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コンサルタント?

「これは霊障ではありませんか」

ふむ、と言う顔をして青木氏が考え込んだ。


「霊障か否かの見極める依頼ってあるの?」

ふと、碧に尋ねる。


霊障じゃないのがはっきりしているなら、普通に建築士なり大工(?)なり探偵なりを雇えば怪音の問題は解決する。

見極めが付かないからどうするか決めかねて塩漬けになる事も多いのだろう。


だとしたら実際に祓って貰わなくても、次から次へと我々の希望に合うかを無視して連れ回せば青木氏にとっては大儲けでは無いだろうか。


「あるわね〜。

と言うか、退魔協会に仕事を依頼すると、まず調査費で数万円取られるのよ。

で、霊障じゃなかったらそう言われて調査費だけ払って終わり」


なる程。

我々を連れ回せばその調査費が浮く上に、調査員の都合がつくまで待たされる事も無い、と。


「霊障かどうかをチェックするコンサルタント業務ってやったら退魔協会に睨まれるかな?」

悪霊狩りだって『協会を通さなければ違法』と言う訳ではないのだ。

だったらこっちのコンサルタント業務もビジネスの一部としてどうかね?

それこそクルミ分体を使えば原因解明も出来そうだ。


単価も悪霊祓いに比べれば低めだから後から揉めるケースも少なそうだし。


「まあ、コンサルタントとしてウチらが『霊障です』って言い切って、顧客が『もう霊障なのは確認取れているから調査費は払わない』って退魔協会相手にごねたら睨まれるかも?

それでも嫌味を言われる程度だろうけど」

碧が肩を竦めながら答えた。


ふむ。

青木氏に提案をしてみるか。

「そこら辺の霊とかに話を聞いたら怪音の原因も分かるかもですが、そう言う依頼を出しませんか?

取り敢えず、青木さんの塩漬け物件を周り、霊障関係ので気に入ったのがあったらそちらは割引契約。

霊障が関係ないのはちょっと調べて原因が分かったら・・・一件3万円、分からなかったら5千円でどうでしょう?」

取り敢えず、霊障絡みのはほぼ確実に視れば分かる筈。

霊障は見当たらなかったものの、原因解明が出来なかったのは例外的に我々が知らない形の霊障の可能性もゼロでは無いので安くしておく。


原因解明の3万円が相場と比べてどうなのか分からないが、手間は大した事では無いので1件3万円で十分だろう。

クルミには頑張ってもらう事になるが。


「う〜ん、では取り敢えず5千円で霊障か否かだけ判断してもらうのでどうでしょう?

原因解明に関しては持ち主と相談する必要があるので」

あっさり青木氏が応じてきた。


お。

今日だけでも案内する体で無料で見せて回ろうとするかと思ったが、意外と潔いね。

それともちゃんと働いている社会人には5千円なんて端金なのかな?


「じゃあどんどん見て回りましょう!」



次に見せられた物件には恨みがましげな顔をした中年男性が床に半分沈み込んでいた。

碧がこちらに尋ねる様な視線を向けてきたが、首を横に振った。

最後に住んだのがこの男性なのか別の人間なのか知らないが、お風呂場も台所も壁がカビだらけで真っ黒だ。

インターフォンも宅配ボックスも無いし。

これはちょっと割り引かれても嫌だ。


「あ〜。

正真正銘の霊障物件ですが、ここは色々設備が足りないので我々は借りません」

碧が青木氏に告げる。


「あ、やはりですか。

ここに来ると息が苦しくなる様な気がしたんですが、黒カビのせいかとも思って業者を入れるか迷っていたんですよねぇ」

溜息を吐きながら青木氏が言った。


いや、業者はさっさと入れようよ。

カビだらけだったら霊障無しでも借りる人がいなくなるよ???



その次の物件は中々良かったが霊障物件ではなかった。

その部屋自体は。


『隣の人がしょっちゅう変な叫び声を上げるらしいにゃ。

声に霊障が混じっているせいで睡眠妨害だと雀の霊が言ってるにゃ』

クルミの報告に首を傾げる。

声に霊障?


『誰かを呪おうとしてるの?』

家の中で丑の刻参りでもしているのかね?

あれって声をあげる儀式なんだっけ?

藁人形に釘でも打つのかと思っていたが。

『参り』と言うだけに、どっかに行かなきゃいけなそうだが。


『部屋全体に薄っすら穢れが染み付いているのの副作用みたいにゃ?』

クルミもイマイチ状況が分かっていない様だ。


「う〜ん、ここは隣に問題があるみたい?」

碧に小声で相談する。


「隣、ですか?」

私の声が聞こえたらしき青木氏が聞き返してきた。


「ええ。

この部屋そのものに霊障はありませんが、隣がなんか変な事になってる影響が出てるのかも?」

元々、ここは分譲物件で防音性も良いらしい。

だから隣の奇声なんて本来ならば問題ない筈なのだ。


「隣はこのマンションの地権者だった方の親族が住んでいる筈です。

今度、それとなく機会があったら話を聞いてみますよ」

青木氏が言った。

どうやら割引でここを貸すとは言わないつもりの様だ。

白龍さまだったら隣家でもばっさり除霊出来るだろうが、隣の霊障を解決する事に割引賃料は提供出来ないのかな?


最後の物件はちょっと古い4階建てで、エレベーターが無かった。

運動には良いかもだけど、食料品とかを持って上がるのは大変そうだ。


案内されたのは3階の角部屋。

中は極めて新しい感じで、お風呂場も台所も最新の機器が入っていた。


「ここはちょっと古い物件なのですが、フルにリフォームしてあるので何もかも新品同様ですよ!」

青木氏がちょっと自慢げに色々な設備を見せてくれた。


とは言え、少々彼の顔色が悪くなっていた。

一体何をすればこれだけ濃い穢れが蓄積するのかと好奇心が湧くぐらい濃厚な穢れに埋め尽くされているので、多少霊感があるっぽい彼には居心地が悪いのだろう。


『クルミ、霊障以外に問題がないか、聞いてまわってきて』

問題がこの穢れだけだったら、毎日3階分の階段はちょっとキツイがそれ以外は理想的かも?



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