表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
552/1362

現実路線

「儂等の担当範囲はここだな。

ここから3メートルずつ離れて上へまっすぐ登って行く。

怪しい物や異臭、何か調べたい物があったら笛を吹いて知らせてくれ。

他の人間はその場で立ち止まって確認を待ち、笛を吹いた人間がリクエストしたら両隣の人間が近寄って相談に乗る形にするぞ」

私たちのグループに宛てがわれた山狩りのプロはそれなりな年っぽいご老人だった。


そう言えば、猟友会のメンバーって年々平均年齢が上がっているってどっかで読んだな。

山狩りのプロとなったら近所の猟友会の人が多いんだろう。


この人らは退魔師の実在を信じているのかな?

まあ、古くからの猟師とかが集まった集団が猟友会の前身だとしたら、普通に悪霊とかが日常生活の一部だった時代の話とかも受け継いでいそうだ。


しっかし。

異臭かぁ。

願わくはウチらの範囲で死体とかが出てこない事を期待しよう。


政治家と実業家の子と孫が行方不明になってから今朝で4日弱だって話だから、単に足を挫いて動けなくなった程度だったらまだ生きている可能性もあるけど、死んでいたら間違いなく腐っていそうだよなぁ。

考えてみたら、悪霊に囚われて動けなくなった場合の衰弱死ってどんな感じになるんだろ?

前世ではレイスだったら生気を全部吸われてミイラっぽいスケルトンになる事が多かったけど、死体になった場所によっては干からびる前に腐ってゾンビになる事もあったからなぁ。


ゾンビにならないにしても、今の季節の日本だったら生気が全部吸い取られて干からびる前に腐りそう。

後は・・・境界門が見つかるかもってところか。

考えてみたらそっちの方が要注意だね。

まあ、境界門の存在に気付かない術者が居るとは思えないけど、真ん中にいる猟友会のご老人がうっかり境界門に落ちたりしない様に気をつけておいてあげないと。


つうか、考えてみたら境界門って白龍さまのしか見た事がないから、もっとショボイ境界門がどんな感じになるのか、知らないんだよなぁ。


「碧は新しく現れた境界門って見た事ある?」

指示された場所に動きながら碧に尋ねる。


「ないなぁ。

杉浦さんは?」


「露骨に目に見える訳じゃあないが、違和感を感じさせる場所を集中して霊視すると視える・・・事もあるらしい。

角度によって、大きな楕円形や円な事もあれば、一本の線な事もあるから、違和感がある場所に気付いたらむやみに近づかずのその周辺を回って観察すると良いと教わったぞ」

杉浦氏が教えてくれた。


なるほど。

ある意味、前世の転移門に近い感じなのか。

境界門は前世でもレアで見たことは無かったから、ちょっと参考になる。


転移門と境界門から受ける感覚が本当に同じかは不明だが。

白龍さまの境界門は微量ながらも濃厚な魔素が滲み出ている感じがしたからかなりはっきりと周囲に違和感があったが、魔素が薄い世界との境界門だったらそれもなさそうだからなぁ。

転移門にはそれなりに魔力を込めていたから集中していなくてもあるのは露骨に分かったが、境界門だとどうなるんだろ?


「ふむふむ。

じゃあ、違和感に注意しつつ歩くのね。

1時間ごとに休憩を入れましょうか。

霊視をずっとするのに慣れていないし、比較的緩い傾斜と言っても山登りも疲れそうだし」

碧が提案した。


「だね」

「お願いします」

「ああ、それが良いだろう」

誰も異議なし。


「ふむ。

では登り始めよう」

ご老人が声を上げた。



「ちなみに杉浦さんも合コンターゲットになるって事は旧家のご子息なんですか?

それとも若いシングルな退魔師は誰でもなのかしら?」

1時間後の休憩時に、ペットボトルから麦茶を飲んで一息つきながら杉浦氏に尋ねる。


山登りに慣れていない私は話しながら登る体力は無く、蓮クンもまだ体が出来上がっていないせいかちょっと厳しいっぽく、道中は基本的に碧と杉浦氏の会話だけしか流れてこなかった。


熊とかがいる危険を考えて静かにしろって猟友会のご老人に注意されるかとも思ったんだけど、特にそれもなし。

もしかして、ウチらが声を上げていたら熊が居た場合に逃げてくれるのを期待しているのかな?

ここら辺だったら熊よりも猪辺りの方が危険かもだが・・・猪って人間がいたら襲ってくるのか逃げるのか、どっちなんだろ?


「まあ、協会としては退魔師人口を増やしたいから全てのシングルな退魔師は合コン対象になるが、異性に売り込みやすい旧家の人間は特に重点的にターゲットにされるな」

杉浦氏が応じた。


うわ〜。

『ターゲット』なんて言葉が出ている時点で、退魔師同士の付き合いを増やして退魔師の次世代へ繋げようと言う退魔協会の試みが裏目に出てない?


「それこそ、純粋に退魔師の人口を増やしたいだけなら精子と卵子を寄付してもらって代理母を使って子供を人工的に生ませれば良いのに。

まあでもその子供の親権とか遺産相続権とか誰が育てて教育する義務を負うかとかの問題があるから無理か」

碧が提案をして・・・自分で却下した。


まあねぇ。

大人に近い状態でぽんって生まれるならまだしも、使い物になるまでに最低でも十五年ぐらいかかると考えると倫理的な観点を無視するとしても難しいよね。

退魔協会が育てるとなったら実質奴隷にされそうで人権的に問題になりそうだし。


名目上は精子や卵子提供者の子としておき、適当な退魔師育成機関を作ってそこに預けて育てるようにとしても・・・そんな機械的な対応じゃあそのうちストレスに溜まった才能持ちの子供が暴発して大事故に繋がりそうだし。


そうなると合コン作戦が一番現実路線なのか。

迷惑なことに変わりはないけど。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ