見つけたらでかい!・・・かも?
「そう言えば、この里山に慰霊碑とか化け物の伝説とかってあるんですか?」
昼食を食べ終わり、食休みしている間に猟友会の爺さん(赤木さんと言うらしい)に聞いてみた。
退魔協会が当然それを先に調べて、何かそれっぽい情報があったら伝えてくれる筈だから何も言われていないって事は何も無いんだとは思うけど。
「慰霊碑は無いが・・・北条の隠し財宝の伝説があるな。
若い頃はそれを求めて村の者と防空壕やその他諸々の洞窟や穴に潜り込んで探したもんだ」
赤木さんが思いがけない話を教えてくれた。
「え??
ここら辺に防空壕があるんですか??
里山ですよね??」
ここって人がそれなりに出入りする浅い山林地域って奴なんじゃ無いの??
「山の奥深くに防空壕があってもいざ空襲があった時に逃げ込めないだろうが。
ここの西の方に集落があって疎開した人も来ていたから、この近辺の洞窟を補強したり広げたりして幾つか防空壕があったんだ。
子供が遊びに入っている間に崩れたら危ないと言う事で、中途半端な位置にある穴は戦後数十年の間に殆ど封鎖されたが」
取り合えずウチらが歩いた範囲に洞窟とか穴は無かったが・・・もしかして、防空壕を封鎖した跡とかあったのかな?
「ちなみに北条の隠し財産って鎌倉幕府の執権の方ですか、それとも小田原城の北条氏?」
蓮クンが興味津々に尋ねた。
あれ?
そう言えば、どっちも北条って名前だけど、多分違う家系だよね??
武士の政権交代時なんて敗者は皆殺しだよね?
平氏の落ち武者狩りとかってよく聞くし。
織田信長の子孫(一応)が生きているんだから、生き残るケースも少しはあるにしても流石に政権を実質担っていた北条氏が生き残って関東の覇者になり掛けていたとは思えない。
昔の人ってなんか適当に名前を変えたりしていたみたいだから誰かが執権だった北条氏の名前を勝手に借りたんだろうと思うけど、考えてみたら足利氏が敵対して駆逐したであろう前政権トップの名前を名乗るってよくそれで幕府に怒られなかったもんだよね。
イマイチ室町幕府成立時のドタバタって覚えていないんだけど。
確か、元寇で経済がボロボロになって立ち行かなくなったんだよね?
まあ、考えてみたら権力者だったらあちこちに政略結婚して『血の繋がりが多少なりともある』程度の人間だったら大量にいただろうし、どうも昔って血が繋がってなくても先祖を敬えば(?)赤の他人が名を継ぐのもOKだったっぽい話も小説には出てくるから、どうなのか知らんけど。
「流石に鎌倉執権の北条氏の財宝はここら辺には無いと思うぞ?
もっとも小田原の北条氏の隠し財産も見つかった事はないが・・・ここら辺には北条早雲氏の屋敷があったと言う伝説が残っていてな。
それが元で隠し財宝なんて話になるんだが。屋敷跡すらどこにあるのか分からんのに、宝が見つかる可能性は限りなく低い・・・が、まあガキってのは宝探しが好きな生き物だからな」
赤木さんが蓮クンに答える。
「ちなみにそう言う洞窟や防空壕は今回は既に調べてあるんですか?」
洞窟とかって行方不明者が出たら真っ先に調べる場所だと思うが。
「残念ながらどちらも完全な情報は無い。
一応猟友会で知っている場所は今回の山狩りの各担当者に教えてあるからついでに確認することにはなっている。
ワシらももう少し登ったら1箇所洞窟もどきな穴がある箇所に差し掛かるぞ」
先に全部調べておくのは無理だったらしい。
まあ、やばい悪霊とか境界門があるかも知れないなら、地元の爺さん達が探し回らない方が無難か。
「そうなんですか?!
ちなみに、依頼の最中に隠し財宝を見つけた場合の所有権ってどうなるんでしょう??」
蓮クンがワクワクした感じで杉浦氏に聞いていた。
「・・・さぁ?
退魔協会に所有権を要求する権利は無いと思うから、土地の所有者と俺らで山分け・・・かな?」
ちょっと自信無さげに杉浦氏が答えた。
「警察署に届けて半年以内に持ち主が出てこなければ、土地の持ち主と山分けじゃな。
歴史的財産だった場合は没収されてそれの金銭価値の何割かを貰えるだけになるが」
赤木さんがニヤニヤ笑いながら蓮クンに教えてくれた。
どうやら赤木さんも若き頃に本気になって隠し財宝探しを夢想して色々調べた様だ。
残念ながら、隠し財宝に悪霊でもついていない限り霊視で頑張っても見つけられないんだよねぇ。
土の元素系能力持ちだったら宝探しに向いてそうなのに。
財宝を探した人間がそのまま一緒に埋まっていたら悪霊化していて視えるかも知れないが、流石に文字通りの金の亡者には会いたくないかな〜。