歴史的・・・資料かな?
「これが蔵??」
蔵って物置のちょっと大きくなったバージョンじゃなかったんだ??
目の前の建物は下手をしたら一戸建ての家ぐらいありそうだった。
まあ、考えてみたら横浜の倉庫街なんかの倉庫は馬鹿でかいんだし、戦国時代の神社とかって所領とかもあった大名モドキな所もあったらしいし、本当の氏神さまが居るほど古くて由緒ある神社の蔵だったら大きくても不思議はないのかな?
白塗りに瓦葺きの昔っぽい建物の中に入ってみると、入ってすぐのスペースにお神輿が置いてあった。
そっか、これがあったら普通の物置じゃあ足りないよね。
私の実家の近所では町内会がお神輿を管理していたけど、考えてみたらお神輿って文字からして宗教に関係するものだから、由緒あるこの神社にお神輿があるのは当然か。
お神輿が置いてある部分までは一般の人もよく入るのか、蔵の中は部屋割りされていて更に奥に入るドアには鍵が掛かっていた。
家の方の玄関が日中は鍵をかけずに開放されているのに、こっちは蔵も中の扉も鍵で締めてあるってなんか不思議。
でもまあ、普段は人の目がない上に歴史的に価値のある(つまりは換金価値が高い)物が置いてあるらしいから、当然なのかな?
神社の蔵から物を盗むなんて罰当たりだけど、白龍さまが一々そう言う泥棒に天罰を下すかは微妙だし、最初から鍵を掛けておくのが無難なんだろう。
お神輿が置いてあった場所の横の部屋は普通に物置代わりなのか、スコップとか培養土とか箒とか言った日常的な物置に置いてありそうな物と、非常食とかヘルメット諸々の入った非常用持ち出し袋みたいのが棚に入っていた。
蔵って言うからもっと戦国時代の鎧とか槍とかがあるかと思っていたんだけど、違うのかぁ。
まあ、侍モドキに戦う本家を嫌って白龍さまがこちらの神社に来たとか会った頃に聞いた気もするから、最初からそう言う武装系では無いのかな?
でも、それこそ戦国時代は自衛力も必要そうな気がするけど。
つうか、神社の宮司とかって武装していたのかな?
考えてみたら、秀吉の刀狩りって寺社勢力も対象にしたんだっけ?
織田信長が一向宗とか比叡山とかとガンガンやり合っていたんだから、考えてみたら国を統一したら宗教団体の武装解除は優先順位が高かっただろう。
とは言え、碧のご先祖様たちは退魔の為にヤバそうな山の中とか寂れた村とかにも出向く事があったんだから、何らかの防御手段は持っていなくちゃ危険だったと思うが。
そんな事を考えながら梯子??と言いたくなる程急な階段を登った先には壁一面の棚に色々と箱がしまってある空間があった。
「古くて普段使いで割ったらヤバそうなお皿とか壺とかもここにしまってあるんだけど、こっちの壁側の棚は全部書き付けとかの資料なんだ。
ちゃんと元の場所に戻してくれたら適当に見ても良いからね〜」
碧が声を掛けてきた。
流石古い書類を仕舞う場所らしく、なんか空気がひんやり乾いていて静かだ。
うわぁぁ。
下のスコップや緊急避難キットから一気に一気に歴史っぽくなって触るハードルが高いぞ。
「機械音はしないけど、エアコンでも付いているの?
地下ならまだしも、蔵って2階でもここまで温度や湿度が快適だと思わなかった」
紙の保管には理想的な環境っぽいけど、これだけ快適だったら子供が昼寝に忍び込んできて悪戯しそう。
「う〜ん、なんか昔の先祖様の符に霊力を込め直して使ってるね。
一族の人間だったら能力の系統が違っても霊力を注げるんで、今でも毎朝親父と弟が霊力をこめてるんじゃないかな?
私もこっちにいた時はしていたし」
碧がゴソゴソと箱の中を確認しつつ教えてくれた。
マジか〜。
風か水の元素系魔術師が残した魔道具モドキな符ってやつかね?
血が繋がっているか白龍さまから何か印を貰っているかしてると魔力補填出来る仕組みなのかな?
研究してみたいけど、黒魔術系ではあまりそんないつまでも子孫に伝える様な魔道具を作る必要性はなさそうだし、次の人生で白龍様みたいな一族を見守ってくれる超常の存在と縁がある可能性は限りなく低そうだしなぁ。
壊したらそれこそ賠償しきれない歴史的遺産だから、触れないでおこう。
それよりは、碧のご先祖様にいたって言う黒魔術系の人が残した符とかが無いか、聞いてみようかな?