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馬鹿につける薬はないよね

回復と水系が多いと言うだけあって藤山家が代々開発してきた符はそっちのが多かったが、幾つか風のもあった。


一応水のも確認しようかと思ったが、線状降水帯対策とかだったら水系の術で大量の氾濫した水を退けるよりも風系の術で雲を押しやる方がまだ現実的だろうと思って風のを重点的に吟味。


ちなみに符には文言のと紋様のとあった。文言のを最近見つけた草書体を解読するアプリを使ってみたら一部読めたが、かなり詩的な言い回しな自然への呼び掛けっぽいものが多かった。


やっぱ自然の精霊に呼び掛けて頼み事をするのには詩っぽいのがいいのか、それとも昔の人はちょっとドリーマーな感性の人が多かったのか。

この世界の魔素の薄さだったら、符を使って術を放つ時に精霊に助けて貰ってなんていないと思うんだけど、自己暗示的に自然の力の塊である精霊が助ける事で風が吹いたり水が動いたりするって想像すると魔力の行使が上手くいったのかな?


紋様の方はやはり魔法陣に近い。

幾つかは読める単語があるが、知らない部分の方が多い。

魔法陣の精度が低いのか、それとも単に黒魔術系と使う言葉が違い過ぎるのか。


「う〜ん、系列が違う魔法陣は再充填はまだしも最初に作成する際の魔力は適性持ちじゃ無いとダメだからなぁ。

試作品すら作れないとなると研究も厳しいね」

それに魔石の入手方法が実質皆無だから、魔道具を作ってもあまり実用性が無いんだよね〜。


物理的に効果を及ぼす元素系の魔道具カードは、聖域の雑草程度じゃあ扇風機程度でもあっという間に魔力が尽きそうだ。

適性が違う魔力で再充填は出来るとは言っても、イマイチ効率が悪いらしいし。


それこそ白龍さまの爪とか牙を使えばそれなりに強力な魔道具が作れるだろうが、一緒に実験する人間が居ないと難しい。

つうか、一緒に実験する人間が居なきゃ試作品すら作れないし。


それに盆地一帯の雲を海へ押し出すくらいの風を起こそうと思ったら、かなり強力なのが必要だろうなぁ。

前世では一流の王宮魔術師なら竜巻を生成して敵軍に突っ込ませる位のことも出来たが、魔力ポーションが無ければ一回やったら2日ぐらい寝込んでいた。

ポーションありでも1日1回程度だったし。


竜巻って局地的には強力な現象だけど、面的に雲を動かすエネルギーと比べてどんな感じなんだろ?

一流どころの術師の能力が前世と今世で同じ程度なのかも不明だしね。

筋肉と同じで、術師の魔力量や術の精度は訓練によって磨かれる。


戦争で術を使う想定がなく、訓練した後に手っ取り早く魔力を戻す魔力ポーションもないこっちでは、術師の生まれつきな才能そのものが同じでも到達点は大分と手前で止まっていそうだ。


それに魔素も精霊も乏しいこっちの世界では術に共鳴する存在がない事で自然系の術の効果が下がってそうな気もするし。


そう考えると、自然の猛威に何らかの方法で退魔師が抗うのは難しいか。


「なして急にそんな研究をしようと思ったの?」

ソファに寝転がってそっと源之助の肉球を擽っていた碧が聞いてきた。


「いやぁ、こないだの神隠しの件でさあ、見えもしない境界門を見つけ出す無駄なエネルギーがあるなら、もっと役に立つ方向に魔術を使えるように研究すれば良いのに〜と思って。

最近は温暖化のせいで天候がヤバい感じじゃん?

線状降水帯とか旱魃による水不足とかとかいった異常気象を魔術で何か出来ないかなって。

出来るなら、それこそこないだの魔法陣解読プログラムを使って研究でもさせれば良いのにと思ってさ」

アホどもを唆す前に自分で方向性だけでも確認できないかなぁと思ったが、やはり元素系の適性能力がないと厳しい。


「でもさあ、異世界だ、チートだなんて喜ぶ馬鹿だよ?

水害が起きた時に助けに駆けつけるよりも先に、実験とか言って竜巻を起こして大規模な損害を起こしそうじゃない?」

碧がアホどもの熱意を建設的に使おうと言うアイディアの問題点を指摘した。


「・・・確かに、必要な魔力とか適性以前に、研究して得た知識を人の役に立つように使うか微妙だね」

馬鹿につける薬はないって言うのはいつの世でも真実だしねぇ。


それに日本だったら雨雲を海に押し出すとか、ちょっと海から雨雲を呼び寄せる程度で水問題は大体解決するし国内問題だから県の間で問題があっても折衝は可能だろうが、もしもこんな技術が可能だと判明して、国外に流れたら・・・。


大陸では大河が幾つもの国を流れて複数の国の水源になっているのに、上流の国がダムを建設して水を堰き止めて水力発電や灌漑に使っちゃったり、反対に雨が多い時にダムから放水して下流で氾濫を起こしたりで、今ですら問題が起きているらしいからねぇ。


狙った場所で雨を降らせられる、もしくは邪魔な雨雲を押し除けられるなんて事になったらマジで魔術を使った戦争もどきな争いになりかねないか。


うむ。

魔術の技術の飛躍的躍進は迂闊に齎そうとすべきじゃあないね。



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