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女の戦場?

「杉浦さんと碧は仕事で知り合ったの?

それとも親の知り合いだとか?」

3回目の休憩で昼食としておにぎりを食べながらついでに尋ねる、


ランチを食べに降りたらまた上がらねばならないってことで、今日はコンビニのおにぎりとお茶のペットボトルを全員渡されている。

そこそこ暑いので弁当タイプは悪くなるかもと言うことで、冷やしたコンビニおにぎりを配られたのだ。


ウチら的にはこれで構わないが、旧家のベテランなんかは怒るんじゃないかね?

それとも山狩りなんてある程度体力が必要だから、口煩い中高年は最初からいないのかな?


・・・考えてみたら駐車場にもデブなおっさん・じーさんタイプは見なかったな。

一口に大型案件と言っても、何をやるかで招集される退魔師も変わるのか。

だから若手の蓮クンも参加になったのかな?


「今は事務所単位で仕事を受けているから他の退魔師と合同でってことはほぼ無いんだけど、凛と組む前は『若い女の子が一人じゃ危ないから』とか言ってやたらと独身の男と組まされる事が多くてね。

その頃に仕事で一緒になったの。

杉浦さんは珍しく粉をかけてこないまともな人だから、仕事が終わってからも会えば立ち話はするぐらいの付き合いは続けてるのよ」

碧が教えてくれた。


「え、退魔師の人ってそんなにナンパ野郎ばかりなんですか?!

妹もそのうち退魔師として働く予定なんですけど・・・」

蓮クンがちょっと引いた感じで聞いてきた。


「旧家の男はうっかり一般の女性と結婚すると、ヤバいぐらいの嫁姑戦争が勃発しかねないんだ。

別に退魔師の家系の女性との子供だったら確実に能力持ちになる訳でもないし、一般人の女性とだって能力を継いだ子が生まれるんだが、確率的には退魔師の家系同士の方が子が才能を受け継ぐ可能性は高いと考えられている。だからそう言う女性を捕まえろと言うプレッシャーが強くてね。

しかも姑側は旧家の女主人として今まで振るっていた権力が幾らかでも嫁の方に移行するかもって事で身構えていて、優位に立とうと粗探しをしている事が多い。

そんな訳で、業界の女性と結婚する方が色々と無難なんだ。

とは言え退魔師と言うのは狭いしちょっと歪な業界だからね。

人格的に結婚したいと思える様な女性と一緒に仕事をする確率はそれなりに低いから、人によってはまともな女性に当たったら必死でアピールするんだと思うよ」

ちょっと慰める様に杉浦氏が言った。


おやぁ?

私が碧から聞いた話とはちょっと印象が違うぞ?


「必死なアピールがウザいだけのもいるけど、旧家のお坊ちゃまで今まで大切に育てられてきただけの傲慢野郎も多いわよ〜。

『体から攻略すれば良い』なんて兄弟子や師匠に言われて、何も疑問を抱かずに人の事を力づくで手籠しようとするのに何の抵抗も感じていないっぽいアホもいるし」

碧が杉浦氏の言葉に水を差す。


「必死過ぎてなのか傲慢すぎてなのか知らないけど、どちらにせよ迷惑ねぇ」

経済力のある働ける女性にとって、旧家のお坊ちゃんとの結婚なんて良いとこ無いね。


「強引にいくのはあり得ないが、こちらの家に資産があると見るとガンガン胸を押し付けてきたりプレゼントを強請る様な女と何度も仕事をする羽目になって財布扱いされるのに慣れてくると、面倒になってどれも皆同じ様な人ばかりなのかと思考がおざなりになるんだよなぁ」

ちょっと申し訳なさげに杉浦氏が答えた。


う〜ん、どっちもどっちな世界なのかね。

寄生する気満々な女と、女はそう言うのばかりだから自分がやりたい様にやって良いと誤解した傲慢男と。

どっちも周囲にとっては良い迷惑だ。


「取り敢えず、妹さんには女性用の自衛術を学ばせて、後はそれこそ私たちみたいに事務所を作って常に蓮クンと妹さんで一緒に働く様にしたら良いんじゃないかな?

個々人で退魔協会に登録すると誰と一緒に仕事をするかは退魔協会の都合で決められるけど、事務所登録しておけば事務所の中での人のやりくりは事務所側に決定権があるから、蓮クンと妹さんで仕事を組めるわ。

退魔の仕事って個人宅や辺鄙な山奥とかに行く事も多いから、確かに一人であたると変な奴に後ろから殴られたり依頼主に変な言い掛かりをつけられたりする可能性はあるし」

碧が蓮クンに助言する。


悪霊に憑かれているのは見ればわかるが、単に人目がないから襲っちまえと考える馬鹿さ加減は見ても分からないからねぇ。

人目がない辺鄙な場所に行くのは若い女性だったら確実に危険だし、若い男性だってあまりやらない方が良いだろう。


転んで頭を打ったりするのに性差はないからね。


「ちなみに杉浦さんが必死に女性ハントしていないのは既に意中の女性はいるからですか?」

別に常に誰か付き合っている相手がいるのが自然な状況だとは言わないけどさ。

だが、ある意味結婚なんぞしても家政婦兼子守り役を押し付けられて忙しさ倍増になる可能性が高い女性より、家政婦が手に入る男性の方が良い相手が見つかれば結婚するメリットがありそう?


「幸い兄のところに子供が何人かいるんでね。

家を継がせる為に無理に結婚する必要はないから、その気になるまで自由にやるつもりなだけだよ。

自分のパーソナルスペースに他人がいるのは好きじゃないんでね」

あっさり杉浦氏が家政婦論を否定した。


「まあ、平均寿命が伸びているんだし、無理に急いで結婚する必要もないよね。

30代になると妊娠がちょっと難しくなるらしいけど、最近の技術はなかなか凄いらしいし」

碧が付け足す。


ま、人それぞれってやつだね。

私もイマイチ結婚する気は起きないし。

取り敢えず、退魔協会に所属する独身男性は全て下手に近づかない方が良いのは分かった。

一般女性だと嫁イビリが酷いとなると、確かに業界内で女を引っ掛けようとするのも分からなくもないが・・・姑がこちらの生活に口出しをしてくる様な家は絶対にごめんだ。


どうも日本の旧家って女性にとって居心地が悪そうだよねぇ。

まあ、今って社会の中での女性の役割が変わりつつあるから、どんな家庭でも軋轢と争いはあるのかもだけど。



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