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意外な程に凄腕だった

基本的に青木氏の甥御さんが階段から突き落とされる動きも、碧が駆け寄る場面も人に注目されたくないのでそれとなく認識阻害をしようと準備しながら待っていたら、青木氏の記憶にあった甥御さんの顔が階段の上から現れた。


疲れ果てているのか足取りが重い。

顔色も悪そうだねぇ。

ブラックな企業から辞められないのってお人好しで要領が良くない人だからなんだろうなぁ。

もっと要領よくやりゃあ良いのにと思わないでもないが・・・考えてみたら世の中が要領のいい人ばかりになったら、上っ面だけスムーズに回る薄っぺらい社会になりそうだ。


ここはずっしりゆっくり社会を回す歯車組だと思われる甥御さんも救えると期待したい。


下手に意識誘導して青木氏にバレると後々他の人を救う為に際限なく助けを求められたら困るので、私は裏役で問題が起きないようにそっと手を貸す程度だけど。


青木氏の頼んだ人が甥御さんを見つけられなかったら困るので、きっちりとした認識阻害ではなく、特に興味がなかったら目を向けようと思わないタイプの気を逸らす結界を階段に展開。


見ていたら、階段の下から上がってきた人が器用に甥御さんとすれ違う時に足を引っ掛け、トンっと首の後ろを叩いて意識を刈り、そのまま甥御さんの体勢を引き倒して階段の下の方へそっと転がした。


じっと集中して、ついでに認識力と動体視力をアップする術を自分に掛けていたから見えたけど、あっという間だった。

普通だったら、注視していてもすれ違う際にぶつかりそうになって避けようとしたものの失敗し、正面衝突しそうになったのをギリギリで躱した程度にしか見えなかっただろう。


すげ〜。

前世ではヤバいところにも王族の気紛れで派遣される事がある王宮魔術師として、あっさり死なないように自分の身を守れるようにと一応ある程度の事は一通り教わっていたけど、その際の教官みたいにスムーズな動きだった。


現代日本にもあんな凄腕がいるんだねぇ。

普段、何をやっているのか非常に興味があるけど。

昔だったら忍者とか凄腕の武者って感じで日本でも戦える人間への需要がありそうだけど、今の日本だと何をやっているんだろ?


転移ものとかダンジョンもののラノベで都合よく現れる古武道の継承者ってヤツだと言われても納得な動きだった。


もしかして、私が知らないだけで妖とか魔物と戦って物理っで退治して回る集団でもいるんかな?

退魔協会があるのだ。

妖ハンター協会みたいのがある可能性だって皆無ではないだろう。


もっとも、そう言う団体があるなら以前の鎌鼬モドキが養鶏場に出た時になんで退魔協会の方に話が来たのか不思議だが。


今度、碧パパあたりにでも術ではなく物理で超常の存在と戦う戦闘集団がいないのか、聞いてみようかな?

まあ、青木氏にあの凄腕助っ人さんが何をしている人なのか直接聞くのが一番手っ取り早いだろうけど。

教えてくれるかな?

守秘義務っぽい感じに部外者との秘密の共有は拒否されそう。


「大丈夫ですか?!」

そんな事を考えながら階段を見ていたら、碧がさっと甥御さんに駆け寄り、体のあちこちを軽く触れて確認し始めた。


「亮治?!」

青木氏も声をあげて駆けつけ、甥御さんの手を握った。

中々2人とも演技派ですねぇ。


「大丈夫か?!」

青木氏が甥御さんを揺すろうとするのを碧が止める。


「頭を打った可能性があるから揺らさない方がいいです。

呼吸はしているし、骨もどこも特に折れている様子はないですが意識が無いので、取り敢えず救急車を呼んだ方が良いかも」

碧の言葉に青木氏が頷き、携帯を取り出した。


流石にここまで騒ぎになると目撃者が居ないと不自然なので、碧が軽く青木氏に話をして場を離れたタイミングで認識阻害の術も切る。


一応救急車に乗るまで近くに居てくれとの要請なので、ちょっと奥まった人通りの邪魔にならない通路で壁際に寄って待つ。


「どうだった?」

戻ってきた碧に尋ねる。


「確かに体が疲労でボロボロだったわ〜。

胃潰瘍で胃に穴が開く寸前だったから、あの分だったら近いうちに血を吐いて倒れていたかも?

全般的に内臓が弱っていたし、少し不整脈気味だったし、意識が戻らないって言う問題が無くても入院しろって医者に言われるレベルだね」

碧が教えてくれた。


「特に何処が悪いって感じで病気を特定できなくても入院しろって指示されるの?」

今回は意識不明だから目覚めるまでは確実に入院だけど。


「あそこまでボロボロだと過労死的な感じに心不全でいつポックリいってもおかしく無いからね。

病院で『特に何処といって病気はありません』って言って解放して翌日に死んだりしたら医療過誤で訴えられかねないし。

死んでもおかしく無い状態の人間が意識不明で運び込まれたら、少なくとも退院直後に死なないと確信できるぐらいまでは何だかんだと理由をつけて引き止めるでしょ」

碧が肩を竦めながら言った。


なるほど。

病院に運び込まれたのに、何も問題ないってすぐに追い出されて直後に家で死んでいたりしたら病院の評判にも関わるだろうね。


体をボロボロにするブラックな会社の怖さについて碧と雑談していたら、救急車の音が聞こえてきて救急隊員が駆け足で現れた。


さて。

これで甥御さんが人生をしっかり見直してくれると良いんだけどね〜。


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