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一応解決かな?

「このポーションもどきをお見舞いに持って行ったら青木氏の甥御さんにも効きそうだけど、怪しげな手作り液体を渡されても飲むのは躊躇するよね」

細かく刻んだヨモギを沸騰しない温度に抑えたお湯に魔力と一緒に入れながらふと呟く。


青木氏の甥御さんは社畜時代の無理が祟ったのか、階段から落ちて10日経ったと言うのにまだ退院していないのだ。

どうやら検査の結果が中々改善しないらしい。

甥御さんの方は結婚を言い出してきた女医さんにちょっと気があるのか、無理に退院しようとしていないと言うのもあるみたいだけど。


生命保険狙いのプロポーズと言えども、どうやら独身時代が長かった甥御さんの心に響いたらしい。

女医さんの方は健康を担う医者の立場であるからまだ冗談交じりに話を躱しているとの事だったが、青木氏曰くそれなりに気はありそうに見えるそうだ。


「ポーションって病気には効かないんじゃなかったの?」

碧が源之助と遊びながら聞き返す。


「特定のウィルスとか腫瘍があるような病気は駄目だけど、今回は全般的な重度の疲労からくる微細なダメージの蓄積みたいなもんでしょ?

そう言うのにはそれなりに効くんじゃないかな?」

前世では山で遭難して数日まともに食事が取れなかった人間とかには体の疲労回復用にポーションを飲ませてたんだよね。

酷使されたせいで全般的にボロボロになった体には、ポーションの治癒効果が内部から多少なりとも得られる事が役に立つと聞いた気がする。


まあ、ボロボロになった腎臓とか肝臓が単なる機能低下ではなく、実際にダメージを受けて細胞が大々的に死滅していた場合はどうしようもないんだけどね。


碧が登場すれば何でも治りそうだが、現代日本ではそれをやったら違法行為だからね〜。


「ポーションを疲労回復用の医薬品として売り出せたら回復師のアホみたいな規制に引っかからないで済むのにねぇ」

碧がため息を吐きながらおもちゃで源之助の鼻をくすぐる。


「医薬品だって売り出すには承認を得る必要があるから、『効果がある』事の証明だけじゃなくって中に何が入っているかとか、何で効くのかとかの報告書が必要で『何が入っているかは説明できません。でも3日程度だったら抜群の効き目ですよ』じゃ無理だと思うよ」

効くならいいじゃんと言う気もするが、倫理的に許されない素材が使われいないかとかを確認する為にも成分の説明は必要なのだろう。


そう考えると、ヨモギをお湯で熱して漉しただけの液体じゃあ許されまい。

魔力は多分現世の器具じゃあ測定できないだろうし。


「ちょっと元気になるエネジードリンク的な飲み物として売店で売り出すにしても、食品販売の免許とか必要そうだしね〜。

それに売店じゃあいくら効き目があるって言っても青汁モドキな緑色の液体を実際の効果に見合った値段で売るのは難しいだろうから、数をこなせない事も考えると収入手段にするのは無理だね」

パシッとおもちゃを叩いた源之助の前足をちょいちょいと指で擽りながら碧が言う。


キッチンカーみたいので移動販売するのが一番お手軽なんだろうけど、それでも初期投資はそれなりに掛かるだろうし自治体とかの認可が必要だろうし、それに何と言っても医薬品みたいな高値では売れないだろう。

つまり・・・話にならない。

まあ、医薬品だって処方箋の要らない風邪薬程度だったら20袋入りで1500円程度だったりするのだ。大量生産しなければペイしないだろう。


まだお守りの方が単価が高い。

本当に効き目があるって評判になったお守りなら数千円クラスで売れると思うが、キッチンカーで売っているエネジードリンクもどきでは1000円でも難しいんじゃないかな?


「だよね〜。

でもまあ、青木氏の甥御さんは諦めて退職したみたいだから、ポーションで治せなかったのはそれはそれで良かったのかも?」

碧が軽く首を傾げながら言った。


確かにそうかも。

驚いた事に、青木氏の甥御さんの上司はドクターストップが掛かって入院している甥御さんにさっさと出社してプロジェクトの采配を取れと電話で怒鳴りつけ、『今会社に戻ったら死ぬと医者に言われて入院中です』と応じた甥御さんへ『明日会社に来なかったら首だ〜!!』と言い渡したらしい。


甥御さんが会社の上層部に連絡して入院中なのに上司がそれを認めずにプロジェクトの人員を増やそうとしていないようだから何とかしてくれとお願いしたら、なんとそちらも『取り敢えずプロジェクトが終わるまで出社、それが出来ないならせめてオンライン勤務してくれればそのまま君の席を残す』と言ってきたらしい。


病欠制度って法律で認められた権利なんじゃあ無かったっけ??


流石に頭にきた甥御さんは会社に辞表を送りつけ、ついでに弁護士を雇って無茶な労働を強要された事で健康を損ねた事に対する損害賠償の手続きを始めると共に、病欠を認めようとしなかった件を電話の会話のコピーと共に労働基準監督署へチクったらしい。


昔はまともだったらしいのにトップがトチ狂うと他もおかしくなるのか、それとも単に以前のトップにはそう言う非常識な部分を表に出さないで何とか会社を回す手腕があっただけと言う話なのか、中々興味が湧くところだ。


まあ、取り敢えず青木氏の甥御さんは過労死しないで済みそうだから、良かった。


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― 新着の感想 ―
[一言] 甥御さんはブルック企業から解放されたけど 第二、第三の犠牲者が。。。
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