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知らぬが仏

3日後、『気分転換に向いた絶景と歴史的遺跡10選』のサイトが無くなっていた。

ブックマークだけでなく、キーワードで検索しても出てこなかったのでサイトが完全に閉鎖されたのだと期待したい。


ただねぇ。

今回はクレーム案件化していたから退魔協会も本腰を入れて対応した様に思うんだけど、愉快犯の悪意ある行為が退魔協会の業務に関係していなかったら・・・あの組織がボランティアで対処するために金なりリソースなりを投入したかは怪しい気がする。

まあ、悪霊を使うなら最終的には協会の方へ除霊依頼が行くとは思うが。


碧が白龍さまに聞いてみたが、ああ言う特定の人間に対する悪意がない愉快犯的な行動は意図と悪意の繋がりが薄いため、天罰を下し難いらしい。

白龍さまもインターネットのサイトから探すのは無理で、あの壊された慰霊碑は破壊工作がされて比較的直ぐだったらまだしも、数年経っていると犯人の悪意も悪霊の恨みや怒りに埋没してしまう為、辿るのは至難の業との事。


かなり気分がモヤモヤしたので、田端氏をスイーツの食い放題(とお茶)に誘って詳しい事を聞いてみることにした。

実は田端氏、甘い物が好きらしい。

だが男性だとスイーツバイキングに1人で行くのはかなりハードルが高いとの事なので、情報共有の対価に私と碧の同行者として誘った。


どちらか1人とだったらデートに見えただろうけど、両方となったら若い親戚のオジサン扱いかね?

流石に『パパ』では無いと思いたい。


と言う事で、最初の一巡のケーキとお茶(碧と田端氏はコーヒーだった)をゲットしてテーブルに落ち着いところで田端氏に聞いてみた。

「悪霊を使った愉快犯的な悪事って、警察が捜査して起訴する事もあるんですか?」


「退魔協会に協力して捜査する事はあるが、起訴は難しいですね。

ただでさえ未必の殺意は証明が難しい上に、日本の法制度において悪霊は『凶器』の定義には含まれませんから。

まだ呪詛だったらどうにかなるんだけど」

溜め息を吐きながら田端氏が答える。


折角の美味しいスイーツ三昧の場に後味の悪い話題を持ち出して申し訳ない。


「捜査して、その後どうなるんです?」

碧が軽く首を傾げて尋ねた。


「今回のウェブサイトの様に、慰霊碑の破損という悪質な行為に繋がっていると疑われるケースだったら合法的に誰が仕掛けたのかを調べられますからね。

調べて、主導者が分かったら業界団体である退魔協会に連絡して自主規制について話し合って貰う流れかな。

それなりに退魔協会にも強面な人が居ますから、説得の成功率は中々らしいとか?」

田端氏がちょっと悪戯っぽく笑いながら教えてくれた。


業界団体の自主規制ねぇ。

そんな物があるとは知らなかったが、確かにあのレベルの悪質な仕組みが出来るにはどこかで誰かに退魔の術を教わった可能性は高い。

一人前の退魔師になれるだけの才能もしくは資質がなかったようだが、業界の誰かから教わった知識を悪用しているんだから、業界団体の自主規制に従う義務はあると言えなくも無いのかな?


考えてみたら退魔の術を使えない様に力を封じられた人間でも、今回の悪質な悪戯は出来ただろう。

記憶まで封じなければ、神社でお祓いするまでの間ぐらいなら悪霊からの影響を跳ね除けられる程度の知識と精神力は残っただろうし。


ウェブサイト作成の知識は後から独力でも学べる。金があるならアウトソースしてフリーランスのウェブデザイナーに頼むのも可能だろう。


退魔協会って力だけじゃなくて記憶とかも封じられるのかね?

ちゃんとそっちの使い方の鍛錬をした黒魔術師なら狙った記憶を削除できるが、単に適性があるだけでちゃんとした訓練を受けていないと、日常生活に必要な情報まで消してしまう事もあってちょっと危険なんだよねぇ。


退魔協会の黒魔術適性持ちの技能レベルが気になるところだ。


「ちなみに、退魔協会って依頼主とのクレームに繋がるような案件以外でも、悪霊を悪戯に使っているようなケースに介入するのかしら?」

1つ目のケーキが終わりムースに取り掛かっていた碧が聞く。


そうなんだよなぁ。

クレーム案件にならない場合でどうなるのかが気になるところなんだよねぇ。

退魔協会が動かないからってウチらが田端氏に警察を動かして貰って犯人の情報を流す様に頼むのは・・・難しい気がする。

かと言って私達が自腹で探偵とかを雇っていたら出費が激しくなり過ぎそうだし。


「う〜ん、まあ、本格的に悪質で人が死ぬ様な案件だったら何処かの段階で退魔協会に依頼が入る可能性が高いから。

余程人へのダメージが少ない悪戯以外だったら退魔協会に知らせたら動く、かな?

偶に当たった担当が悪いと勝手に『退魔協会の責務範囲内では無い』って判断されて握りつぶされる事もあるらしいけど」

美味しそうにエクレアを口に放り込んで味わっていた田端氏が教えてくれた。


なるほど。

私が何度か当たったようなバカな職員にうっかり連絡すると、握りつぶされる事もありって訳か。

田端氏の口振では後で問題が大きくなってから握りつぶされた事実が発覚するみたいだけど、懲りないバカが今でもいることを見るに退魔協会内での処罰は緩いんだろうなぁ。


まあ、取り敢えず有能な管理職あたりに直接連絡すれば何とかなる可能性は高そうなのね。

それだけでもありがたい。


退魔協会がどうやって『説得』しているのかは知らぬが仏なんだろうけど。



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