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異世界交流?

『あ、閉まった』

行方不明になった男女両方に関して碧が出来る事は取り敢えず終わったので、帰路についた。

ちょっと好奇心もあったしこれから何を要求されるかも気になったので隠密型のクルミを退魔協会の職員に付けておいたのだが、意外にも電車を降りてマンションへ歩いている最中にクルミから知らせが入った。


「はぁ?」

意外な言葉に思わず声が溢れる。


『境界門が閉まったにゃ。

大騒ぎになってるにゃ』

クルミが再度報告を繰り返してくれた。


「境界門が閉じたんだって。

あの女性を連れ帰った後で良かったね」

碧に知らせを伝える。


まあ、境界門が開いていようがいまいが、通常の迷い込んだ人間にとっては帰れない事に変わりはないから、大した違いは無いっちゃあ無いが。


『ああ、あれが開いていても色々と面倒なだけじゃろう。

さっさと魔素が尽きて閉じるようにガッツリ削っておいたからの。

上手くいって良かった』

白龍さまのあっさりとした念話が聞こえてきた。


「「はぁぁ??!」」

私と碧の叫び声が重なり、側を歩いていた男性が驚いて飛び上がっていた。

悪い事をした


「え??

何??

・・・あぁ、もう家だから中で話そう」

碧があたふたと意味もなく手を振りながら何か言おうとしたが、マンションの入り口が目に入って言葉を切る。


確かに外でするような話じゃないね。


そそくさと階段を急ぎ足で登って部屋の中に入り、荷物を置いて手を洗ってリビングに集まる。

碧が源之助を抱き上げながら白龍さまの方を向いた。

「で、削るって何をしたんですか?」


『昔ならまだしも、科学の時代の今に人間が生きて帰って来れる境界門なんぞがあったら色々と面倒じゃろうが。

我も何度も実験やらなんやらの為に行き来を請われるのはごめんだし、この国にとっても変な注目を世界から集める事が良い結果になるとも思えんからの。

さっさと境界門が自己崩壊するように、通った際に門が含有していた魔素を削っておいたんじゃ』

白龍さまが返した。


まあ、確かに今の時代に境界門なんぞあったら色々と実験をして、異世界へ進出できるかとか貿易が出来るかとか、新しい事を試そうとするのが人間だよねぇ。


だが。

「現存する境界門は白龍さまの聖域以外にもあるんですよね?

どれも全部、人間が生きて通れない世界に繋がっているんですか?」


この世界は魔素が薄いから放っておくと境界門が閉じてしまうと以前聞いた気がするが、白龍さまのような力があって変わり者な幻獣などが保持している境界門はいくつかある筈。


『元々、我らのような存在が手間をかけて保持している境界門は幻想界の様な魔素が豊富で時折戻って魔力を充填するのに使える世界に繋がっている。

そうでなければ自らの魔素を使って残しておく意味が無いからの。

だからどれも人間が通ったら数分で狂い死んでしまう様な世界じゃ』


おやま。

まあ、それじゃあ取引しようとか進出しようとかって話にはならないよね。


「でも、今回みたいなランダムに開いてそこまで魔素が濃く無い世界へ繋がった境界門ってそれなりにあるのでは?」

碧が首を傾げて尋ねた。


『人間が自由に行き来できるような境界門は同じ魔素の濃度との世界とつながった門のみ。

そうなるとこの世界の場合だと、繋がる先は実質何の命も残らぬ砂漠の地が殆どじゃろ。

そうでなくても精霊の力の薄い、自然が過酷な世界になるから人間がいる可能性は低い。

人間がちゃんと問題なく生活できるような世界へ繋がる境界門は、向こうからこちらへ落ちてくるのはまだしもこちらから通るのは我らの様な存在の助けが必要になるからの。

だからあったとしても出入りは自由には出来んじゃろ。

どこかの国で物好きな幻獣か神族に助けてもらいつつ異世界とやり取りをしている境界門がある可能性はゼロではないが』


砂漠の世界でも鉄とか金とかレアアースみたいな資源はあるかもだが、過酷な環境だったら採掘が大変だし、採掘用の機械を持ち込むのも動かすのも無理かもだ。採掘が手作業となったら利用は問題外か。


「確かに白龍さまのような方が他に居たとしても、一回の人助けならまだしも継続的な異世界交流のような事業に毎回協力させられるのは嫌がりそうですね」

碧が頷く。


だよねぇ。

しかも視察団を送り込むだけならまだしも、それで現地人と出会って取引の合意がどうにか出来たとしても取引自体をする度に毎回白龍さまに手伝って貰わなきゃならないなんて、面倒すぎるだろう。


他の幻獣や氏神さまが居たとしても、確かにそれを考えると面倒を嫌がって境界門を壊すよね〜。


「なんか、境界門の力の向きがちょうど魔素の差を打ち消して人が自由に出入りするのに良いぐらいな偶然の一致があったら、ダンジョン発見〜!!みたいな感じで嬉々として飛び込んでいく馬鹿が大量発生しそう」

異世界なんぞそれ程良い場所じゃ無いし、菌や現地の危険生物(人間を含む)からの攻撃を考えると迂闊に近づくべきじゃ無いと思うけど、勝手に夢を見て飛び込む馬鹿が実はそれなりに存在するって分かったからねぇ。


そんな境界門は今後も発見されない事を期待しておこう。



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