、ちょっと出遅れるかもね」

昼食の入った大皿を手に現れた碧ママが言う。


アホがしゃしゃり出てくると思ったら弟子に受け入れたく無いと思っても不思議は無いね〜。

ちょっと可哀想かも?

でも本人の性分がまともなら、退魔師の一族なんだし親族の集まりとかで頼りにできそうな親戚にこっそり基礎だけでも教えてもらうことは可能かもだから、将来に期待ってとこだね。


子供は親を選べないからねぇ。

なんとか上手く成人後の生活に繋がる事を祈っておこう。



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