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夢のない話は売れない

「神隠しが『境界門を通って行った』と言うのは推測していたのに、本人的には入る前に察知出来ると思っていて、私とハイキングしたついでに探して、見つけたら後で万全に準備してこっそり来るつもりだったそうです。

一応の為にちょっとした携帯食と浄水器を持っていましたが、本番用にテントや鉈、調味料やライター等々を色々と家に準備してあったと言っていました」

退魔協会の職員に差し出されたレトルト(多分)のお粥をゆっくりと食べながら女性がさらに彰人とやらのプランについて説明してくれた。


なるほど、流石に何も言わずに恋人を境界門経由で異世界に問答無用で連れていくつもりは無かったのか。


とは言ってもねぇ。

今まで消えた人が全員意図的に境界門へ飛び込んだと考えにくい事を鑑みると、手遅れになるまで境界門の存在に気付けない可能性を考えつくべきだったでしょうに。


多少なりとも才能と言うか霊感と言うかがあれば境界門の近辺に違和感を感じるって話なんだけど、二人にそれが全くなかったのか、会話なり景色なりに気を取られていて違和感を見逃したのか。

どちらにしても、不幸だったね。


「神隠しが境界門だと言う情報を完全に一般人から隠蔽するか、隠蔽出来ないなら霊感が無い人間には入ってしまうまで境界門は認識出来ないし、通ったら帰って来れず、しかも異世界の食材は地球の人間にとって毒な可能性が高いって知らしめる方が良いかもですねぇ」

碧が溜め息を吐きながら言った。


「転移物のラノベが現実だと期待して変な事をする若者が最近増えてきて困っているんですよねぇ。

どれだけ現実の情報を隠蔽しようと、フィクションの妄想までは消し去れませんから」

退魔協会の職員が深く溜め息を吐いた。


確かに。

今回のはマジで妄想が暴走した案件だよね。

アホな本人が死ぬだけならまだ良いけど、巻き込まれた周囲には迷惑すぎる。


「霊感があったとしても異世界に行ったからって突然魔術が使えるようになる訳じゃあないだろうし、境界門を通ったら現地の言語が身につく訳も無いだろうから、痛い目にみるに決まってるでしょうに。

そこら辺の痛い現実を腕の良い作家なり映画監督なりを雇ってフィクションや映画で広められないんですかね?」

まあ、無理だろうけど。


「そんな夢のない話、流行る訳がないですよ〜」

職員が悲しげに言う。


まあ、そんな夢の無い話を見れる作品に創り上げられる様な腕の良い作家なり映画監督なりを雇う金を誰が出すかも微妙だしね。

しかも下手に腕の良いのを雇ってそれなりに売れちゃったら、今度はもっと夢があるハッピーエンド版の二次創作とかが流行りかねないか。


「海外ではこんな問題って無いんですか?」

大陸の某専横国家とかだったらネットの情報管理を力技で強引に色々とやっているし、情報隠蔽に成功しているのかな?


「他の国は犯罪者や国による行方不明者が多すぎるせいで、神隠しと言う超常的な力が絡む現象が認知されていないんですよ」

職員があっさり教えてくれた。


マジか。

そう言えば、こないだも大陸の某専横国家の億万長者でビッグな事業家が、突然誰とも連絡が付かなくなってその会社の株価が暴落したってニュースに出てたな。

他の会社の株価まで連動して下落し始めたら何やら政府の調査に協力しているってSNSに発表されたとか言う怪しげな話だったけど・・・そうか、あの国では情報管理が強硬すぎて神隠しも政府による拉致(逮捕)も違いが分からないのか。


「まあ、『境界門』なんて言葉自体は退魔師の業界に関連する人間しか知らない筈なんですから、退魔協会に関係する誰かが情報漏洩したんでしょう。

情報漏洩するなら、霊感なしだと境界門を感知できないから気付かぬままに突っ込んで向こうで餓死する可能性が高いって事実も伝えるよう、業界関係者一同に通達でもしたらどうです?

あと、彰人氏に境界門の事を教えた人物を見つけ出して痛い目に合わせて見せしめにするとか」

碧が提案した。


まあねぇ。

それこそ彰人とやらの祖父から訴えられるとか、非公式な方法で報復されるとかで口が軽かった事に対する因果応報みたいのを広げたら・・・少しは退魔師から話が漏れなくなるかも?


とは言え、退魔師も神隠しも迷信扱いな現代社会じゃあ余計な事を言った人へ合法的に制裁を科すのは難しいだろうからなぁ。出来ることは限られてそう。



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