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ミントは

「しっかし、ベランダとか出窓の植木鉢で栽培する分には良いけど、地面がある場所でのミントの栽培って中々危険度が高いんだねぇ」

東京に無事問題無く帰りレンタカーを返却し、一晩休んでから回復符の新作に挑んでいる碧の横でミントの葉を適当に採取していたら思わず言葉が漏れた。


「確かに、あの育ち具合は凄かったね。

地面に植木鉢ごと植えていたのが良かった?のかもだけど、あれはうっかりすると聖域がミントで覆われちゃいそう」

墨を摩っていた碧が顔を上げてミントの植木鉢へ目をやり応じる。


「有用な植物が勝手に増えるのは悪くはない事なのかもだけど・・・ミントってそれなりに香りが強いしね。

周りの森とか空き地にも種が飛んで爆増したら微妙かもだし、気をつけなきゃ」

ポーションの材料としてヨモギよりずば抜けて優れているって言うんじゃない限り、一通り実験したら全部回収して最終的にはポーションかハーブティーにしちゃっても良いかも。


うっかり放置したら大変な事になる雑草もどきはちょっと面倒すぎる。

大学とか退魔協会の依頼とか知り合いのトラブル解決とかで、何かと想定外に時間を取られることが多いのだ。


季節が悪かったら1ヶ月とか放置するだけでヤバい事になりそうなミントは面倒過ぎる。


藤山家の誰かにミントの収穫を頼んでおいたら一応なんとかるかもだが。

でも処理が甘くて隔離に失敗して、聖域がミントに侵略されちゃったらそれはそれで面倒な話になりかねないし。


「まあ、外来種だとは言っても海外でミントが公園とか山や森に広がり過ぎて困るって話は特には聞かないから、態々育てる植物としては生命力が凄いにしても、本当の雑草とかに比べたら普通程度なんじゃない?

どちらにせよ、雑草ぐらいしか太刀打ちできないような生命力はありそうだけど」

碧が肩を竦めながら答える。


確かに、どっかの家の植木鉢から種が飛んできていてもおかしくない線路脇の空き地とかが一面ミントになっているなんて風景は見た記憶がないから、対雑草との戦いだったら圧勝する程ではないのかな?


「そう考えると、聖域の雑草がミントに駆逐されない可能性もあるのかな?

試すつもりは無いけど」

普通の雑草はそれ程匂いが強く無いからね。


ヨモギはそれなりに香りがあるけど、不快では無い香りだし。

まあミントも不快ってほどじゃあないけど、やっぱ多少は違和感を感じるから周囲一帯がミントで埋め尽くされたら嫌がる人は出てきそう。


雑談しつつ作業を進め、まずは新鮮な聖域から持ち帰ったばかりのミントから作ったポーションを完成させた。

「さて。

ミントのポーション1号です。

碧、診ていてね」

考えてみたら、ポーションでも切り傷と汗疹みたいな炎症っぽいのとで効き具合に違いがあったりするのかな?

まあ、ある程度の効き目が残っていれば汗疹程度だったらどれでも治る筈なので、あまり関係ないか。


マジもんの皮膚から吸収する毒とか酸みたいな劇物に対する効果は怖くてテスト出来ないし、そう言うのは碧を頼らせてもらいたい。


カッターで自分を切るのも大分と慣れてきたなぁ。

すっと消毒して刃を当てて切り付け、血が出てくるのを確認してポーションを垂らす。


しゅわぁぁぁ。

お、ちゃんとポーションになってる。

こっちの世界で薬効があると言われてきた植物も、それなりに魔素がある環境で育てばちゃんと薬草になるんだねぇ。


植木鉢に魔力を注いで育てただけのはほぼ効果が無かったのだが。

古くから薬効があると伝わっているってことは・・・森の中とかだったらもう少し魔素が濃いのか、人口が少なかった中世とかだともう少し魔素が凝縮しやすかったのか。

でもまあポーションの存在はラノベでしか出てこないから、元々ある植物の微細な治療効果が利用されてきただけなのかな?


魔術の存在がほぼ秘匿されている世界だったら、人口の増減で魔素の濃度がそれ程変わるとは思えないし。

自然が豊かな方が精霊が生まれやすくて、それらが魔素を生み出すのかも知れないが。

魔素と精霊の関係も微妙に不明だし、なんとも言えない。


「ミントも効果があるみたいだけど、ヨモギと比べたらどんな感じ?」

碧に尋ねる。


「う〜ん、傷が浅いからあっさり治っちゃって、わからないかなぁ。

もっとざっくり深く切った傷に対する治療速度でも確認しないと違いは分からないかも」

目を眇めて私の腕を診ていた碧が答える。


うう〜む。

骨折とか、動脈や内臓を破損した様な傷を治せるかでポーションのランクは変わるけど・・・流石にそこまでざっくり自分を切るのは厳しいな。


そんな大怪我をする想定はないし、普段持ち運べるポーションにも限りがあるからねぇ。

ちなみに白龍さまの爪と一緒に保管したポーションは、消費期限は少し長引いたがそれでも3週間程度で明らかに効果が落ちてきた。


汗疹対策程度ならまだしも、大怪我対策としては碧ががっつり力を込めた回復符を持っておく方が無難だ。


「乾かしたミントとヨモギで作ったポーションに大して違いがなかったら、ミントの栽培は止めてヨモギ一筋が良いかな?

アロエはまだ試してないけど、成長速度を考えると現実的には普段使いのポーションの作成には向いてないよね」

ヨモギだったら聖域に勝手にわさわさ茂っているので適当に採取すれば良さげだし。


「成長してもらいたいけど花が咲いたら困る、生命力旺盛な植物なんて面倒だもんね。

ヨモギだったら増えちゃっても怒られないだろうし、それが無難かな?」

碧も頷く。


次は乾燥させたヨモギで確認だな。



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