モドキを作成だ!
「う〜ん、どうするかな」
聖域のヨモギと普通のヨモギを数本ずつ植木鉢に植え、残りを洗ってポーションモドキを作ろうと動いた私は台所で唸っていた。
「どうしたの?」
源之助が台所に入り込んで邪魔しない様に抱っこしている碧が声を掛けてきた。
一応認識阻害で源之助が台所に入らない様にしてあるんだけど、人がいると興味を持っちゃうんで下手をするとイタズラされるリスクがあるんだよねぇ。
「前世で子供の頃に習ったポーションの作り方って、確か乾燥させた薬草だったら乳鉢で念入りに細かくしてから沸騰しないギリギリの温度のお湯で熱する、フレッシュなのだったら洗って細かく刻んで茹でるんだったと思うんだよね。
で、火を止める判断基準が色が変わった時って教わったんだけど・・・テフロン加工の鍋じゃあ色の変化が見えない〜」
前世ではビーカーみたいな透明なガラス容器でコトコト火にかけた気がするが、ウチにはビーカーもフラスコも無い。
オーブンで使える耐熱ガラスの容器はあるが・・・なんかこれってコンロの五徳の上においたら傷がつきそうな気がするんだけど?
「あ〜、そう言えば耐熱ガラスでも直火禁止だよね。
なんでビーカーは実験で火にかけられるのにオーブンでグラタンを焼ける耐熱ガラスの容器は火にかけちゃいけないのか意味不明だけど。
こっちのホーロー鍋を使ったらどう?
内側が白だから良いんじゃない?」
碧がシンクの下の引き出しを引っ張って開き、隅に入っている鍋を指した。
そう言えばこれがあったか。
碧が実家から持たされたとか言っていた鍋だが、重いから使ってなかったんだよね。
「お、確かにこれだったら良さげ。
試してみよう」
前世での実習なんて実質小学生がやる実験だったので、かなり大雑把だった。
その記憶もあやふやだし。
なので今回は採ってきたヨモギも少量ずつに分けて何通りか試すことにした。
前世の薬草とヨモギは違うんだから、同じ反応をするかも不明だ。
と言うか、一言で『薬草』と括っていたけど、種類によって調合方法だって違った筈。
多分学生時代の実習って最低限のポーションが出来るお手軽な何ちゃって調合だったんだと思う。
まあ、軽い汗疹対策程度を期待してるんで、なんちゃってポーションでも出来ればそれで良いんだけどね。
と言う事で準備して素材を放り込んで鍋に着火。
「ヨモギって普通に体に良いって話だけど、ポーションモドキになったかどうか、どうやって判断するの?」
碧が鍋の中で煮込まれているヨモギを覗き込みながら尋ねた。
「ちょっと腕をカッターで切って、そこにポーションモドキを掛けて碧に診て貰ったら傷が回復してるか分かるかと思ったんだけど、普通のヨモギでも効果があるとなるとそっちも作って比較しないとか」
色々と比較しなきゃいけない対象があって良い加減面倒になるな。
碧に実験が終わったら治して貰うし、痛覚は自分で麻痺させるけど、それでも自分の腕を切るのってあまり気分がいい物じゃあない。
でもまあ碧がいるおかげで気軽に実験できるんだから、文句を言っちゃいけないね。
これが私1人だったら、腕が傷だらけになる事を考えると実験をしようとすら思いつかなかっただろう。
碧が居なければポーションの必要性が高くなるが、碧が居ないとポーションを作るための実験が大変すぎるし検証も大雑把すぎて信頼出来ないからねぇ。
◆◆◆◆
「さて。
普通のヨモギから作ったポーションもどきと聖域のヨモギのポーションもどき。
一番見た目が前世のポーションに近いのと、ドロドロで成分が濃厚そうなのとで計4種類だけど、頑張ってテストしてみよう!」
前世のポーションはサラッとしたかなり透明度の高い液体だった。
でも、実際に作ってみると薄すぎて不安になったので、ガッツリ時間を掛けて水分を蒸発させて濃厚なドロドロ液体にもしてみたのだ。
ちなみに、どれも塗る予定。
流石に外傷(最終的には汗疹だけど)の治療用に雑草を煮込んだ汁を飲む気は無い。
前世のポーションは飲んでも治療速度が上がったけど。
とは言え、汗疹やスキンケアに使った使用期限切れの劣化ポーションは飲む気がしなくて塗っていたけど。
さて。
まずは自傷だ・・・。