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ウィンウィン

「訳アリ物件って・・・?」

思わず聞き返す。


確かに悪霊付きとかだったら祓えば良いのだから安上がりで良いかも知れないが、訳アリ物件は避けるモノと言う常識が染み付いているのでちょっと微妙な心境だ。


「ここもそうだったのよ〜。

悪霊付きだったら一番楽なんだけど、穢れや怨みが染み付いてて住人が体調崩す様なのでも白龍さまにかかればすっぱり浄化出来るから、悪くないし。

ただ、近所にヤクザや怪しい新興宗教集団が住み着いているとか、建物に構造的な欠陥があって風が吹いた時や暖房を使った際に異音がするタイプはダメだから、契約前に『訳アリ』の原因解明をしっかりしておかないと痛い目にあうけどね」

碧が説明してくれた。


なる程。

確かにヤクザや新興宗教集団はいざとなれば追い払うのは難しくないが、構造欠陥はどうしようも無い。


新興宗教集団に白龍さまが天罰を落としたらどうなるのか、ちょっと興味があるところだが・・・あまり天罰の安売りをしてはいけないんだろう。


多分構造欠陥よりは穢れや怨みもしくは悪霊系の方が多いだろうから、不動産屋にとっては退魔料金を払わないで数年安い家賃で我慢すれば問題を解決してもらえるし、ウチらにとっては安く良い物件を借りられるしで、ウィンウィンな状況といったところか。


このマンションを探す際に見て回った『訳アリ物件』の話を碧がしていたら、急に彼女の携帯が鳴った。


「はい、藤山です。

あれ、青木さん?!

今さっき丁度メールを送ったところなんです、見ていただけましたか?

ちょっと友人とルームシェアしようと云う話になりまして・・・。

え?・・・これから?!」


何やら片側だけでも興味深い会話が聞こえてくる。


「はあ、まあ友人も今ここにいるんで良いですけど・・・。

じゃあ、お待ちしてます」


「ここに来るの?」

やたらと動きが早い。

不動産業界ってそう言うモノなのかね?


碧が携帯をローテーブルの上に戻し、肩を竦めた。

「丁度良い物件が幾つかこの近所にもあるから、是非資料をお見せしたいって」


「・・・訳アリ物件ってそんなに多いの?」


「まあ、最近は訳アリ物件を選べば安くなるって言う強者も出てきたけど、よっぽど鈍感か特殊体質じゃない限り悪霊や穢れが憑いてる物件で暮らしていたら体調を崩したり、運気が下がったりするからねぇ。

それにそう言う人が入居したところで、家賃は受け取れても悪霊や穢れは消えないし。

私がこっちでマンションを探した時も、かなり沢山の候補物件が出てきたよ」

なる程。


私も訳アリ物件で探せば寮費と同じぐらいでワンルームマンションぐらいは見つけられたのかも?

まあ、碧の場合は退魔師であるという信頼があるから、悪霊をタダで祓って貰おうと不動産屋も協力的だったんだろう。

普通の女子大生が『訳アリでも大丈夫です!』と言うのとは信頼度が違うか。


取り敢えず、交通の便で言えばこのマンションでそれなりに便利なので、次のマンションもこの近辺で私も碧も構わない。

その他の要素である駅や商店街からの距離や階層、日照などのことを話し合っていたらインターフォンの音が響いた。


「あ、どうぞ上がって来てください」

碧がインターフォンの下にあるボタンを押した。

あれって便利だよねぇ。

ちゃんと画像があるから知らない人だったら『間違いでは?』と言えるし。

まあ、かなり小さいので光の角度によっては見辛いみたいだけど。


それに宅配便とかガスとかのメーター確認に来たとかって言われたら、それっぽい服を着ていれば通しちゃうから万能ではないけど。

こう言う時の白龍さまだね!


私ならいざとなればスリプルもどきで倒せるけど、世の中の一人暮らしの女性なんかはどうしてるのかな?

毎回扉を開ける際にスタンガンを隠し持つ訳にもいかないだろうに。

自分は変な人に狙われていないと信じてドアを開けるしかないのか?


そんなちょっと悲観的な事を考えていたら、後頭部が少し寂しいヒョロリとしたおっちゃんが碧に案内されて現れた。


「いやぁ、所帯を持てる様な退魔師の方は家を買ってしまうことが多いので、ファミリー向け間取りの訳アリ案件を借りて頂ける機会は少ないんですよ〜。

しかも奥様やお子様がいると訳アリ物件でリスクを冒すよりは普通に家賃を払おうと考えられる方が多くて、一度悪評が立つと中々貸し出せなくなるし。

ですから是非、うちのお勧め物件を見て頂こうと思いまして!」

ささっとかなり分厚いファイルを碧に渡し、代わりに碧が出した麦茶を受け取りながら青木さんとやらが素早い対応の裏を教えてくれた。


碧が他の不動産屋に連絡してしまう前に、何としても自分の塩漬け案件を紹介したかったらしい。




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