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悪質な悪戯?

「やっぱこっちに来たね〜」

木陰に停めた車の中で窓を開けて海辺の風を楽しみながら待っていたら、先ほどの悪霊憑きの女性が姿を現した。


「そんじゃあ、取り敢えず眠らせるね」

まずは悪霊から情報収集し、その後に女性の記憶を読ませて貰った上で除霊してから話を聞こうと碧とは既に話し合っている。


ちょっと本人の意思を曲げる事になったら申し訳ないが、悪霊を祓ってその影響を排除してもまだ自殺したがっている場合は、私が意思誘導で気を変えさせる予定だ。


流石にウチらが除霊した直後に自殺されちゃあ困る。

自治体の方も悪霊がここが頻繁に飛び降り自殺で使われるようになった直接の原因では無いのは分かっている様だが、仕事終了のお知らせ直後に死者が出たら印象が悪いからね。


「うん、任せた」

碧が頷く。


車から出て、ちょっと何かを尋ねるかのように女性の方に近付き、問答無用で意識を刈った。

「おっと」


へにゃりと力が抜けた女性を近くのベンチまで操って誘導し、横に一緒に座っていたら碧も車から出てきた。


悪霊が逃げないように女性の周りに結界を展開してから悪霊に接触する。

「さて。どこから来て、彼女に何をさせようとしていたのかな?」


『戦いだ!

死ね!

出ていけ!!』

何やら排他的な感情がぼんやりとした言葉になって聞こえる。かなり古い霊っぽい。

擦り切れて個の境界があやふやになった霊が混ざり合った悪霊の群体みたいな感じかな?


古すぎてあまりパワーも記憶も残っていない感じだが。

取り敢えず近づいた生者は殺せたら嬉しいと言う程度の悪意の存在だが、特に何かを企むほどの知性も残っていない感じだ。


・・・なんで女性がこの崖目指してひたすら歩いていたのか、不明なんだけど〜。


「どう?」

碧が聞いてきた。


「なんかどっかの戦場か、村同士の争いか何かで人が死んだ無念の霊が溜まって悪霊化した存在みたい?

どっかの慰霊碑か何かが壊された所に行ったのかなぁ。

悪霊は死ね死ねと煩いけど、ここに来いとは誘導していないから元から飛び降り自殺希望だった可能性が高いかも?」

悪霊から読み取った内容を碧に伝える。

あまり何も分からなかったけど。


「ちょっと因果関係がイマイチ不明だから、悪霊の除霊は後回しかな。取り敢えずこっちの女性の記憶を読んでみるね」

これ以上悪霊から情報を得られるかは微妙だが、除霊しちゃったら再度トライすら出来なくなるので、情報を整理できるまで除霊は保留だ。


女性の額に触れて記憶を読む。

肩でも記憶を読めるけど、やっぱ額とかに触れている方が楽なんだよね〜。

まあ、私に個人的な思い込みかもだけど。


脳のどの部分が思考を司るとか、記憶を保持してるとか、部位によって機能が違うはずなのだが触れる場所は後頭部がいいとか側頭部がいいとかは特に感じないんだよねぇ。

もしかしたら、私が読んでいるのって脳のデータではなく魂や精神の情報なのかも?

魔力は物理的な存在ではないし、魂や精神も必ずしも肉体にきっちり紐付けされている訳では無い。


魔力とか魔法とかって科学よりもほんわかいい加減なんだよね。


それはさておき。

「う〜ん、なんか彼氏と別れて落ち込んでいたから、代休を使ってちょっと綺麗な景色を見て回って気分転換している最中だったらしい」


「え、じゃあ自殺する気無しだったの?」

碧がちょっとぎょっとして女性を見下ろす。


悪霊に憑かれたとしても、死ぬ気が無かった人間が自殺にまで追い込まれるのってそれなりに時間が掛かるはずなのだ。

この程度の悪霊に憑かれてボコボコ死んでいたら、もっと日本での悪霊への認識がしっかりと実在する危険に対するものになっていただろう。


「ちょっと気落ちしていたから悪霊に付け込まれて抗い切れなかったみたいだけど、これが普通に街中だったらせいぜい左右を見回さずに道を渡る程度だったかも?

崖に行く途中だったから崖に向かっているけど、このままだと崖の上に出たら衝動的に飛び降るかも?」


悪霊に憑かれた後に飛び降り自殺の名所になりつつある崖の上に行くと言う予定が不味かったね。

どこで悪霊に憑かれたんだ?


歩いていたのだ。

この近所で憑かれた可能性が高い。

駅で憑かれたのだったら直接こちらに来る道は通行止めになっていたし、駅からここまでは長距離ハイキングを予定していたんじゃ無い限り普通だったら歩く距離じゃあ無い。


記憶を3倍速で巻き戻す感じで読み取っていくと、何やら古い墓石の側にある大きな岩の前に立ち止まっているシーンが見えた。

よく見たら大きな岩は3分の1ぐらい欠けているし、残っている部分も一度大きく割れたのを適当に後ろ側でコンクリっぽいのを使って固めてあるようだ。


あ〜

これが問題の慰霊碑かな?

なんでこんな場所に居たんだ?


更に記憶を読んでいき、思わず顔を顰めた。

「なんかこれ、誰かの悪質な悪戯なのかも」


「悪戯??」

碧が眉を顰める。


「快楽殺人者がネットを使って間接的に人が死ぬように仕向けているのかも」


問題は、このサイトをどうやって閉鎖させるかだよなぁ。

私が記憶を読めるって話は誰にもしたく無いんだが。



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