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呪詛と治療

「呪詛返しですか」

お守りを作る傍ら、片っ端から魔法陣を調べて自分で単語集を作ろうとデータベース化していたら、退魔協会から電話があった。

依頼らしい。


『ええ。

とある事業家の娘さんが呪詛を掛けられたらしく、原因不明な高熱を出して寝込んでいます。

協会の方に原因調査の依頼が来たので調べた結果、呪詛だと分かったので呪詛返しの依頼が来ました』


ふうん。

原因不明な高熱で寝込んだら、病院に入院させると思うけど退魔協会に調査依頼するって事は恨まれる心当たりでもある家なのかね?


悪霊に憑かれたかもと思った可能性もあるが・・・変な悪夢に魘されるとかじゃ無くって高熱で退魔協会に行くのってちょっと意外だ。


まあ、最近なら体の不調の原因が呪詛や穢れの事もあるって病院に言われた可能性もあるけど、病院ってそういう事は認め無さそうな印象なんだよねぇ。


「高熱ということは病院にでも入院中ですか?

それとも家で寝込んでいるんでしょうか?」

碧が尋ねる。


『今は家の方です。

それなりに消耗が激しいらしいので、依頼を受けて頂けるなら明日にでもお願い出来ますか?』


高熱で汗を大量にかいているなら脱水症状とかになりかねないし、急いだ方が良いだろうが・・・だったら入院させて点滴でも打っておけば良いのに。

悪霊なり呪詛なりで死ぬのってそれなりに時間が掛かるが、普通に人体が死なないように点滴を打ったり電気ショックで一旦停止した心臓を再起動させたりしたら死ぬのが遅れる事もあるんだから、呪詛だと分かっても命に関わるような危険なタイプの呪いだったら家に戻らない方が無難だ。


近代医療を信じすぎて呪詛や悪霊を信じないのは困るが、呪詛を信じるからって近代医療が全然役に立たないと思い違いされてもねぇ。


「分かりました。

ちなみに呪詛は単に返すだけで、追跡する必要は無いんですね?」


考えてみたら呪詛祓いじゃ無くって返しって言う事は呪詛をかけた本人に確実に返せって事だよね?

だったら追跡しないと難しく無い?


『これだけキツい呪詛だったら返せば確実に倒れるか死ぬだろうとの事で、追跡は不要だそうです』

なんかこう、ますます恨まれる心当たりがありそうな対応だね。


「・・・分かりました。

どこへ行けば良いんですか?」

家まで迎えに来てもらうと信用できない盗聴でもされてそうな車内での時間が無駄に増えるので、私たちは基本的に依頼主の家に都合が良い駅まで行く事にしている。

退魔協会も分かっているので、あっさり駅の名前と時間を伝えてきた。


「ちなみに高熱が出ていても家にいるなら、点滴でも打たせるように訪問看護師か医者を手配して貰っておいて下さい。

脱水症状で体力が落ちていると呪詛の進行が早まるかも知れないので」

碧が職員の方へ伝えて電話を切った。


「考えてみたら、心臓停止した後に蘇生された場合でも呪詛って残るのかな?

なんかこう、呪詛が完了した事になって返さなくても消えたりしないの?」

ふと、気になって聞いてみた。


白魔術師が治療に呼ばれた場合だったら基本的に呪詛に気がついて祓っちゃうから、呪詛で死んだ後に蘇生ってあり得なくて前世ではそう言うケースってないんだよね。

それに電気ショックで一度止まった心臓を再起動させて蘇生させる様な治療って前世では無かったし。


前世の白魔術師って凄腕だったけど、心臓が止まったのを無理やり再起動させて治療する様な手法は知られて無かったと思う。


「あ〜、どうだろ?

退魔協会に話が来るのって死ぬ前だからねぇ。

呪詛で病死する事ってそんなに無いし、死んだ後に蘇生に成功した場合に呪詛が完了して消えたから体調が良くなるなんて話も聞いたことがないね。

でも心臓が止まるぐらい悪化するまで放置されるってことは呪詛だって気付かなかったんだろうから、蘇生した事で呪詛が消えて体調不良が治っても、単に病院の手当が良かったからって事になって終わるのかも?」

碧がちょっと首を傾げながら言った。


そっか。

原因不明な理由で死に掛けて、心臓停止した後に蘇生に成功して治ったら『腕の良いお医者様に診てもらえて幸運だった』で終わりになるのか。

病院側はそれこそ回復師が居るような大病院だったら呪詛が原因だったのかって思い至るかもだけど、自分らの治療のおかげで治ったのではなく、運良く呪詛が完了したからですよとは言わないだろうから、情報は退魔協会側にも伝わらなそう。


それこそ病院側に呪詛関連のデータベースみたいなのが無い限り、一度止まった心臓の蘇生と呪詛の関係に関しては不明なままだね。


「考えてみたら、回復師で病院に雇われている人たちって呪詛返しとかも出来るの?

できるんだったら原因不明な熱病とかってそういう回復師に一度診させれば良いと思うけど」

白魔術師ならそれなりに呪詛に対して特効があるんだから、呪詛返しの転嫁は見抜けないにしても、祓うだけなら出来るだろう。


「呪詛祓い系は病院じゃ無くって退魔協会の管轄ってことで色々と煩いらしいよ。

呪詛だって言わずに勝手に祓っちゃえばバレないけど、その分のお祓い料金は請求できないから病院側も言われない限り何もしないらしいね」

碧が肩を竦めながら言った。


命を救う筈の組織が、何とも冷たい対応だね。

まあ、命を救うのを至高に考えていたら、回復師の治療行為に制限を掛けるような事を最初からしないか。


世知辛いねぇ。



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