クレーム案件なんだね
「崖の除霊はしましたが、どうも悪霊がいるのはメールでリンクを送ったサイトで関連して紹介されている慰霊碑の方のようです。
こちらを態と壊した上に汚して見た目だけ取り繕って悪霊を呼び覚まし、サイトを見て散策に来た疲れた現代人を自殺へ誘導しているようですね。
勝手に契約にない場所の除霊すると怒られるとの話なので慰霊碑の方はそのままにしてありますが、どうしましょう?」
また依頼されて茨城まで出てくるのが面倒なので、市役所で会議室を借りてメールでウェブサイトのリンクを送ってから退魔協会の職員へ電話した。
自治体の担当さんは先ほどの慰霊碑を見に行っている。
一応そのまま自殺したりしないように私が一緒に着いて行こうかと聞いたのだが、そう言うヤバい場所に回らなければならない自治体職員用のお守りがあると言われた。
悪霊避けのお守りがあるんだぁ。
ちょっと意外。
つうか、それって自治体の職員だけじゃなくって普通の人にもガンガン売るべきじゃないの?
まあでも悪霊を信じていない人が多いから、下手に悪霊避けなんて書いて神社で売ると信用にかかわるのかな?
『・・・これってもしかして、愉快犯的な無差別殺人をインターネットを使ってやっていると言う事ですか?』
職員が暫しウェブサイトを見て沈黙してから、反応してきた。
「だと思いますね。
まあ、この案件だけかも知れませんが。
仮に他の紹介された『絶景』がそうだとしたら、飛び降り自殺名所の除霊をって依頼を受けた際に効果がなくて苦情が来るかも?」
碧が淡々と応じる。
暫く重い沈黙が流れたと思ったら、キーボードを叩いている音が聞こえてきた。
カチャカチャでなくダダダって感じに聞こえるんだけど・・・もしかしてこの職員さん、怒ってる??
『・・・このサイトにある別の『絶景』は正しく仰る通りに除霊したのに全く役に立たないと返金を請求されている案件ですね。
早急に他の場所に関しても調べるよう手配します』
どうやら退魔協会の案件データベースか何かを調べていたらしい。
既に他ので問題が起きていたのか。
だったら依頼人がいなくてもこのふざけた『絶景ルート』のヤバい歴史的遺跡の除霊をするかな?
それとも調べて除霊依頼が来た際に悪霊がいる場所も除霊させるだけなのか。
少なくともこのサイトの閉鎖に向けて何かすると思いたいところだ。
「ちなみに、今回の壊された悪霊が湧いている慰霊碑に関してはどうします?
除霊依頼が出るなら今だったら現場にいるので割引料金で追加依頼を受けても構いませんが」
碧が職員に問いかける。
まあ、あの慰霊碑は除霊してもちゃんと綺麗にして修理しないとそのうちまた恨みを持つ浮遊霊でも惹きつけそうだが。
ああ言う慰霊碑に使うような大きな岩ってパワーストーン的な性格があるから、放っておいたら霊を惹きつけるんだよね。
そんでもって動物の死骸とか悪意を込めた落書きとかがあるから、惹きつけられるのは悪霊の可能性が高い。
退魔協会に文句を言われないなら今回は無料で除霊しても良いんだけどね〜。
今なら大した距離じゃないし、手間もそれ程じゃあないから。
でも無料でやると言うとこれからも『ついで』に他の除霊もやってくれって複数の案件がある場所に狙って回されそうだから、料金請求はしておかないと。
『ちょっと関係者と調整しますので、一旦電話を切ってコールバックさせて下さい。
この携帯番号で良いですか?』
職員が聞いてきた。
自治体の担当に連絡するのか、自分の上司に話をしに行くのか。
「構いませんが、30分以上掛かるなら、どのくらい待つ必要がありそうか連絡を下さい」
碧が応じる。
自治体も退魔協会もお役所的な性格が強いから、いくら今すぐ頼めば割安だよ?と言っても意思決定に時間が掛かりそうだなぁ。
が、10分ちょっとでコールバックが来て、慰霊碑の浄霊も追加依頼された。
意外に早いね〜。
「これってサイトの作成者の取り締まりって田端氏に知らせたらやるかな?
退魔協会でやるならそれはそれで良いけど」
ある意味、政府側である田端氏よりも退魔協会の方が超法的な手段で悪霊を利用するような迷惑な人間の対処とかやりそうな気もするが、どうだろう?
仕事よりも退魔師が足りない状況なんだから、迷惑なクレームが起きるような案件を作り出す人間は退魔協会に取っては目障りな存在だと思うんだが。
「う〜ん、どうだろ?
普段だったら退魔協会が正義の味方的な行動なんてする訳ないじゃんって言うところだけど、既にこのサイトのせいで依頼人との関係が拗れて面倒なことになっているなら、何かするかもね。
取り敢えず暫く様子を見て、このウェブサイトが無くならなかったら田端氏に相談しよう」
碧が提案した。
確かに。
取り敢えず、このサイトのブックマークだけセーブしておくか。