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能力と適性

「やはり退魔師の旧家なんかだと、家の後継ぎは退魔師じゃ無いと駄目とかってあるんですか?」

その晩、夕食を食べながらふと気になって尋ねてみた。


家業があって、それで富を培ってきた一族だったらその家業が出来る方が後継者競争に有利な気はする。

だとしたら、能力の覚醒になりふり構わずなるのもしょうがないのかなとも思えるのだ。


「まず、前提として後継ぎになりたいかって話になるけど、一族の『当主』は確かに退魔師の旧家だったら退魔協会の一員がなる事が多いね。

ただ、今は後継ぎにだけ遺産を残せる時代でも無いからねぇ。

最低限でも人数割の半分の法定遺留分は貰える訳だろう?

だから当主のゴタゴタを避けて遺産だけ貰う方がお得って事で後継ぎを皆で押し付け合う家族も最近は多いらしいんだよ」

碧パパが教えてくれた。


「でも、後継ぎだとその分遺産は多く貰えて偉そうに一族に命令を下せるなら、今日みたいなタイプは目の色を変えてやりたがりそう」

と言うか、後継ぎ以外はやっぱ法定遺留分しか貰えないんだ?


「元々、旧家の財産なんて不動産とかが多いからね。

そう簡単に切り分けも現金化も出来ない遺産が殆どなんだよ。

まあ、やり手な当主が居た家なんかは株や美術品を多く持っているところもあるが、下手に投資したり美術品を集めたりすると大損する事もあるからねぇ。

旧家の体面を保つのにもそれなりにお金が掛かるから、名と家業を継ぐ気が無い子には最低限しか残さない家が多いと聞くね。

で、今日のみたいなバカを当主にすると直ぐに先祖代々からの遺産を使い潰しそうだから、『能力がないから』って言うのを言い訳に、遺産を削るんだ。

本人の資質が本当の問題なんだけど、本人は退魔師の能力が無いせいだと思って子供の能力を覚醒させようとしたり、能力持ちの子を産ませようとしたり、色々と見苦しく動いて迷惑なんだよねぇ」

溜め息を吐きつつ碧パパが説明する。


なるほど、退魔師じゃ無いから遺産が減るんじゃなくって、バカだから出来るだけ遺産を無駄遣いさせない様に削るのか。


「でも、退魔師でもバカな人は居るでしょうに」

魔術の適性と賢さは必ずしもイコールじゃない・・・筈。

魔術師として大成するにはそれなり以上に知性が必要だけど。


「ある程度以上に馬鹿だったら退魔師として挫折する様に師匠役の人間が調整するから。

退魔の術は本来なら悪霊相手の術とは言え、人間相手に使えない訳では無いから退魔師は弟子の性分をしっかり確認して、危険な力を身につけても大丈夫な人間かを見極める責任があるもの」

さらっと怖い事を碧ママが言った。


でもまあ、確かに前世でも性格的に問題がありすぎると学園で見做されたら魔術師になれずに力を封じられたね。

それでも魔術師の数が多かったせいで個人的に教えるケースなんかもあって、歴史に残る様なクソッタレ魔術師もちょくちょく出てきたけど。


現世の日本では一人前になる前の弟子のやらかしに対する賠償責任を師匠役が連帯で負うんだから、やらかせる様な術を教える前に弟子の人格を見極めるのは個人的に切実な問題だよね。


「理性的な人間だったら当主の面倒くささを考えて遺産相続に差があってもしょうがないって納得するだろうけど、ああ言う馬鹿っぽい人は不満を持って訴訟でもおこしそう」

碧が唐揚げのお代わりが入れてある大皿に手を伸ばしながら指摘する。


「相続争いっていうのはちゃんと遺言状とかを準備して文句を言ってくる連中の対策を練っていないから発生するんだ。

バカがいる親は、他の一族に迷惑が掛からないようにかなり早い段階から遺産相続の対策をとっているんだよ?

節税対策じゃ無いけど、遺産相続だって遺産総額が少なくなれば法定遺留分だって少なくなるから、それなりに次の世代へ残す一族の遺産をちゃんと纏めて残せる様になるものさ。

そう言う専門の遺産相続対策用の弁護士が必要だったら退魔協会も紹介してくれるし」

笑いながら碧パパが教えてくれる。


おや。

退魔協会が役に立つことをしてくれるなんて、意外。

でもまあ、退魔師の一族の財産が退魔師じゃ無い人間によって無駄に使い潰されるのは退魔協会にしても避けたいか。


「でもさぁ、退魔師の能力を継がなかったけど当主のお気に入りで財産がっぽり残されるなんてケースもあるんじゃないの?」

翔くんが指摘する。


「そりゃあねぇ。

当主だって人の子だから、『馬鹿な子ほど可愛い』みたいな感じでアホを溺愛しちゃう場合もあるわね〜。

そう言う時は一族の他の人間とか退魔協会の人が色々と頑張って誘導しようとするけど・・・駄目な場合もあるわね。

まあ、そうなっても退魔師としてしっかり働けば十分食べていけるんだから、立派なお屋敷を相続の際に売る羽目になっても、しょうがないわよ。

時々そう言うバカが居ると、昔の良い符とかの見本が売りに出されるから無理な介入は誰もしないの」

碧ママが笑いながら言う。


そうだよねぇ。

アホな旧家の当主が家を傾かせたら、それこそ京都の一等地にある住宅地が売りに出たりするかも知れないし。無理に助けるよりは素知らぬふりをして売りに出された遺産を買い集める方がお得そう。


「まあつまり、人様の家に来てギャアギャア騒ぐ馬鹿は同情せずに無視して良しって事なんだね」

碧が頷きながら言う。


そうだよね、遺産相続とか一族の中での立場とかって話になると白龍さまに能力覚醒の手助けをしてあげてって頼むべきかとかちょっと悩ましく感じるかもだけど・・・退魔師じゃ無いから遺産が貰えないんじゃなくって、人格的に問題があるから排除されているんだと考えると下手に手を出さないのが一番って事だね。



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