途中経過
「う〜ん、ほぼ効果が無いわね」
10日程亜空間に収納していた聖域産ヨモギのポーションを垂らした傷口を診ていた碧が残念そうに言った。
「そっか。
収納に入れても10日でダメになるかぁ。
次は白龍さまの爪の破片と一緒に収納してみようか」
外に出していたポーション試作品は2日で効果がなくなった。
やはり現世の魔素の薄さはかなりのモノだったようだ。
ちなみに冷蔵庫に入れても入れなくても違いは無かったが・・・雑菌がどの程度繁殖していたかは不明。
まあ、どちらにせよ2日で効果が無くなるなら外に出しての保管は有り得ないので、関係ないが。
ちなみに亜空間の収納では時間経過はするが細菌はあまりいないのか、以前シャーレに寒天を入れて収納してみても大して菌が繁殖している様子はなかった。
まあ、色々と物を入れる様になったら雑菌が増えてくるかもしれないが。
いや、空気が薄いとしたら大丈夫かな?
一応、定期的に中の空気を出す様に心掛けているので菌の繁殖は少ないかも?
「そうだね、あの爪と一緒だったらガッツリ魔素が残りそう」
碧が頷く。
「さて。
こっちはどうかな?」
こちらに持ってきてから毎日魔力を注いで育ててきた聖域産のヨモギを使って生成したポーション試作品なのだが。
錬金術が使えないのでポーションの保管期間が短くなるのはしょうがないにしても、魔力を注いで育てる事でヨモギを使ってポーションを作れるならば、10日に一度ポーションを作る事で汗疹対策やスキンケアがなんとかなるのだが。
これが前世だったらポーションの有無は命に関わる話だが、現世だったら命に関わる怪我をしたならば単純骨折や浅い切り傷程度にしか使えないポーションに頼るよりも、救急車を呼ぶ方がいい。
止血が必要だったら瞬間接着剤で無理やり止める事が出来るって話だし。
とは言え、瞬間接着剤を塗りたくって血を止めた後、あれをどうやって剥がすのか知らないが。
自然に皮が生え変わるまで放置なのかね?
それともマニキュア落としでも染み込ませて拭くのかな?
大怪我した傷の周りにマニキュア落としを染み込ませるのが体に害がないのかは不明だが。
流石に汗疹対策の為だけに10日おきに諏訪まで行く気は無いから、出来ればこの聖域産のヨモギが効力を維持してくれていると嬉しいんだけど。
ドキドキしながらスポイトでポーション試作品を垂らしたら、ごく僅かに泡が出て、傷がゆっくりと治っていった。
「・・・効果が下がっているけど、まだ効く事は効くみたいね?」
碧が微妙な顔をして言った。
「だね〜。
何日後までポーションを作れるかと、作ったポーションが何日保つかは要確認だけど。
来月頭あたりにまた聖域に行くんで良い?
そのぐらいであっちに置いてきたミントがどうなったか見てみたいし」
三週間でミントがどの程度育つか知らないが、育ち過ぎていたらヤバいから確認には行っておきたい。
考えてみたら道が混むお盆前って思ったけど、お盆の時期に手伝う必要があるのかな?
まあ、本人が言い出したらでいいや。
「そうだね。
時間の余裕もあるし、またバンを借りて源之助も一緒に行こうか」
碧が頷く。
「そう言えばさ、あの占い師って結局どうなったのかな?」
実験の終わった腕を洗い、ポーション試作品を白龍さまの爪と一緒に亜空間へ収納しながら碧に尋ねる。
「さぁ?
見極めに協力したとは言え私達の関与は単なる依頼だからね。
ある意味国家機密なんだから、教えてくれる訳ないよ。
まあ、あのコーナーでずっと占いを続ける可能性もあるけど」
碧が肩を竦めた。
「陰からの国家の護衛付きな占い師ww」
もしかしたら怪しまれずに側で護衛するために他の占い師になって同じコーナーに居座るかも?
そこまで近づけば護衛対象には早い段階でバレるだろうが。
「ちなみに、護國神社に入った未来見ってお布施を払えば未来見の依頼って出来るの?」
宮司や巫って一般人からコンタクト出来るのかね?
完全隔離は難しいだろうけど、神社にいる人間が金を取って占い紛いな事をするのは微妙な気もするが。
でも、未来見の存在を知っている政治家とかが何もしないとは思えない。
「・・・どうなんだろ?
国の事情で宗教組織に隔離するとなったら政治家とか官僚は首を突っ込み難くなると思うし、宗教に関わる人間って潔癖な人も多いからねぇ。
お金を貰って相談に乗るのは俗っぽ過ぎるって禁じるかも?」
神社の娘にしては微妙にキツい口調で碧が言った。
国関連の神社とかって頭でっかちな理想家みたいな宗教家が多いのかな?
あの占い師って具体的に悪い事がありそうなら教えて貰えそうだから定期的に見てもらってもいいかもと思ったけど、考えてみたら呪詛とか病気以外の危険を警告出来るのかは不明だったな。
・・・まあ、彼のウェブサイトを時折覗き込んで、どうなったかチェックしておけばいいか。