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拗れたら面倒そう

「青木さんからちょっと話があるから来ても良いかって連絡が来たんだけど、家にあげて大丈夫?」

ヨモギの葉を適当に採取しながら水をやっていたら、碧が声をかけてきた。


「良いよ〜」

お珍しい。

最近は青木氏も仕事関係だったらメールや電話で済ます事が多いのに。

いつもの事故物件鑑定じゃないのかな?


来客があるとなったらポーションもどき作成は後回しだな。

毎日魔力を注いでいるにも関わらず、聖域から持ってきたこのヨモギも効果が落ちてきたのでもうそろそろまた植木鉢を聖域に持って返って別のと取り替えようかなぁ。

ちなみに魔力を注がないともっと早く効果が抜け落ちたので、魔力を注ぐ行為そのものは無駄では無かったっぽい。

基本的に碧のお守りでほぼスキンケアは出来ちゃってるんだけど、何とはなしに液体を顔にパパっと塗る方が潤う気がするんで、結局ポーションもどき作りも続けている。

碧もポーションもどきでのスキンローションを気に入っているし。


碧のお守りはまだ出力が一定していなくて効きすぎたり効かなすぎたりって時がある。

私は既に肌の状態が良過ぎるせいで試験者として向かないので、碧が肌荒れ状態とかニキビとかを都度逆回復で作り出してお守りを試している状態だ。


そろそろ青木氏か彼の事務所の人にでも碧のスキンケアお守りを試して貰っても良いかも。

若い男の人とかは時折ニキビが出てるから、自然発生したニキビの対応力への確認に良いかも。

大分と効果が狙ったレベルに落ち着いてきた感じなんだよね。

紋様の偽装もやらなきゃだけど。


実質白魔術師じゃないと作れない符にどの程度偽装する必要があるのか微妙に不明だが、日本は世界でも珍しく治療が出来る仕事に就けなくて金に困っている白魔術師が存在しうる場所だからなぁ。

そのうち白魔術の適性持ちが皆国外へ出ちゃわないと良いけどね?



「今日は押し掛けてしまってすいません。

実は・・・ちょっと人前で話せない事をお願い出来ないか、ご相談したくて」

暫くして現れた青木氏は何やら表情が険しく、顔色もちょっと悪かった。


うげぇ。

人前で話せない事を頼まれるなんて、嫌なんだけど。

見損なったぞ、青木氏。


「違法行為はしないわよ」

碧がちょっと身を引いて警告する。


青木氏が深く溜め息を吐いた。

「これは・・・厳密には違法行為かも知れないけど人助けなんです。

まあ、出来ないかも知れないのでまずご相談なんですが」


人助けねぇ。

地獄への道は善意で舗装されている、だっけ。

大元は救世軍の誰かのセリフらしいけど。『誰かのため』とか『神にため』って言うような言い訳がある方が人間って悪行を悪いと思わずにやりやすい気がするから、善意ってあまり信用しない方が良いと思うんだよねぇ。


独りよがりって場合もあるし。


「誰を助けろと?

しかも厳密には違法行為だなんて物騒ですね」

碧がちょっと余所余所しく返す。


「甥が5年ほど前に就職したんですが、会社の上層部が変わってどうも強烈にブラックになってしまったようで。

休みなんて実質ないし、会社で終電後まで働いてデスクの下で寝て、明け方に近所のネットカフェでシャワーを浴びて連勤なんて言うのもザラなようです。

このままじゃあ確実に体を壊すし、そうじゃなくても社員をそんなふうに酷使しなくちゃやっていけない会社に未来は無いから辞めろと言っているのに、甥は自分が居なければ周りが困るって言って辞めようとしないんですよ」

疲れ果てた様に顔を擦りながら青木氏が説明し始めた。


あ〜、自己犠牲タイプ?

それとも疲れすぎて思考停止状態になっているのかね。


昏睡状態にして数日会社を休ませたいのかね?

ウチらに頼まないでも睡眠薬でも飲み物に混ぜて飲ませれば、疲れ果ててるなら2日ぐらい目覚めないんじゃない?

何だったらついでに救急車でも呼んだら、きっと体調ズタボロで緊急入院って事になりそうで、一石二鳥じゃない?

その状態で労働監督局にでも垂れ込みしたら更に良さげ。


「睡眠薬でも盛ればどうでしょう?」

碧が口を開く前に提案してみる。

どうも座っている位置からしても私じゃなくって碧にお願いっぽいからね。

碧が下手に何か言うと必要以上に波が立ちそう。

色々とビジネス的な関係もあるし、出来れば関係が拗れる様な事態は避けたい。


「それも考えたんですが・・・出来れば自分で状況を見直す機会を与えたい。

だから、自然に出社出来なくなる様にしたいので、手伝って貰えないかとご相談しに来ました」

微妙な顔で青木氏が言って来た。


何を頼むつもりなのかね。

自分で睡眠薬を盛れば良いのに。白龍さまの愛し子である碧を違法行為に巻き込むって、あまり賢い選択肢じゃない気がするよ?


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― 新着の感想 ―
[一言] 「地獄への道は善意で舗装されている、だっけ」 意味深い言葉ですね。覚えておこう。
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