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湖はあちら

携帯の目覚ましの音で目が覚めた。


ワンチャンあの煩いおっさんが瀕死でハネナガが起こしにくるかと思っていたが、無かったようだ。


『どう?

誰か見つかった?』

ハネナガのリンクに魔力を流し込んで尋ねる。


『人間の中年男が結界のそばに寝ている。

だけど近くに道が見つからないから道からの案内が出来ない』


ちょっと想定外な返事が来た。


「えぇ〜?

・・・なんか、中年男が結界の外で寝てるのを見つけたって。

ただ、道からの行き方を確認してから教えてってお願いしたんだけど、道が見つからないらしい」

碧に声をかけた。

道が見つからないってどういう事??


「あ〜。

ハネナガ君って都会の鴉だからねぇ。

アスファルトの道路が『道』だと思ってるんじゃない?

結界の山側は元々人が入ることを想定していないから、アスファルト舗装してないんだよね」

碧が苦笑しながら教えてくれた。


「おお〜。

もしかして、土を固めたような所謂いわゆる獣道??

でも、そんなの直ぐに草に覆われて無くなっちゃわない??」

私も田舎道なんぞよく知らないけど、雑草って凄いんじゃないの?


まあ、昔はアスファルトなんて無かったんだから土でも踏み固めれば道として使える・・・んだよね?

土系の術師が居たらガッツリ術で固められるかも?


「私道だからねぇ。

流石に獣道よりはしっかりしているけど、適当に木を切って砂利で固めておく程度?

年に何度か鉈や聖域で使っている草刈機で雑草を刈り取ってるの。

下手に綺麗な道を整備すると今回のアホみたいのが大量発生するしね。

そう考えると、あの男も少なくとも根性はあったみたいね」

碧がパジャマを脱ぎながら教えてくれた。


なるほど。

車で入るのは想定してないのかぁ。

木とかが折れたらどうするんだろ?

倒木って撤去しないと大雨が降って土砂崩れが起きた時なんかに危険なんじゃ無かったっけ?

まあ、いざとなれば白龍さまが本体に戻ってむんずと掴んで動かすのも可能だろうけど。

境界門が近いからエネルギーを使っても直ぐに補給できるし。


「結界沿いに居るんだったら、諏訪湖との相対的な位置を教えてもらって地図で場所を大体割り出そうか」

嫌そうに溜め息を吐きながら碧が言った。


「私がハネナガの視界を共有して見たのを碧に念話の魔道具で見せるのはどう?

かなり集中しないと映像を見せるのは難しいけど、一応できる筈」

念話の魔道具を補助具にして碧と視界共有している感じにすれば可能なんだよね。

ちょっと魔力消費が大きいけど、下手に山の中を歩き回る羽目になるよりはマシだろう。


「お、その方が場所がしっかり分かりそう。

ちょっと地図を持って来るから、待ってて」

碧が嬉しそうに言った。

やっぱ家を一応出たとは言え、休みで帰って来た娘も遭難者の捜索には駆り出されるのか。


私も手伝うべきなのかなぁ?

山道の歩き方なんて知らないから、二次遭難して足手纏いになりそうな気がするけど。


碧が地図を持って来たのでハネナガにもう一度繋がり直し、更に視界を碧へ流す。

久しぶりにガッツリ魔力を使って頭が痛くなってきたが、何分山とか森の中の風景なんぞ私が見ても全然場所が分からないので、碧との視野共有は必須だった。


「う〜ん、木の上からの視野って分かりにくいねぇ。

ちょっと湖の方に向いてもらえる?」

碧が唸りながら言う。


『ハネナガ、湖の方へ向いてくれる?』

場所によっては湖が見えないと思うが、少なくとも結界周辺だったら尾根が邪魔になって湖が見えないと言うことはないらしい。


『あの光っているのが湖とか言う大きな水の塊だ』

ぐりっと視野が回り、木々の間に青空に溶け込むような湖の水面が見えた。

流石に鳥だねぇ。

視力が凄い。


考えてみたら、将来的に老眼になったらハネナガ・・・か適当な文鳥あたりの霊を使い魔にして目の代わりになって貰うのも、ありかも?

まあ、視点がズレるので慣れるまでは微妙かもだが、こないだ帰ったら母親がちょっと携帯とか食べ物のパッケージの印刷とかを読み難そうにしていたから、使い魔の視野共有っていうのもありじゃないかな?


やっぱレイシックとかで眼球を切り刻むのは怖いからなぁ。

つうか、レイシックは近視用だっけ?

老眼は白内障で水晶体を入れ替える際に保険の効かない遠近両用のを入れないと駄目と聞いた気がする。


まあ、考えてみたら碧に頼んだら眼球の劣化も治してくれるかも?

今度聞いてみよう。

場合によっては頭がまだ柔らかいうちに使い魔の視野で文字を読む練習をしておく方が良いかもだし。


「ああ、分かった。

ちょっと奥の方に行っちゃってるけど、考えてみたらあそこら辺なら携帯が通じる筈だから、帰り道を電話で指示してせめて道まで出てくるように誘導出来ないか、父親と話してみるわ」

ハネナガの視野と老後のことを考えていたら、碧が何やら頷いて地図に印をつけていた。


そっか、聖域の裏程度だったら携帯が通じるんだ?

だったらGPSでも使ってさっさと帰って来いよって感じだねぇ。


遭難したついでに聖域に入ろうと思ってるのかね?





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