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確認作業

「天蓋付きのベッドって初めてみた」

迎えにきたハイヤーで連れて来られた豪邸で案内された部屋を見て、思わずと言った感じに碧が呟いた。


前世のような王族などが巨大な部屋で寝る場合は保温機能の向上とか、召使の動きが気にならないようにとか、天井から虫や埃が落ちてくるのを防ぐと言った用途があった天蓋付きベッドだったが、気密性が高い上に召使が部屋で待機なんぞしない日本じゃあ必要ないよねぇ。


とは言え、これだけ部屋が大きければ場違いには見えない。

実用性はないだろうけど。

まあ、今回みたいに看護師が必要になる場合なんかは部屋の中で待機されても気にならなくて良いのかも?


そんな使い道が活きるなんて、本人も親も想像していなかっただろうけど。


前世では時々暗殺者を釣る囮を隠す幕としても活躍したなぁ、そう言えば。

部屋に入ってすぐにベッドにいる人間に違和感を抱かれると暗殺者に逃走されてしまう事もあるのだが、薄い布でカバーされた空間の中で寝ていたり女性(男性の場合もあったな・・・)と戯れていたりする場合は中の人間がターゲットか否かの判断が付きにくく、暗殺者はどうしても天蓋のカバーを動かせる位置まで部屋の中へ進む必要があり、そうなればほぼ確実に待ち受けている兵も捕獲に成功出来たんだよねぇ。


それはさておき。

「普通の日本の家じゃあ下手したら天井や照明に突っ掛かるだろうからねぇ。

豪邸じゃ無いと設置自体出来ないよね」

そう言えば以前暑い最中に調べたシーリングファンも、天井の高さがある程度以上ないと視界に入って目障りらしいから設置できるマンションも限られていると書いてあった。


どちらにせよ、猫って殆ど汗をかかないからファンの気化熱で暑さを紛らわすのではダメらしいから、暑い時はクーラーをつけないと源之助が熱中症になるかもって事でシーリングファンが使える物件探しは流れたけど。


執事だと言う男性が看護師の人に声を掛けて部屋から出ていくよう指示し、ベッドのカーテンを横の柱に固定して中に声を掛ける。

「お嬢様?」


おお〜。

こう言う豪邸だと未婚の娘は『お嬢様』なのかな?

それとも本人の希望?


とは言え、高熱で朦朧としているのかベッドの住民から返事はなし。

熱で意識が無いって流石にヤバくね?

それとも気絶状態なのかな?

でも高熱で気絶って言うのも危なそうだよね。


取り敢えず、点滴を打つよう指示した碧は正しかったようだ。

何だってこの状態で退院したのか意味不明だが。

最初から派遣の看護師か医者を手配してあって、家でゆっくり静かに休ませてあげたいって事だったのかね?


「集中する必要があるので、部屋を出て私達だけにして下さい」

碧がそっと執事に告げる。

こう言う場合って退魔師が男だったらどうするんだろ?

病院のベッドならまだしも、私室で意識が無い若い女性を男性と二人きりにするのって家族的にはかなりNGな感じになりそう。


ウチらは女だから関係ないけど。

そう思うと、呪詛祓いって被害者が女性だったら退魔師も女性の方が好まれそう。

まあ、贅沢を言えるほど退魔師人口が多くないから難しいかもだが。


雇用主から退魔師の指示に従うよう言われていたのか、執事は何も言わずに頭を下げて部屋を出て行った。

なんか、呪詛を受けるような家って基本的に家の主人を見かけないよねぇ。

やはり恨みを買うような人種なのかな?

それとも退魔師なんて言う怪しい職業の人間に会いたくないのか。

呪詛返しに高額を払って雇っている時点で詐欺師じゃ無いと分かっている筈なんだけどねぇ。

これが高名な医者とかだったら家の主人が迎え出そうな気がするのは被害妄想かね?


とは言え変な人に私や碧が退魔師だと知られない方が良いので、こちらを下に見て出て来ないのは実のところ有難いんだけどね。


そんな事を考えつつ、そっとベッドに寝ている女性の肩に触れて状態を確認する。

呪詛だとは退魔協会の調査員が確認しているけど、呪詛返しはやったらキャンセルとかは出来ないからね。

しっかり情報を全て確認してから最終ステップへいくべきだろう。


呪いのターゲット、呪詛を放った人間、呪いの目的。

どれも祓うのに必須な情報では無いけど、いつも一通り確認出来る事は確認する事にしている。

前世では・・・呪われる方が自業自得なケースが多かったからね〜。


そう言う時は呪詛返しの効果を無理やり魔力で削って、相手がギリギリ逃げられるようにした事もあった。

それこそ、両足の対価の代わりに腕一本にすれば、物理的に戦う能力は損なわれるがそれなりに動いて身を守ることも出来るからね。


いつの日か、そう言うギリギリ生き残った人間がクソッタレな王族の排除に成功してくれる事を期待して密かに頑張っていたのだ。


現世ではそこまで頑張る必要は無いだろうけど、まあ半分は癖だ。

残りの半分は、やはり自業自得なケースだったら返された方のダメージを最小限に減らしてあげたいなって思いもあるし。


前世程の貴族と平民間の圧倒的な権利の差は無いが、現代日本だって必ずしも正義が勝つわけじゃあないからね。


それこそ虐められていた子が報復として呪詛という手段を取ったのだったら、ある程度は理解できるし。

これだけの豪邸に住んでいるのだ。

どれだけ虐められていると声を上げても、学校も社会も見て見ぬ振りをした可能性は高い。


そんな事を考えながら呪詛を深く調べたのだが・・・。

あれ??



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