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相場

『契約書は別にこれで良いけど、日中で5千円、夜で7千円って安過ぎ。

霊視の能力って水道修理の技能よりも遥かにレアだし代替が効かないのに、水漏れ修理の最低呼び出し料金並みっておかしいでしょ。

第一、移動時間とか待ち時間に関してタダなの?

拘束時間は君達がお金を稼げない機会損失を意味するんだよ?』


碧パパに契約書諸々を送って確認をお願いしたところ、電話が掛かってきてダメ出しされまくった。


ちなみに、契約魔術の事は言っていない。

知る必要は無いだろうと碧が言ってくれたので、転生の事は誰にも広めない事にしている。


それはさておき。

報酬に関しては私たちが貰って納得な金額を、他のアルバイトと比較して考えた上で特殊技能だし・・・と言う事でそれをほぼ倍掛けして決めたのが、その際に退魔師としての報酬相場を参考にしなかったのが失敗の原因のようだ。


ただねぇ。

退魔協会の信用に対する上乗せ費用がどれだけか分からないから、正当な霊視の費用も判断が付きにくいんだよなぁ。


絶対に協会はぼったくってると思うし。


「なんかさぁ、霊視とか退魔とかに関する我々の労力や時間から計算する報酬と、依頼する側にとっての霊障問題から生じている費用との差が大き過ぎて、金額計算がほぼ不可能な感じ〜」

会話が終わって電話を切った碧が、溜息を吐きながら言った。


「だよねぇ。

機会損失って言われても家庭教師やファーストフードのバイトだったら時給千円から2千円程度だし。

退魔協会のは件数が限られるからあまり不動産屋とのビジネスと競合しないだろうし。

でもまあ、近所を回るにしてもあまり夜に出歩く仕事は増やさない方がいいか」

そう考えると、夜の霊視を1件7千円にしたのは間違いかな?


「青木さんは1件1万円で全然OKって言っていたから、1件1万円、夜はやっぱ無し、家に迎えにくる約束をした時間から帰ってくるまでの時給を一律1時間あたり3千円。

そんな感じでどうかな?」

碧も夜に関しては考え直したのか、新しい価格体系を提案してきた。


「高過ぎるような気がするけど、そんなとこなのかなぁ。

一応碧パパに確認してくれる〜?」

本決めにして実際にビジネスを始めちゃう前に突っ込みを食らって良かったけど、やはり最初の出だしが甘々だったと指摘されるとちょっと凹む。

でも、教えてくれるうちが華とも言うしね。


しっかし。

ビジネスを営むとなると、値付けまでも自分でしなければならないんだねぇ。

黒魔導師時代は一応名目上は公務員で年俸制だったから、魔術の市場価値なんて知る必要が無かった。

これでは安眠符や肩凝り解消グッズにしても、碧の実家で売るお守りは良いとしてもグッズ販売では値付けが問題になりそうだ。

相場のチェックをして妥当な製品・サービス価格をアドバイスしてくれる業者って居ないのかなぁ?


ネットで調べた値段なんてピンキリだし、詐欺とか偽物とかぼったくりとかも混ざっているからイマイチ信用するのが躊躇われる。

かと言って退魔協会が競合するビジネスの相場をまともに教えてくれるとも思えない。

殿様稼業をしている退魔協会が正当な相場を知っているかも不明だし。


退魔師の業界団体の筈なんだから、退魔師にとって必要のあるサービスを提供してくれればいいのに。

協会自体が収益団体になっちゃってるせいで、『退魔師』ではなく『協会』の権益を守ろうとする意識が働いてしまって、はっきり言って使えない存在に成り果ててる。

困ったもんだ。


「またダメ出し食らったら切ないけど、やっぱ正式スタート前にチェックは必要だよねぇ」

私のお願いを聞いてタブレットを取り出した碧が入力し始める。


「あ、ついでに退魔師のサービスとか、魔道具や符の相場を教えてくれるか調べてくれる業者や団体がいないか、聞いてみてくれない?

退魔協会じゃなくって、本当に退魔師の為の互助団体があるならそれも知りたい」


正式に組織として存在していたら退魔協会に敵視されて嫌がらせを受けまくっている可能性が高いから、非公式なNPOもどきな集団でいいんだけど。


「う〜ん。

ウチは氏子へのサービスの一環みたいな感じでローカルに活動していたから、妥当な値段なんて考え方が無かったんだよねぇ。

交通網が整備された高度成長期ぐらいから退魔協会に遠方の案件も依頼されるようになったんだけど、基本的に遠方に出ると色々支障が出るって言って出来るだけ断ってきたからあまり全国規模では顔は広く無いって話らしいけど・・・まあ、聞いてみる」

碧が唸りながら更にタブレットに書き込む。


そうか。

古くから続く旧家と言っても、鉄道網や高速道路が整備されるまでは遠方で問題があっても呼び出されるなんて事はほぼ無かったのだろう。


それこそ元寇の時に白龍さまの愛し子がいたなら、鎌倉幕府のお偉いさんが泣きついて九州まで行ってもらった可能性はあるかもだけど。

まあ、その時代だったらもっと九州近くにも力のある氏神様がいたかも?


会社設立とか退魔協会での登録・研修とかでバタバタしていて、氏神様や幻獣とかが日本から姿を消したタイミングについてまだ白龍さまから聞けてないんだよねぇ。


白龍さまは基本的に碧が声を掛けるといつでもどこでも現れるんだけど、必ずしもいつも見える姿で彷徨いている訳でもないから、話しかけるタイミングが中々難しいのだ。


それはさておき。

才能持ちが立ち上げた、才能持ちの為のNPOでもないかなぁ。



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