これで終わり・・・にならず
「依頼があった占い師ですが、どうやら疑われていた様なマッチポンプ的詐欺師ではなく、本物の様です。
呪われていたり大量の穢れを溜め込んでいた客にはちゃんとお祓いが出来るっぽい神社に行く様助言していましたし、今日現れた病気持ちにはしっかり病院で検査を受ける様に助言していました。
ここまでのところ、身軽な状態で来て呪いもしくは病気を貰って帰った客もいません」
碧が退魔協会に電話を掛けて依頼の実質終了に関して連絡した。
『本物の未来見なのですか』
職員の平坦な声が聞こえてくる。
あまり驚きも喜びもないねぇ。
プロフェッショナルに徹しているのか、単にほぼ確信していたのを私へのカマ掛けついでに確認依頼を出したのか、どっちだろ?
「だと思いますよ。
何故良い方向の助言をしないのかは不明ですが。
ちなみに、悪い未来しか見えない未来見の人もいるんですか?」
碧がついでに尋ねる。
『子供の頃に良いことがあるかもと言って外れて詰られた人なんかは、悪いことは起きなければラッキーと言う感じで思い違いかもと言うレベルでも凶事を警告するのに、良い事は絶対の自信がないと口にしない人もいますね。
まあ、国としては悪い予見を回避するのが重要なのでそれで問題はないとは思いますが』
職員が答える。
確かに『良いことがあるかも』と言われて楽しみにしていたのに起きないと怒るよね。
しかも予見されて行動を変えたせいで良いことが起きなかったりしたら予見した方も責任を感じそうだし。
とは言え、悪いことばかり予見する人間も忌避されると思うけどね〜。
不吉だとか縁起が悪いって感じで。
じゃなきゃ便利使いされるんじゃないかね?
自分にない、金に繋がりそうな便利な能力を持った人間が近くにいたらそれを利用しようとする人が多いだろう。
現時点でそんな寄生虫に取り憑かれていないって事は、どっか早い段階で失敗したんじゃ無いかな?
それとも未来見の能力を人に知られるような行動を取ろうとした時に、悪い未来が視えてやめたとか。
占い師なんぞやって国に目に付けられているんだから、国にスカウトされるのが本人にとってそれ程悪いことじゃあないか、もしくは自分の未来はあまり先まで読めないか。どっちだろう?
「もう依頼は終了という事で良いですか?
フルに二週間見張る必要は無いように思えますが」
碧が尋ねた。
『万全を期す為に引き続き観測をお願いします』
残念〜。
外での作業だから暇でもお守り作成は難しいんだよなぁ。
コーナー席を確保したからって流石に寝転がる訳にはいかないし。
どっか近くにネットカフェでも無いかなぁ。
そっちで寝転がっての観測でも良いんじゃない?
漫画に夢中になりすぎたり昼寝のつもりで爆睡したら不味いだろうけど、2人部屋でやればお互いが見張りになるよね?
「分かりました」
あっさりそう言って碧が電話を切った。
「これってさぁ、残りの期間を近所のネットカフェとかからやるのってダメかね?
あればだけど」
「繁華街だからあるだろうけど・・・やっぱダメじゃない?
自分で持ち込んだ漫画なら良くて漫画喫茶だとダメっていうのもちょっと理不尽な気はするけど、一応仕事してますって顔を見せられないと煩い事を言われそう。
多分あの喫茶店のマネージャーあたりから、私らの行動の報告も受けていると思うし」
碧が指摘した。
あ〜。
占い師のところに誰が来たのか、性別と大体な年齢と人相と入った時間を書き留めて呪詛とか病気持ちかとかそう言うのを付与されたかを報告する事になっているから、サボっていないのはそれで確認できる筈なんだけど・・・仕事の態度も第三者に見張らせてるか〜。
まあ、私へのカマ掛けだったらリアルタイムで見張っていないと接触したか分からないしね。
とは言え、行き帰りの電車とかでやったらどうするつもりだったんだろ?
忙しい最中(多分)なのに誰かが私らを尾行してるの??
最近は使ってなかったけど、何者かが継続的にこちらへ注意を払っているとわかる魔道具カードを明日は使ってみようかなぁ。