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転生しても、現代社会じゃ魔法は要らない子?!  作者: 極楽とんぼ
大学2年

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夏の夕立はいい

「うひゃひゃひゃぁ〜。

ダメ〜、退いて〜!」

作業室でお守りを作っていたら突然リビングの方から碧の笑い声が流れてきた。


背中を後ろに反らして覗いてみると、床で腕立て伏せをしていた碧が変な姿勢で膝をついて四つん這いになって笑っている。


「・・・どうしたの?」


「腕立て伏せしてたら、源之助がシャツの中に入っちゃって」

碧が笑いながら答える。


ふうん?


見に行ったら、ちょっとブカブカな丈の長いTシャツの首の方から源之助の耳が見える。

どうやら腕立て伏せに合わせてヒラヒラと揺れるシャツの隙間が気になって入ってみたらしい。

しかも今度は首の方から出ようとしているのか、碧が笑いながら首元に割り込もうとしている源之助の頭を押し戻している。


「にゃははは。

そう言えば、ズボッとしたセーターでも似た様な事やってなかった?」

冬に膝突き腕立て伏せをしていた時も似た様な光景を見た気がするぞ。


「そうねぇ。

ブカブカな服は腕立て伏せにはダメみたい。

源之助、いい加減出て頂戴〜。

あ、でもそっちじゃなくって下の方で!

首が伸びちゃ困るのよ〜!」

碧が一生懸命源之助を押し戻しながら説得する。


本気で押してないな?

まあ、胸元に入ってくる猫って可愛いけどさぁ。


「そう言えば、お盆はどうする?

聖域の草を色々と使わせて貰っているし、碧の実家の方で何か手伝いが必要なら手を貸すけど?」


お守りは二人の事務所売上に貢献するから良いとして、ポーションは基本的にスキンケア用に使っているからねぇ。

亜空間収納に入れておかないと数日程度しか保たないし、下手に広めない方が良いって事で碧ママにすら提供していないから、完全に私物化してる。


「別に誰も使っていないヨモギを抜いて使ったところで恩を感じる必要はないよ〜。

実家の方は・・・特にそれ程大変じゃ無いから良いよ。

つうか、お盆が終わった後に休める様にちょっと時期をずらして行く方が道も空いているしあっちもリフレッシュ出来るしでwin-winな状況だと思う」

源之助を無事押し出した碧が応じた。


ふむ。

ウチの実家も特にお盆に何かする訳でもないしなぁ。

そんじゃあまあ、暫く家でのんびりお守り作りを続けるか。


「そう言えばさ、凛の前世の魔術師だったら雨乞いとかって出来たの?

実家の辺も真夏になると暑いんだよねぇ。

ざっと夕立でも降ればぐっと気温が下がる感じで夜を過ごしやすくなるんだけど。

父親や弟に何とかさせられないかな?」

腕立て伏せを終えてソファに身を投げ出しながら碧が言う。


「あ〜。

それなりに力があれば諏訪湖の水を使って上空の水滴を増やして雨にするのは可能かもだけど、この魔素が薄い世界でやったら一回降らせるだけで二週間ぐらい寝込むことになるんじゃないかなぁ?

諦めてエアコン使う方が良いと思う。

と言うか、あの蔵にあったエアコンもどきな湿度と温度管理の術を家に使えないの?」

どかっと攻撃魔法を敵に向かって放つのはそれなりに体調さえ整っていれば連日出来るらしいが、広範囲に穏やかな雨を降らすといった自然現象的な魔術というのは意外と大変だと前世では聞いた。


海から津波を陸地に叩きつける方が、旱魃時に雨を降らすよりずっと楽なのだと雨乞いを命じられた王宮魔術師がげっそりしながら愚痴っていた。

魔素が豊かな上に魔石でそれなりに術の補助が出来る前世ですら雨乞いは数日の準備と事後のリカバリー休暇が必要なぐらいに大変な術だったのだ。


魔素が薄く、魔石も無いこちらの世界だったら数人がかりで力を合わせても暫く寝込む様な術だろう。


とは言え、旱魃とそれからくる凶作は下手をしたら政権転覆の原因になりかね無い事象だから、昔の術師にとっては雨乞いも重要な役割だっただろうし術そのものは存在しても不思議はない。


今では雨乞いなんぞ上手くいく訳がない迷信と信じられているので、実際に成功させられるだけの技術と魔力を持つ術師が存在した時期は滅多に無かったのだろうが。

現代だって雨不足でダムの水が減ったから取水制限!なんて言うニュースが報道される事があるのだ。

取水制限なんて下手したら工場の稼働に差し支えるだろう。何人かの退魔師を雇えば雨乞いで雨を降らせられるなら、地元企業が退魔協会に共同依頼を出しても良さそうなものだが・・・術自体が失われているのかね?


以前と違って今だったら全国から退魔師を呼び寄せられるんだから、出力はなんとかカバー出来そうなものだが。


それはさておき。


「あれねぇ。

今の実家を建てた時に何とかコピー出来ないか頑張ったらしいけど、かなり霊力の消費効率が劣るバージョンしか出来なかったらしいんだよねぇ。

それに夕立でスッキリ涼しくして欲しいのは外だし。

聖域もそれなりに暑いんだよね」

碧が溜め息を吐きながら言った。


「そっか、残念〜。

でも元素系の術は詳しい事は知らないから無理だなぁ。

まだ白龍さまに教えてもらう方が現実的じゃない?」

龍の術を人間が再現出来るかは微妙だが。


「だね。

諦めて帰ってから水シャワーでも浴びるかぁ」

魔力って破壊行動にはかなり威力があるのだが、意外と日常生活には使えないんだよねぇ。




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