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空振り

最初に来たこの女性はどうやら知り合いに勧められて来た初めての客らしく、色々と自分の状況を愚痴混じりに話していた。


いやいやいや、自分の情報を赤の他人の詐欺師かもしれない男にダダ漏れで話しちゃ駄目じゃん!!

自分が言った事を元にそれらしくアドバイスをされて占いが当たったなんて思い込むのはアホの極みだし、個人的な情報を漏らしまくったら他の詐欺のターゲットにされかねないよ??


第一、占いなんて怪しい相手を知り合いに紹介するなんて、それこそねずみ講詐欺なんじゃない??


投資詐欺と違って『他の出資者を紹介したらボーナス』なんてのは無いだろうから、単なる騙され易い被害者が更に被害者を増やしているだけだろうけど。


一応未来見の能力持ちは実在するらしいが、何と言っても評判になったら国が出張ってくる世界なのだ。

しかも霊を呼び出して過去の柵の事とかを確認したり解消したりするのだって直系の親族じゃ無いと違法。

だから・・・街中の占い師が本当に真理に触れて助言する真っ当な本物である可能性は限りなく低い。


そう考えると、占い師の事は単に気分を良くしてくれる精神科医とかカウンセラーとかだと思うべきだよね。

腕の良いカウンセラーを紹介するだけなら良いけど・・・カウンセラーではなく占い師と言う職業を選んでいる時点で怪しい。


占い師全般の胡散臭さについて考えている間に、占い師は女性客が自発的に話した内容を言葉を変えて『もしかしてこうですか』みたいな感じに尋ねる事でいかにも自分が超常の知識がある様に見せかけているが、結局人間関係とか仕事に関する悩みに対して漠然として指針モドキなアドバイスをしてセッションを終えた。


特に不幸な未来を予見していないし、女性客に呪詛が掛けられた様子もない。

「健康状態に変わりなし?」


「無いね。

考えてみたら、客のうちの何割ぐらいに不吉な予言っぽいのをしているのか聞き忘れたね〜」

碧が小さくため息を吐きながら応じる。


資料にも書いてないから、退魔協会に聞いても知らなさそう。

国の方は怪しんで依頼を出すぐらいだからある程度は情報があるんだろうが。

今日1日見張っていて誰も該当しなかったら依頼主側に情報提供を要求するか。


「そう言えばさ、未来見の能力持ちが国にスカウトされたとして、護國神社に入るのを拒否したらどうなるの?」

占いは違法じゃ無いのだ。

良く当たるからって国の言う通りにしなければならないって法律は無い。

幸いにも憲法で職業の自由は保障されているから、それに『特殊能力持ちはこれに当たらず』みたいな例外規定も存在しないし。


そう考えると人気占い師として活躍する方が神社の宮司なり巫なりとして働く羽目になるよりもずっと金になるだろうし気楽だと思う。


例え国家公務員として給料を貰えることになったとしても、あれって一流企業だけじゃなくって中小企業とかも合わせた平均値から計算されているから、一流企業の本当に稼ぐ人間よりは少ないらしいし。


昔は天下り分まで合わせればそれで一流企業のトップと相応な生涯収入レベルだったのが、最近では天下り文化が叩かれてるからね〜。

売れているなら自営業として占い師をしている方が儲かりそう。


実際に未来見が出来るならちゃんと儲かるだろう。

未来見が出来ないなら最初から国がスカウトしてこないだろうし。

そう考えると、一体どうやって未来見を護國神社に集めているのか、疑念が湧く。


「それなりに嫌がらせとか親族に圧力を掛けたりとかってやるらしいけど、流石にやり過ぎると逃げられたり自爆覚悟の反撃を喰らうから、気が弱かったら言いなりになる程度らしいね」

コーヒーのグラスに入っている氷を一つ、器用にストローで取り出して口に放り込みながら碧が教えてくれた。


そっか。

考えてみたら未来見の能力持ちが皆、口が上手いとか人とやり取りするのを苦にしないタイプとは限らないよね。

そうなると占い師をやるよりも神社で国家公務員の給料を貰う方が良い人もいるか。


占い師なんぞにならずに、宝くじを買うとかデイトレーダーとして稼ぐとかしていて国に捕捉されるタイプも多そう。


『未来見だったら証券取引をやっちゃいけない』なんて言う法律も無いのだ。

護國神社で働きつつ、サイドビジネスで株取引なんてのが社会的信用も得られて金も入り、一番良いかも?


『インサイダー取引』の定義って『一般の投資家が知らない知識を元に取引すること』だって聞いたけど、現実的な話として『山勘です!!』と言い切られたら未来見を使ったかなんて証明できないし、違法行為として捕まえようが無いだろうし。


まあ、あまり馬鹿儲けし過ぎると国から苦言を呈されるかもだけど。

少なくとも確実に国税局は目を光らせてるだろうね〜。



そんな事を考えながら雑談しつつ1日占い師を見張っていたが、結局誰もその日は呪いや逆回復を掛けられなかった。


「ちょっとどの位の頻度で不吉な助言っぽいのが占いでされるのか、帰ったら聞いてみよう」


軽食やスナックを頼みつつ時間をかけてゆっくりドリンクを飲みながら1日を過ごしたのでタポタポしているお腹を摩っていたら、立ち上がった碧が言った。


「だね〜。

もっとバンバン怪しい事をやってるのかと思っていたわ。

只管待って観測してるのも中々辛いね〜」

呪われる人なんて少ない方が良いけど、ゼロの可能性が高いなら前もってそれを知っておきたい。


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