魔女っ子香奈ちゃんは・・・難しいよ?
「う〜ん、まあ親は親、自分は自分って事で頑張って生きていこうね!」
霊を還した後に流れた何とも言えない沈黙を振り払う様に明るく碧が香奈さんに話しかけた。
「ですね!
少なくとも私には祖父母が居ますし、経済的には安定している筈ですから」
空元気なのかも知れないが、香奈さんも明るく応じる。
まあねぇ。
同じ孤児でも、愛理ちゃんの方が状況はかなりヤバいもんねぇ。
香奈さんだったら後数年で大学生になって比較的自由に自分の生活に関する選択が出来るようになるし、愛理ちゃんの毒大叔母と違って親身になってくれる(多分)祖父母がいる。
ダブル不倫をする様な娘を育てたって点がちょっと不安だけど。
親の育て方が悪かったのか、それとも本人の気質が悪かったのか、どちらにしてもあまり香奈さんにとって良い情報じゃあない。
ここは過去のことは忘れて、未来に希望を抱いて頑張るしか無いね!
「会社関係の顧問弁護士と、お祖父さん関連で雇った弁護士って言う二つの情報源があればどちらかが変な事を言い出してもセカンドオピニオンを得やすいから自分にとって最適な判断を下しやすいと思うけど、それでも不安がある時は全く別の相談相手として私らを頼ってくれても良いから。
取り敢えず、宗教法人とかNPO法人とかに寄付するのは成人して収入を得る手段が確定するまではどれ程共感しようと待って貰うのが良いと思うよ」
流石に未成年に破産する様な多額の投資や買い物はさせられないだろうが、寄付って匿名でも出来ちゃうから、後から後悔しても取り返すのが大変そうだからねぇ。
「大丈夫です、募金はしっかりお金の使い道を調べさせて貰えない限りは財布に入っている現金以上はしないポリシーなんで。
ちなみに・・・私も退魔師になれますか?
お二人みたいに魔術を使える様に是非なりたいです!」
にっこりと香奈さんが笑いながら言って来た。
財布にある現金しか募金しないなら安心だね。
ついでに募金する際に自分の連絡先を教えなければ更に安心だ。
退魔師に関しては・・・。
「どうなんだろ?
何らかの適性があるか調べる方法って確立されてるの?」
碧を見て尋ねる。
私は前世の記憶を思い出した時点で魔力の使い方も思い出したからねぇ。
こっちでは適性検査の魔道具もないみたいだし、どうなんだろ?
「う〜ん、こう、普通の時でも霊とかを視ることがある人なら適性は確実にあると思うけど、そんな経験ある?」
碧が尋ねる。
え〜?
私だって覚醒前は霊なんぞ見なかったよ?
香奈さんが退魔師を目指すのは推奨できないと思っているのかな?
お金がたっぷりあるなら暇つぶし代わりに魔術の鍛錬するのも悪くは無いと思うけど。
まあ、これでなまじ変な希望を持たせて適性が実は無かったなんて場合、修行だとか先祖から伝わる秘宝だとかで金を毟り取られる危険はあるかな?
「無いですね・・・。
でも、今はお父様が見えましたよ?!」
ちょっとがっかりした様な香奈さんだったが、思い直して父親の霊が見えた事を指摘する。
「いや、あれは凛が召喚の術の一環として見せてただけだから。
現時点で霊視が使えていないとしたら、最初に霊力を認識して動かせる様になるのに三年から五年ぐらいの間、効果があるのかどうかも不明な辛くて地味な修行をする羽目になるの。
それだけ頑張っても霊力を認識出来ない人もいるし。
そして例え霊力が認識出来ても、今度はそれを術とし使える様になるのに更に3年から五年ぐらいかかるから、退魔師の道はあまりお勧め出来ないかなぁ」
碧が厳しい現実を指摘する。
そっかぁ、そんなに掛かるんだ?
術の修行に五年はまだしも、霊力の認識にもそんだけ掛かるとは知らなかった。
前世は魔素が濃厚だったから魔力の覚醒が楽だったのかな?
「そうなんですか・・・」
がっかりした様に香奈さん俯いた。
「でもまあ、一番仕事とか勉強で伸びる若い時期を修行に費やしても構わないぐらいどうしてもやってみたいなら、少なくとも詐欺師じゃ無い退魔師を師匠役として紹介するわ。
『退魔師』なんて普通に外部から探したら詐欺師に行き当たる事が多い業界だし、詐欺じゃなくても思いっきり払えるだけ弟子から礼金とかを毟り取る退魔師もいるからね」
碧が親切そうに付け足す。
そうだねぇ、本物の退魔師でもそれこそサークルの絢小路先輩みたいな半ば詐欺なんじゃと思う様な弟子取りの話が出て来かねない。
その点、碧の親戚や知り合いだったら安心出来るだろう。
退魔師になる正しい攻略ルートを見つけても、道は遠く厳しいみたいだけど。